男の戦い!
思ったよりも早くミロは見つかった。
ミロは村を出てすぐの場所で、ガジネコと戦っていた。
「ミ……」
声をかけようとしたヴィオラだが、何故か急に恥ずかしくなって思わず草むらの影に身を潜める。
な、何故だろう。声をかけるのが恥ずかしい……。
バクバクと高鳴る心臓を押さえ、ヴィオラは深呼吸をすると、戦いの様子を覗うことにした。
「えいえい!」
ガジネコにパンチを繰り出すミロ。だが、その攻撃は当たらず逆にガジネコの反撃をくらっている。見ると、彼の体中には至るところにガジネコの歯型がある。相当やられているみたいだ。
だ、大丈夫かしらミロくん……。それに、なんだか様子が変だわ……。
心配そうに見つめながら、ヴィオラは懐から虹色のふちをした奇妙なメガネを取り出した。
魔道具No.1
名称【 見えるんです 】
効果【 対象のステータスを確認できる 】
魔道具【 見えるんです 】を装着し、ミロのステータスをチェックする。
名前:ミロ
職業:冒険者
LV:1
武器:なし
防具:ぬののふく
盾 :なし
靴 :かわのくつ
やっぱり……。ミロくん、武器も防具も装備してないじゃない!
さっきから感じていた違和感の正体をつきとめ、ヴィオラは納得する。
昨日までは木刀と革鎧を装備していたはずなのに、彼ったら一体どこへ置いてきたのかしら!
ブンブンと拳を振り回し、全くの装備なしの状態で戦うミロ。だがその攻撃は一向に当たらず、劣勢状態が続く。
ガジネコの攻撃を喰らい、ミロの体力がどんどん減っていく。
もう、もう見てられないわ!
居ても立ってもいられなくなったヴィオラは、草むらから飛び出した。
「ミロくん! 助太刀するわ!」
「ヴィ、ヴィオラさん、どうしてここに?!」
驚くミロに 駆け寄ろうとするヴィオラ。
こんな雑魚、一撃よ!
大地も砕くと言われる伝家の宝刀「拳」を振りかざし、ヴィオラはガジネコに迫る。
「待ってください! 助太刀は無用です!」
だが、それをミロが制した。
拳を振りかざした状態のまま、ヴィオラはピタリと止まる。
「で、でも……」
「これは男の戦いなんです! どうかヴィオラさんは、そこで見ていて下さい!」
真剣な表情のミロに、ヴィオラは何も言えなくなってしまった。
ゆっくりと拳を下ろし、黙って頷く。
ガジネコを睨みつけるミロ。
一瞬の間があったが、ガジネコは鋭い爪をむき出しにするとミロに向かって襲いかかってきた。
その攻撃をかわしたミロは、カウンター気味にパンチを繰り出す!
――会心の一撃!
ミロの一撃が見事に決まり、ガジネコは吹っ飛ぶ。
ミロはガジネコをやっつけた! 経験値0ポイント獲得!
「や、やったわミロくん!」
ヴィオラは、まるで自分のことのようにガッツポーズを見せ喜んだ。
「や、やりましたよヴィオラさん……」
ピースサインを突き出し、ニッコリと微笑んだミロは、そのままバタリと倒れた。