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彼岸花が咲く頃  作者: 花染
神子と騎士
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「ザック・フォルス!起きろ!」


 フライパンをお玉を思いっきり叩いた音が家中に響き渡る。頭が可笑しくなるほど音と同時に俺を呼ぶ声。それが俺の朝が来たと言う合図。しかしこれは、流石に煩い。


 しかし、外を見ると真っ暗。朝日さえ見えない。


「煩いけん、トパーズ」

「ザック!大変だ!」


 何時も整った髪がボサボサで、木の枝や葉が絡まっている。何処から来たのだろうと思うほど酷い格好をした俺の親友のトパーズは、顔を真っ青にして、俺の肩を揺する。


「えっと…ワケわからんけん。とりあえず、落ち着けって」

「あ、ああ…」


 そう言ってトパーズは、何回か深呼吸をして、落ち着いたのか俺をじっと見てか


「忘却の海が輝いているんだ」

「ん?どう意味なん?」


 忘却の海と言えば、あの大きな湖のことだろ?訳が解らない事で起こされる俺の身になれと言うことなんて言えるわけもなく変顔をしているトパーズをみる。


「耳が遠くなったのか?ザック」

「アホか。俺は、まだ二十歳じゃ。そんなわけ無いけんな」


 そんなわけ無い。まだ若い。まだ若い。最近、酒とスルメが旨いと思っているけど…って違うそれじゃあない。


「んで?湖が輝くって言ったんじゃろ?見違えじゃろ?」

「嘘だと思うなら着いてこいよ!」

「暗いの嫌じゃ」


 と言うよりもまだ眠い。昨日は、遅くまで、迷子のガキを探していたからな。盗賊の首相である俺がこんなことをしていた事なんて言えるわけ無いから言い訳せんけど


「ランプ持っていけば良いだろ?」

「火は、どうするん?アルコールも切れとるけん」

「酒があるだろ?火は、ザックの魔法で何となる!な?な?良いだろ?」


 トパーズの手には、隠していた俺のお気に入りの酒とアルコールが切れたアルコールランプ。


 笑顔で俺を見て酒をドバドバと入れて親指をたてた。いや、なにか間違っている。魔法で何となるわけないだろ?下手したらっと言うより完璧に俺の家がッボンだよ?


「解ったけんな。トパーズとりあえず落ち着け。俺の家燃えちゃう」

「大丈夫だって!そうなる前にボクの水の魔法で消すから!あ!燃えやすく油を入れたらどうかな?」

「油は、ダメじゃ」


 と言うより目的が変わってるし、それこそボンだよ?一瞬でボンになったら俺泣くよ?


 そして俺は、これほどこいつがバカだとは、思っていなかったよ。ごめん


「よし、解った。じゃあさ、ザックが友達になった火属性の魔物をだしてよ!ボク見てみたい!」

「火属性だろうがなんだろうが火は危険じゃけんダメ。お母さんは、許しません」


 どんだけ家を燃やしたいだよ。いくらトパーズが人魚で、水の魔法が使えるからってこんな結末で、俺の家が無くなるの悲しいし、そして、アジトも無くなる。


「魔法道具があるじゃろ?確か3番目の引き出しに光属性の魔方陣がかかれているランプがあると思うけんそれで良い?」

「それを早く言えよ。ザック」


 そう言ってランプを探す。使う必要がないと思ったけど誰か知らない人から貰った(奪った)奴がここで、役に立つとは、思ってもないけど…と言うよりもこうしているうちにトパーズが言っていた光が消えてしまうのではないだろうか?


 そして、こんな暗いのに外が騒がしい?窓を開けてそとでも見てみると人がたくさんいる?


「何があったん? 」

「忘却の海がある教会から光の柱がみえたんだ。こんな真夜中に光だぞ?あり得ないだろ?」


 光の柱?湖に?トパーズが湖が輝くって言っていた。その数分後に光の柱。光。湖。教会。


“悲しみの涙から生まれた湖が輝く頃我は、再び目覚めるだろう”


 その瞬間おれは、何故かおとぎ話“龍王の欠片”を思い出した。


「神アークルが目覚めた…?」


 いや、違う。あれは、おとぎ話だ。昔話だ。でも、何でこんなにも不安になるんだ?


「あった!ってどうしたんだ?ザック」

「トパーズ、急いで湖に行くぞ!」


 慌てて行った訳だ。けれどたしか、忘却の海がある場所は、誰もいない教会の中庭にあるはずだ。そうこう考えていると目の前には、朽ち果てた教会だ。誰もいない。埃と蜘蛛の巣だらけ、最悪だだ。


 そして、壊れた扉を開き大きな湖を眺めていた。


「なんかさ、ザック。懐かしいね」


 懐かしいっか。確かに戦争になる前は、此処も多くの人が祈りへ来ていた。俺もトパーズ、あともう一人ここで遊んでいた。


 仲が良かった。どの種族もどんな種族も戦争で心が変わって考えも変わった。俺もその一人に入るだろ。この角がその証だからだ。


「そうじゃな。にしてもなんともないじゃけど?」

「……うん。そだな。あれ?彼処に人が寝ている?」


 湖の近くに倒れている人。見たことある顔だ。よく知っている顔。懐かしい顔だ。いや、それより一番驚いたのは、生きている筈がない顔だ。


「…ソフィア…?」


 そう言ったのは、トパーズだ。ソフィア。俺たちの親友の名前。懐かしい人の名前。昔、よく遊んだ正義感が溢れた人魚の女の子の名前。


 あのソフィア?いや、違う。似ているけど違う。


 何故なら彼女は



「トパーズ。ソフィアは、戦争で死んだはずじゃろ?」


 この世に生きている筈が無いのだから。

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