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胸騒ぎがする。怖い。なんかこれから起きることが、俺にとって最悪になる気がした。
「トパーズ!ソフィア!」
二人の所へ向かうと二人を囲うように5、6人がいた。助けないと、守らないと
「邪魔じゃ!」
「鬼族!」
首を狙って俺は、斬った。首から上を無くしたやつは、血を吹き上げながらゆっくりと倒れていく。なんだろう?この感覚は
「ソフィア!トパーズ!今、助けるからな!」
楽しい。爽快で、気持ち良い感じだ。もっとやりたい。もっと殺したい。
「ザック!後ろ!」
トパーズの声が聞こえた。後ろ?振り向くと剣を下ろそうとしている奴がいたから蹴り飛ばし、俺は、にっこりと微笑みながら奴が剣を持っていた手を握り奴の腹部にゆっくりと刺していった。
叫び声をあげても喚いても奴を誰も助けようとしない。
「フフ…弱いな。弱いのにどしたん?助けんのん?」
血が騒ぐ。血を見るたび楽しくなる。笑いたくなる。頭が可笑しくなったじゃないかって疑いたくなる。でも、止められないこの感覚。
「ザック…もしかしてあの月読みのザックか!?」
「嘘だろ?勝てるわけないだろ!?」
あー…懐かしい二つ名だ。あの頃は、嫌だった。でも、今じゃあそんなに嫌じゃい。
もっと俺をみて恐れろ。もっと殺したい。もっと楽しくて欲しい。もっと血を見たい。真っ赤な赤い血を、もっと
「ザック!目を覚まして下さい!」
「!!!!」
ソフィアの声。そうだ。ソフィアを守らないとダメなんだ。俺は、ソフィアを守る騎士なんだ。
足元を見ると昼間だと言うのに、月明かりにしか意思を持たない筈なのに、俺の影が笑っている?
「嘘だろ?昼間じゃろ?」
影が俺を取り込もうとしている気がした。
「死ね!」
「!!!!」
飛びかかる兵士をとっさに刀を振り上げ奴の腕を切り落とした。血は、当然のように吹き俺の顔汚す。
「はぁーはぁ…はぁーはぁ」
血が暑い。血が騒ぐ。頭が可笑しくなり俺が俺を失いそうだ。
「ザック!呪いに負けたらダメです!自分を見失ったらダメです!」
「ザック!」
呪いに負けたらダメだ。そうだ。そうだよな。あと3人。
「失せろ。影。俺は、呪いなんかに、影なんかに力を求めん」
すると一気に力が抜け膝まついてしまい、体が重く動けなくなった。
「これは、ラッキー」
「死ね!」
あー俺、死ぬんだ。やっと死ねるんだ。姉さんと父さんと母さんの所へ行けるんだ。
「危ない!」
気づくと目の前には、トパーズとソフィアが立っていた。トパーズの胸には、血が流れている。
俺を庇ったのだ。
「ザック。希望は、何時も心にあります。だから希望を忘れないで、下さい」
「ソフィア!トパーズ!逃げるんじゃ!」
逃げろ。逃げて欲しい。俺を見捨てて今すぐ逃げろ。
「ボクは、何も出来ない弱くて臆病ものだ。でも、親友を守るためならなんだって出来るわけだ。だから今度は、ボクたちが守る番なんだ。ザック」
「と言うわけです」
武器も使えないだろ?トパーズ。ソフィアを守らないとダメなんだ。トパーズを守らないとダメなんだ。俺が二人を守らないとダメなんだ。
「 夢から目覚めぬ蕀の姫… 」
ソフィアは、呪文を唱えている最中トパーズは、敵の攻撃を受け続けてている。
「 全てを呪い全てを恨め…ーーーーダークネス 」
呪文が唱え終わった瞬間、目の前に大きな円上の黒い物が地面にありソフィア、トパーズ、3人の兵士がそこに立っていた。
「じゃあな、ザック。ジュランを頼むな」
「生きて下さいね。大丈夫です。呪いも一緒に連れていきますから」
なんだよ。お別れの言葉を言って、俺も一緒に連れていってくれるんだろ?
「俺も一緒に連れていってくれ…俺を独りにしないでくれ!」
動け。俺の体。動いてくれ!
「もう、独りが嫌なんだ!」
その言葉は、虚しく2人と兵士たちは、暗闇へと堕ちていった。




