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第1話 

今回、出てくるメンバー

・天岸空・天岸夜空・入生田璃乃・神崎シン

・霧白空也・戈ノ元果絵・簗橋有都


※今回から三人称から光輝視点にさせていただきました。




「……オレは冗談だと思ってたんだけどな」

 少年の目の前に繰り広げられていた風景は、今まで見てきたものとは別のものだった。

 少年こと御影光輝が今までいた世界は幾度の戦争があった後、挫けることなく人々が頑張って作り上げてきた文明が発展した究極の街であったが、今いる場所付近はそんな栄えた様子はなく、これから発展していくような雰囲気を醸し出していた。

 それだけでここは別次元だと認識せざるを得なかった。

「気がつきましたか」

「あぁ、おかげさまでな」

「……では、勝手ながら説明させていただきます」

「ああ」

「今、この世界では妙な生き物が無数に生息しています。姿形は、生き物によって変わっています。獣型もいれば、妖精型もいるといった感じに」

 妖精ねぇ……。

 今までならそんな存在に悩まされることはなかったが、今のこの状況からするにまんまゲームの中の世界に放り込まれた気分だな。と苦笑気味に呟く光輝。彼の視線の先には直前まで会っていた光球――ではなく、スーツを着た黒髪ポニーテールの女性がいた。

「……それは別にいいんだけどさ。アンタ、本当にあのときの人魂か?」

「人魂、言わないでください!! わたしはあの校長です」

 母親が子供に叱るような口調で遠くのほうを指差す女性。

 その指先を覗き込むように見てみると、奥のほうにある建物を目視できた。

「はいはい、わかりました。」

「むっ……。信じてないですね」

「で、オレに守って欲しいっていうのはあの学校か?」

「……いえ、学校もなんですけど。一番はこの世界を、ですかね」

 これまためんどくさい仕事を押し付けてきやがるな。

 少年は内心、そんなことを思いながら嫌な顔一つせずに笑顔で浮けながす。

「いいですよ、守ってやる。アンタらも学校も、この世界も」

 “夢幻光源(インフィニティ・ライト)”の異名に賭けて――。




「……って言ったのはいいんだけどさ」

 自分の目の前に繰り広げられる光景を目撃し、オレは眉をひくひくと動かすことしか出来なかった。

 摩訶不思議な光景なら腐るほど見ていて、そろそろ慣れというものが出来ているだろうと思っていたのだが、上には上がいたようだ。

 魔物の存在や魔法の存在なんて目じゃない。

「アルト、バーストについて教えてよ」

「……急にどうした? 今まで、そんなことを言ったことなかったのに」

「ボクも強くなりたい。強くなってアルトを守りたいの」

「ば、バカ。リノに守られなくても大丈夫だ。むしろ、オレがリノを守るよ」

「……アルト」

 オレが今日から所属することになる【Ability】――通称A組の教室に入った直後のことだった。

 教室の片隅で行われている男同士の恋愛模様というやつを見せられたり。

「お兄様、そろそろ泳ぐことぐらいは出来ますわよね?」

「……僕、セレブだから水泳はちょっと」

「そんな言い訳でこの場をどうにか出来るとお思いですか? 大体、何かあったときどうするおつもりですか。泳げなくてはいざというとき――」

「あ、あはははは……」

 別の一角では兄妹と思える二人の個人的な会話がされていた。

 あの光景を見る限り、兄と思われる男は水泳が苦手なのだろう。で、このままでは災害などがあったとき不味いと思った妹が忠告をしに行ったと。

 ……これについてはオレは何ともいえないな。

 まぁ、さっきの軽くBLのネタについても突っ込むつもりはねぇけどな。

 こんな感じによくわからない状況になっていた。だからこそ、オレはちょっと憂鬱な気分になっていたのだ。

 この状況に巻き込まれるよりは、得体の知れない魔物達と戦っていたほうがよっぽどマシだ。

「はいはーい。そろそろ私語は謹んでください」

 ちょっとの間だけ姿を消していたというかオレの前からいなくなっていた校長が、いつの間にか教室へと来ていた。

 おそらくオレが鬱な気分になっていたときに来ていたが、オレは気づくことが出来なかったのだろう。

 もしくはこの校長が空気的存在――ということになるだろうが、こいつが空気なんて絶対にない。あるはずがない。

「えぇっと、今日から新しい友達が二人も増えますよ」

 二人ってどういうことだ?

 オレだけじゃなくて、同日にもう一人いるってことなのか。

「……校長。ここには一人しかいないようだが?」

 さっきまで外の景色をずっと見ていて、他人と関わろうとしていなかった一人の男が呟いた。

 黒髪で髪は襟にかかる程度という極めて普通の高校生っぽい男だ。

「よく言ってくれましたね! 空也君」

「いや、普通に気になるから」

「……おや、他人と関わろうとしない空也君の口からそんな言葉が。私は感動しましたよ!!」

「めんどくさいやつなら絡まないつもりで聞いたんだがな。更にめんどくさいことになった」

 空也とやら、その言葉には同感だ。

 こいつは確実にめんどいパターンのやつで、構うとうるさくて無視すると寂しそうな顔をするという極めてめんどくさいパターンだ。

「……で、結局のところどうなんだ?」

「そうですね。光輝君と同じく可愛い男の娘ですよ」

 ちょっと外れた回答をしでかす校長に向かって、小さな声でそうじゃないだろとツッコンでいる空也の声をオレは聞き逃さなかった。

 そしてオレは可愛くないから。

「……って、アンタ。今、男の娘って言ったよな? どうせ、その子っていうのは娘って書くんだろ?」

「では、入ってきてもらいましょうか」

「おい、無視するな!!」

「月刃君、入ってきて」

「はぁ……。勝手に可愛いなんて言いやがって」

 無茶振りの後に入ってきた男は、校長の言うとおり可愛い系のやつだった。

 うん、これは男の娘って言われてもおかしくはないな。オレを男の娘っていうのはおかしいと心から思うが――。

「へぇ、なかなかの男の娘だね。見ているだけでワタシの創作意欲が湧き出てきそうですー」

「……創作意欲」

 クラスメイトとなる一人の女の子が呟いた言葉によって、オレは少し引いてしまう。

 普通なら引くようなことのない普通の言葉なのだが、なぜだろうか。容姿というか外見も相合ってか、いやな予感しかしなかったのだ。

「ほら、いきなり変態発言をするから光輝が引いてるだろ」

 顔にまでオレは今、引いてますと出ていたのか眼帯をつけた男が言った。

 というか、オレ、自己紹介したっけか? あー、校長が言っていた言葉で覚えたのか。

「えぇーっ、こんな近くにいいモデルがいるんですよ? これは、書かないとダメじゃないですかー」

「……それならあっちのBLコンビをモデルに書け。そっちのほうが面白いぞ」

「あ、それもそうですねー」

「って、そこでなんでオレ達が出てくるんだよ!!」

「……アルトはボクと一緒はいや?」

「あ、いや、そういうわけじゃないんだが――」

 これをキッカケに教室中あちこちで騒ぎ始めるクラスメイト達。

 もしかしたらこれがいつもの光景なのかも知れないが、今日初めてきたオレにとってはとんでもない光景に見えた。

 なんていうか、個性的なメンバーが揃いすぎてカオスなことになってるなと。

「……ま、これからはオレがこいつらを護って行かないとダメなんだよな」

 隣から視線を感じたが、オレは気づかないことにして教室を出た。

 どうせ、この騒動が収まるにも時間がかかるだろう。

 その時間ぐらいは勝手にさせてもらおう。



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