聖剣が見守る前で
「さっきは驚いたわよ。はいこれお水」
「ごめん。ありがとう」
コップを手渡され飲み込む水の味がドラゴンフルーツに侵され、もう一度吐きそうになるが二度もみっともない姿を見せるわけにも行かず無理やり飲み込む。
「あの実、あたし達ですら無理なんだから旅のお方が一気に食うなんて無謀すぎるわよ」
「栄養は満点なのに味が0点ですわ」
「今度はいけると思った自分自身を呪いたい…」
「アハハ。そうそう自己紹介がまだだったわね。あたしはククリ」
「私はイリスですわ」
そう言うと二人は被っていたフードをめくり上げる。
ククリと名乗った方は茶髪に前髪の癖のついたショートで話す感じに明るく優しい子だと思った。
イリスと名乗った方はククリとは正反対の黒髪ストレートロングヘアーでクールな女の子だと思った。
二人の身長は僕より低く145cm前後だろうか?恐らく歳も僕より年下で12~13歳と言った所で大きく二人が違う点は…胸であろう。
ククリはまだまだ発育の途中なのだろうか?気持ち程度の膨らみであり、それとは非対称的にイリスは申し分ないほどの大きな膨らみをしていた。
「どうしたの?」
「?」
「い、いやなんでもない!!!」
慌てて話しかける二人に胸を見てましたなんて言えるはずもなく慌てて話を逸らす。
「そういえば天草の剣ってまだあるのかな?」
「え?旅のお方天草の剣も知ってるの!?今時伝説の一行は幻や作り話だと思ってる人も多くて今じゃ旅に来るのはアタナくらいだよ」
「寂しいですわね」
「そうなんだ…」
何か少し会話に違和感を感じたが特に気にする必要もないのでそのまま話を続ける。
「じゃあ相変わらずあそこにあるの?」
僕は広場の外れの方を指差す。
「え?旅のお方よく知ってるね。そうだよ~。なんなら見に行く?」
「ククリ嬉しそうですわね」
「嬉しいよ。だって旅のお方だけで珍しいのに、伝説の一行の話が好きな人なんて滅多に居ないでしょ?」
「そうですわね」
「じゃあついてきてー」
無邪気に笑いながら僕の服の袖を引張り早く早くと足早に僕の住んでた家へと案内する。
「ジャーン。ここがエドワード様が住んでた家&聖剣がある場所でーす」
(うわぁ…なんも変わってないなぁ…)
「失礼しまーす」
ククリはそう言うと僕の部屋のドアを開ける。
「この目の前の床に刺さっているのが聖剣天草の剣でーす」
目の前には2年前と一切変わらない天草の剣と部屋の光景が目に写っていた。
部屋は8畳ほどの部屋でタンスに寝床と竈だけのシンプルな作りになっており、丁度真ん中の辺りに天草の剣が地面に突き刺さっていた。
日本等をモチーフに僕がドワーフ族のギランに作ってもらった天草の剣。
(相変わらずお前は何にも変わってないんだな…)
錆や汚れなど一切着いておらず2年の歳月を何事もなかったかのように堂々たる姿で健在していた。
「この天草の剣は神が人と魔族の争いに心を痛め、少しでもこの戦いが終わりに近づくようにと、天界に聳え立つ神樹の葉を一枚神が大地に降ろしそれを勇者エドワード様が剣に変えて作ったものと言われていまーす」
「え?」
「更にエドワード様がこの世界から帰られる時に、この村がいつまでも幸せで暮らせるようにと天草の剣を大地に突き刺し、そのおかげでこの村は災厄から守られているのでーす」
「違うよ…」
「ん?どういうこと?旅のお方。違うって何が?」
「いや…その神様の下り全然違うことになってるよ…?」
「何を言ってるの?嘘じゃないから!更にこの天草の剣は邪悪を切り、かつてのこの世界を支配していた大魔王を打ち破ったの聖剣で、何よりこの聖剣は持ち手を選び、勇者エドワード様しか抜けず扱いこなせない伝説の剣なんですよ?」
「所々あっている所と、後付されている所があるんだって!」
「はぁ?あんたさっきからまるで見てきたような言い方してるけどこの剣の何を知ってるの?」
「見てきたも何もこの剣は僕の剣で、そもそも勇者エドワードって僕のことだから…」
「あんたそれ以上の嘘は本当にあたし怒るわよ…」
ククリの顔が真っ赤に染まり、怒りで小刻みに揺れているようであった。
しかし僕も嘘を付いているわけではないのにうそつき扱いされていることに怒りを覚えていた。
「その剣は確かに邪悪飲みならずすべてを断ち切る事が出来るけど神様の下りは全く違うから。それは神獣ユニコーンの角とエルフの涙を触媒に作られた物だよ。それに僕がその剣を作ったわけでもない。それは大方カウラとリムルが適当に後付設定でつけた大嘘だよ!!!」
言い切った所で二、三歩前にスタスタと僕の前に出ると大きく腕を振りかぶって、僕の頬へ掌いっぱいビンタを放つ。
バチンと乾いた音が鳴り響き、後からやってくる鋭い痛みに僕は頬を抑える。
「旅のお方だと我慢して聞いていたけど、呼び捨てでは飽きたらず嘘つき扱い?
自分がエドワード様?そんな嘘をこの村、そして聖剣の前でよく言えたもんね。一発で済んだだけありがたく思いなさい!」
「何がありがたいだ!人を勝手に嘘つき呼ばわりしてだったら証拠見せてやるからカウラとリムル呼んでこいよ!そしたら立派な証明になるだろう」
「あんた一度ならず二度も伝説の一行様を侮辱する気?!」
そう言うと再びククリは大きく腕を振りかぶる。
「二人共おやめないな」
「イリス?」
僕達の口論に割って入ったのは黒髪の少女イリスであった。
「旅のお方大変ククリがどんだご無礼をしてしまい誠に申し訳ございませんでしたわ」
ペコリと小さい体でイリスは頭を下げる。
「ククリは小さい頃から伝説の一行様を心から尊敬しており伝説の一行様の話になると暑くなってしまいますの。この場は私の謝罪を持って一度お開きにして欲しいですわ。宜しいでしょうか?旅のお方」
「あ、あぁ…」
「ちょっとイリスあんた何勝手に終わらそうとしてるのよ」
「ククリも言いたいことはあるかもしれないですけど手を出すのは行けませんわ。あなたは一度頭冷やす事をおすすめしますわ」
「あたしははなっから冷静よ!」
「そういうわけでククリを連れて行きますので早めに旅のお方は身支度を済ませたらこの村から出て行く事をおすすめしますわ。これ以上ククリに殴られたくなかったら」
「今回はイリスの言う事に従ってあげるけど今度見かけたら只じゃおかないからね。何が目の前にカウラ様とリムル様を連れてこいよ。1000年前に亡くなった人をどう連れて来いって言うのよ!」
1000年前にカウラとリムルが死んだと謎の言葉を残して、イリスに連れられククリはこの部屋から立ち去っていた。