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短編集 掌篇  作者: かわ
掌篇
7/26

31-35

便宜上、はじめに数字を振っていますがそれぞれ独立しています。

31


 男は叡智を求めた。

 苦労の末に、叡智に次ぐ知識を男は得た。


 けれど男にはわからないことがあった。

 そして男はすれ違う毎に質問を投げかけた。


 男は聞いた。生きるとは何か、と。

 あるものは影響を与えることだと言った。

 生命活動を続けることで、他に影響を与えることなのだと。


 あるものは影響を受けることだと言った。

 過去、偉を成しえたものの残した遺産の恩恵に浴することだと。


 あるものはそこにあることなのだと言った。

 考えることもなく、ただあるがままに存在すること、と。


 男には「生きる」がわからなかった。

 男は聞き続けた。生きるとは何か。何か。何か…


 男は、いつしかただ彷徨うものとなった。

 それでも男は探し続けた。

 己の求めたものすら忘れて、只管この世を彷徨っていた。





                    (2008/10/20)

*****



32


いやだ!


この音が私を追いつめる。

一定で、断続的なくせに強く自身を主張する。


もう聞きたくないのにどうしても逃れられない、

中のオト。


私を私以上に知る、私の音。





                    (2008/11/02)

*****



33


ああ、私は待っていたのです。

あなたがいらしてくれるのを。


けれど、あなたも待っていらしたのですね。

私が私ではなくなるのを。


構いません。連れて行ってくださいまし。

仄暗い、月明かりの世界へ。





                    (2008/11/02)

*****



34


 …よく、わからないな。

 見せてくれないか?

 その手に、確かに存在するものがあるなら。

 え?

 大丈夫だよ、取ったりなんてしないさ。

 それに簡単にとられてしまうようなものでもないだろう?

 何?減る?

 何をケチ臭いことを言ってるんだ君は。

 それともこんな些細なことで減る程度のものなのかい?

 いいかい。僕はそれが欲しいのではなく、ましてや羨んでるのでも嫉んでいるのでもない。

 ただ知りたいんだ。

 君らの崇拝する、その面倒で非効率的なそんなものに、本当に価値があるのかどうか。

 そんな不確かなものに依存してしまいたくなるほどの、何がその存続を許しているのか。

 僕はただそれが知りたいだけなんだ。

 さあ手を開いてみろよ。

 僕にその愚かで浅ましい熱を曝け出せるものならば。





                    (2008/11/02)

*****



35


 ねえ知ってる?

 貴族って特権階級なんだって。

 自分より下の人には何をしても許されるんだって。

 たとえば慈悲をかけてオメグミってやつを与えるのも、その裏で権も理も踏みにじってしまっても、おおっぴらに露見しなきゃあ許されてしまうんだって。

 貴重な括りにいるってのに、えげつないものだね。

 それとも、こんな蛮行を実行しても平気でいられる厚顔さが貴重ってことなのかな?

 ん?不敬だって?

 どこに敬うべき人がいるって言うんだい?

 僕の目の前にいるのは人なんかじゃなくて、理性を失くしたただのケダモノじゃないか。





                    (2008/12/24)

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