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レベル53万!

 魔王の居城を出たヴィオラは、虚脱感に包まれていた。


「あいつも大したこと無かったな……」


 レベル53万。これが彼女の現在のレベルだ。

 この世界における冒険者のレベル平均は30と言われている。それが53万。もはやチートを通り越してバグとも言えるヴィオラの強さに、この世界で敵うものはいない。ついさっきも、この世界を支配していた魔王&大魔王を正拳一発、蹴り一撃で倒してきたところだった。


 ヴィオラはこの世に生まれた時からレベル53万だった。何故自分はレベルが53万なのか。その理由は彼女自身もわからない。ただ分かっていることは、自分がこの世の最強生物であると言うことだ。

 だからと言って、彼女の容姿が筋肉ムキムキのマッスルゴリラ、と言う訳ではない。

 腰まである髪は桃色の美しいストレートヘアー。ピンとした形の良い鼻に、憂いある唇。ちょっときつめだが、髪と同じ桃色の大きな瞳が特徴的な美しい顔立ち。背丈は少し高く、しかも出るとこは出てるボッキュッボンのグラマラスなスタイル。そう、彼女は歩けば誰しもが振り返るような美少女であった。なのに世界最強生物なのである。


 物心ついた時、既にヴィオラの両親は彼女の強さに気付いていた。やがて二人は、その力を世の為に尽くそうと、彼女を勇者として育てることに決めた。そして、ヴィオラが17歳の誕生日を迎えた時、彼女は魔王を倒すために旅に出ることになった。


 途中、彼女の行く手を阻む色んな敵が現れた。

 最初に現れた魔物は、ちょっと小突いただけで原型が無くなった。

 美しい容姿である彼女を襲おうとした盗賊は、デコピン一発で空の星となった。

 とある国を支配していた魔王の手下は、城ごと塵と化した。

 そして、ラスボスである魔王、真のラスボスである大魔王についても先ほど説明した通りである。

 どんな敵も一撃。雑魚だろうが中ボスだろうがラスボスだろうが一撃。


 ヴィオラの腰には、旅の途中で手に入れた最強装備と言われている伝説の聖剣がぶら下がっている。だが、彼女はこの剣を手に入れてから一度も鞘から抜いたことがない。何故なら、伝説の聖剣よりも自分の正拳の方が強いからだ。

 村を出てから3週間で目的を達成した彼女は、これから何を目標に生きていけばいいのか見失っていた。そのあまりの強さに、今まで達成感と言うものを感じたことが無い彼女にとって、この世は退屈でつまらない世界だったのだ。


 いっそのこと、私がこの世を支配してやろうかしら。


 そんな邪悪な考えが一瞬よぎる。が、すぐに思い直した。

 世界を支配したところで何になる。この心の虚無感を埋めることが出来るのか? 結局何も変わりなどしない。結果が分かりきっていることをしたところで意味はない。何も満たされることは無いのだ。

 そんな自問自答をしながら、ヴィオラは自嘲気味にフッと笑った。

 そんな時だった。


――ガブッ!


 何かに噛み付かれたような感覚に、彼女は視線を足元へと向ける。

 そこには、ガジネコが彼女の足に噛み付いていた。

 ガジガジと噛み付く猫のような生物。だからガジネコ。この世界で最弱の魔物である。


 勢いよく噛み付かれてはいるが、彼女には全くダメージが入っていなかった。と言うよりも、彼女は生まれてこのかた痛覚と言うものを感じたことが無い。形式上伝説の鎧に身を包んではいるが、例え裸になって剣で切りつけられたとしても、彼女の持って生まれた防御力によりダメージを受けることはない。今も、ただ噛まれていると言う感覚があるだけだ。


 ヴィオラはそのまま気にせず歩き続ける。

 振り払うのも面倒だ。どうせ、そのうち疲れて離れるだろう。いつものことだ。

 そう思った時だった。


「あぶなあああい!」


 叫び声と共に、何者かが勢いよくヴィオラの目の前に飛び出した。そのままその者は、手に持つ木刀で彼女に噛み付くガジネコに一撃を加える。攻撃を受けたガジネコは、一目散に逃げ出した。


「大丈夫ですか?」


 金色のブロンドヘアーに、金色の瞳。

 そこには、まるで絵画から飛び出したかのような、美しい少年がいた。

 そのあまりの美しさに、ヴィオラは思わず見とれた。


「て……天使?」


 汚れのない美しく光輝く瞳。真っ白い肌は太陽に照らされ思わず目が眩みそうになる。少年の姿を見て天使と見間違えたヴィオラの気持ちは良く分かる。それほどまで少年は美しかったのだ。


「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」


 心配そうにヴィオラを覗き込む少年。

 瞬間、彼女の心臓が高鳴った。


――ドクン!


 なんなの、この感覚……。


――ドクン!


 なんなの、この胸の高鳴りは?


――ドクン!


 一体、なんなのーーーーーー!!


 少年の名前はミロ。

 これがヴィオラとミロの初めての出会いだった。

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