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何年もたってもやっぱり夜空は、嫌いだ。月明かりは、嫌いだ。呪いなんて、無くなれば良いのにと何度も願って、目をとじることも恐怖に感じている俺は、満足に寝たことがあれ以来無いと言っても良い。
いつになったら俺は、ゆっくり寝れるのだろうか?
「助けて!」
そして、俺の目の前には、子供を抱いた女性。見覚えがある女性だ。そりゃああるよ。だって俺のよく知っている世界で一人しかいない血の繋がりがある家族
「姉さん…」
俺の姉。生きていたんだな。そんなこと積もる話が、あるはずなのに何故か俺は、目をそらしてしまった
「ザック…その角…」
「……解っとるじゃろ?俺は、兵士だったんじゃけんこうなる運命なんよ」
仕方がないだろ?そんな顔をして無理な笑顔で姉さんをみると今でも泣きそうな顔で俺をみていた。
「まーとりあえず、ホットミルク作るけん入り?」
「……ありがとう……でも、良いわ」
そう言って無理な笑顔で姉さんも微笑み子供の肩を押す。
「この子をお願い。私の大切な愛娘“ミリア”で、好きな食べ物は、パンケーキ。嫌いなのは、人参。うさぎさんの人形を枕元に置くと安心して寝るわ」
「姉さん、どうしたん?なんかあったん?」
「私…殺されるの。この子は、ハートイルの子なの…」
ハートイル。この国の王の名前だ。しかしハートイル王には、妃がいる。と言うことは、姉さんは、愛人と言うわけだ。
愛人と王の中で産まれたハーフの女の子。それを妃は、許せないのだろ。
「お願い、ザック。私の最初で最後の願いこの子をスモークピンク色の髪をした男が来るまで、誰にも渡さないで!」
「姉さんもここで隠れば良いじゃろ?」
子供が隠れるスペースもある。姉さんが隠れるスペースもある。どちらかが助かる選択を俺は、したくないのに姉さんは、俺の胸に軽く叩き
「私が死ねば…
ミリアもザックも助かるから、ね?お願い、ザック」
そう言って涙を流して俺をみた。俺の選択肢は、yesしかないと言う訳だ。どうして、死なないとダメなんだろう?どうして?
「最後に家族に会えて良かった。ザックに会えて良かった」
「お母さん、どうしたの?」
寝ていたミリアは、泣いている姉さんをみて目を擦りながら首をかしげて言った。姉さんは、微笑みながら
「お母さん、遠くに行ってくるからこのお兄さんと一緒に良い子にいるだよ」
「うん。何時に迎え来てくれるの?おうちに何時に帰れるの?」
「解らないわ。でも、ちゃんと迎えに来てくれるから、大丈夫よ」
姉さんは、自分が死ぬことを解っていてあんな笑顔で子供みるんだな。
「うん!解った」
「好き嫌いしたらダメよ?」
「うん」
「人に迷惑かけたらダメよ?」
「うん」
「人に優しくするのよ。ご飯を食べた後は、歯磨きするのよ。遊んだ後は、手洗いうがいをきちんとするのよ。お菓子ばかり食べずにご飯をしっかり食べなさい。そして、強く生きなさい。貴女は、貴女らしく自由に」
「うん」
姉さんは、立ち上がり手を振り子供がミリアが聞こえない声で
「そして、最後に…幸せになってね」
そう呟いて俺を抱き締め涙を隠しその場を後にした。
それから数分後に姉さんに言われた通りスモークピンク色の髪をした男が現れ姉さんの愛娘ミリアを連れ何処かへと向かっていったのを俺は、見ることしか出来ない。
久し振りに月明かりにあたったせいか苦しい?
いや違う。この感覚は、昔に感じたことがある。そうだ。これは、目の前でソフィアが死んだときのあと時と同じだ。
「心が痛い…」
苦しい。寂しい。どうして、俺は、何時も見送る事しか出来ないだろうか?死ぬと解っていて止めることが出来ないだろうか?
俺は、何時も逃げているばかりだ。目をそらしているばかりだ
「向き合うことも俺は、怖れているんだな…」
こうして、何年もこの暮らしが続かないぐらい解っている。この暮らしんしてもう、10年もたとうとしている。ソフィアとトパーズの間に子供も産まれた。
解っている。一ヵ所に止まると言うことは、それなりのリスクがあると言うことも俺は、解っている。
この世界に何処へ逃げてもソフィアの運命は、変わらないことも俺は、解っている。
キーンと耳鳴りと頭痛がした瞬間に過った不安が俺の心を揺さぶった。
「ソフィア…トパーズ…」
二人が死ぬ?いやそんなわけない。だけど俺は、自然と走って二人の家へと向かっていた。