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彼岸花が咲く頃  作者: 花染
神子と騎士
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3

 赤月の呪い。俺たち鬼族の一人にかけられる言わば生け贄と言って良いほど残酷な呪い。


 俺の影は、ある感情になると俺から離れ俺の闇を写す。影がなくなった俺は、彼が戻るまで、意識はなくなり悪夢を見る。


「ザック…これお前一人で殺ったのか?」


 トパーズが湖から出てきて俺を見ていた。当然だ。戦争が終わってから俺は、人を殺した事はない。と言うよりもこれを隠すために余り夜中に出歩くこどもしなかったからだ。


「そうじゃ……

なぁ…ソフィア、トパーズ此処から出来るだけ逃げよう」


 アイツは、教会の奴らだったと思う。と言うことは、ソフィアとそして、こいつらを殺した俺は、街に戻れない。そして、俺と何時も一緒に居たトパーズも無事とは、言えない。


「どうして?」

「教会の奴らに捕まったら俺たちは、また離れ離れになるんじゃから俺は、そんなの嫌なんじゃ。戦争が始まる前の頃…俺が兵士になる前のあの頃のようになりたいけん…」

「皆を裏切ってもか?」


 ソフィアは、神子だ。世界を守る神子だ。そんなの解っている。世界は、ソフィアが必要なんだ。解っている。でも、二人が居なかったら俺は、可笑しくなりそうなんだ。


「俺が二人を守るけん。何を引き換えてもどんなことがあっても守るけん。じゃけん、俺を信じろ」

「解りました」

「ソフィア!」

「ザック、忘却の海の水を飲んで下さい」


 水を飲む?この湖の水を?飲んでなにがあるんだ?それよりもどうやってそんな流れになるんだ?そう考えているとソフィアは、微笑んで背中を押して


「この水は、善の心を持つものには、力となり、使命を与えられます。そして、悪の心を持つものには、毒となります。ザック、私の力になって下さい」

「……俺…飲めない」


 善悪を見極める水なら俺が飲むと毒なる。俺は、多くの人を殺して、多くの人の物を盗んで、傷付けた。その証として、角も生えた。そして、天罰がこの呪いだ。


 悪に染まった俺の心は、こうして今になって苦しむ事になるっている。


 しかし、ソフィアは、それを諦めず手を引っ張り


「大丈夫ですよ。私は、ザックのことよく知っていますよ。本当は、心から優しい人ですから」


 優しい。俺が優しい?違う。俺は、優しくない。ソフィアを守る理由もトパーズを守る理由も単なる俺のワガママだ。


「ソフィア!俺なんかよりトパーズの方が…っ!」

「ごちゃごちゃ言わずにさっさと飲めよ!」


 その言葉が聞こえたかと思った瞬間、背中に猛烈な痛みと打撃に俺は、湖に落ちていた。


「トパーズ!なにするん!?」

「ボクが水を飲めないって解っていて言っているのか?ザック」


 元々海で暮らしていた人魚は、水などを飲む習慣がない。水を飲むことが出来ない。忘れてた。


「ザック、ボクたちは、親友だろ?」


 守りたいと言う気持ちは、同じだ。そう言われた気がした。


「本当は、人を殺したくないだろ?本当は、怖いだろ?本当は、人のために良いことしたいだろ?」


 本当は、死にたいほどこの世界から逃げたかった。戦争でいっそうのこと死にたかった。


 明日を生きるのが、怖かったんだ。


「ボクがザックを守るからな?それでおあいこだ」

「…………」


 この水を飲めばソフィアを守る力を入れる。だけど、死ぬかもしれない。


 戦争で俺は、生きるために親友を守るために戦った。戦争が終わって盗賊を始めたのも俺が生きるため。


 何度も死にたいと願っていた俺は、生きることしか考えていた臆病者だ。


「アークル…こんな臆病者に力を貸してくれ」


 手で掬って眺めると手の水から月が見えた。


 こんな弱い俺に力を貸してくれ。あんな呪いに負けない強い心が欲しいんだ。


 そして、あんなに死にたいと願っていたけど、少しだけ考え直すよ。ワガママかもしれないけど、生きたいだ。二人を守る為に俺は、生きたいだ。


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