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あれから何日たって、大きな森を見つけ、奥深く向かうと海が見える場所を見つけた。
「此所に家をたてようよ!」
トパーズが笑顔で言うとソフィアは、微笑み賛成をする。俺たちの俺たちだけの家。
俺が帰る場所だ。家に帰れば、お帰りと言うと人がいるだけで、幸せだった。
数年たって俺は、二人の幸せを考えるようになった。
「そうだ。俺、もうひとつ家を建てるけん」
「どうしてなんだよ?」
「ソフィアと二人だけで居たいだろ?」
俺が邪魔だと解っているから、言えたことばだ。トパーズは、顔を真っ赤にして、俺を見る。
「そ、そうだけど、ザックは、ソフィアの騎士だろ?」
「俺は、二人が幸せになれば、俺も幸せなんじゃ。それに三人じゃあ狭いじゃろ?」
「ザック…………ありがとう」
俺は、にっこり微笑み既に出来ている家をトパーズに見せた。
「さすがザック!中を見ても良いか?」
そう言いながら既に開けて入るのは、トパーズらしい。ベッドに子供、机に椅子、日常に必要なものを揃えてるまで1ヶ月かかった。でも、我ながらに満足しているのも当然だ。
って子供?
「何でガキがおるん!?」
「シクシクシク…」
泣いている?人のベッドに?え?何?まるで俺が悪いことしたみたいになるじゃないか。
「ザック、いきなり怒鳴ったら怖がるだろ?
どうしたの?どうして君は、此所にいるの?」
「…みんなが、僕をいじめるんだ。みんな…僕がおかしいって言って…みんな僕を一人にするんだ…だから誰も信じるのが怖いから…誰もいない場所に行きたくて」
「此所に来たってことか…」
誰も信じれない。誰もいない場所に逃げたい。生きるのが怖い。でも、死ぬもの怖い。
「帰れ」
「嫌だ!また、いじめられるんだ!怖いよ。もう、あんなことされるのは、嫌だ!」
「ワガママ言ったらダメじゃ!」
ガキは、涙を流して俺を睨み付け、トパーズは、俺の胸ぐらを掴み殴りかかった。
「ザックがこんなに冷たい奴だって知らなかった」
「下がってろ、トパーズ」
俺は、初めてトパーズに睨み付けトパーズの手を祓いガキのところに向かった。
俺は、よく知っている。知っているから言える言葉もある。
「怖いかもしれん、苦しいかもしれん。でも、そこで逃げて、目をそらして、気持ちに押し潰れそうになって、辛くなって、明日を生きるのが怖くなるじゃ」
俺は、そうだった。明日を生きるのが怖い。苦しい。でも、死ぬもの出来ない。そんな時、救ってくれるのは、親友であるトパーズとソフィアだった。けど、こいつには、手を差忍ばしてくれる奴がいない。
「お前が嫌なことも悲しいことも苦しいことも何でも俺に相談すれば良い。話してくれれば良い。でも、お前は、お前が帰る場所に帰るんじゃ。そこが、お前の居場所なんじゃけん。な?」
「僕が帰る場所?」
「そうじゃ。“ただいま”って言えば“お帰り”って聞こえる場所じゃ。この世界の奴ら皆、帰る場所があるだけで、朝、“お早う”言って“お早う”って言ってくれる人がいるだけで、明日を生きることが出来るんじゃ」
家族を失って、妹と離れ離れになって、帰る場所が無かった。けれど、ソフィアとトパーズに出会って、こうして暮らして、此所にいたいと願った。
神様がくれた俺の最後の願い事かもしれないと疑いたくなりそうだ。
「名前、聞いてなかったな。俺は、ザック、そしてアイツがトパーズじゃ」
「…………ハンク…………」
ハンク。良い名前だ。綺麗な顔に長いまつげ。男にしては、可愛いな。そんな趣味ではないけど
「よし!ハンク!また、明日な」
ハンクは、少しだけ考え俺を見て、にっこり微笑んだ。
「うん…!またね」
手を振り俺は、ハンクが帰っていったのを確認して、トパーズを見る。
「ザック…ごめん」
「カッカッカッカ!細かいこと気にせんでええよ」
そう言えば、ハンクと言う名前とあの瞳にどこかで見覚えがある気がする?まぁ良いや。明日になれば思い出すだろう