11-15
便宜上、はじめに数字を振っていますがそれぞれ独立しています。
11
普段は施錠されている扉を開けた向こうは、どこよりも近く空を感じられた。
雨に濡れた空はその厚い雲の分だけ存在を近く感じる。
半歩遅れて外を見た連れは、僕の感傷にはまるで気付かずに目を輝かせ、徐に屋上へと走り出た。咄嗟に手を伸ばして引きとめようとしたが、己の反射神経の鈍さを噛みしめるだけに終わった。
空振りした手の先にはまるで小さな子供のように楽しそうにはしゃぐ姿。それを目にしてしまうと、もう風邪をひくからと引き戻す気力すらなくなってしまう。
初めて会ったとき、夏目はまだ10歳をいくらか過ぎたほどで、必然僕も同じくらいの年齢だった。けれど中身は対極で、明るく人懐こかった夏目に対し、僕は只管に冷めたものの見方しかできない子供だった。それでも反発することなく親しくなっていったのは、双方とも己のうちを素直に表に出していたからだと思う。
僕らの年頃の子供にとってここはまさに牢獄。退屈な毎日と儘ならない体に不満を持つのは仕方のないことだと思う。同時に不満を持っても何も変わらないことを、僕らは身を以って知っていた。
(2008/04/16)
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12
同じ過ちを幾度も幾度も繰り返し、
同じ結果に涙する。
同じ廻りを辿っては、
同じ後悔が身を焼いて。
果てない繰り事は消えることなく、
輪を描いて彷徨う。
それがもし無限の輪廻ではなく、バネの様な螺旋であったなら、
いつか、違う何かをつかめるだろうか…
(2008/04/26)
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13
ねえ目を瞑ってみて、何が見える?
そうじゃないよ。見えないんじゃなくて、それは瞼の裏を見ているっていうの。
証拠にほら、少しだけ明るい方を向いたらうっすら紅い枝が見えるでしょう?
ねえ、本当に見えないものなんてこの世にはとても少ししかないんだよ。
目を背けたって逸らせた先を見ているし、逸らしかったものだって、それが何か朧気にでもわかっているから逸らしているのでしょう。
ねえちゃんと見てよ。
私は意地悪だから、あなたが目を逸らしたって何度でも視線の先に回りこむわ。絶対に逃がしてあげないし、逃げることを許してなんてあげない。
目を開けた先に、いつだって私は立っている。
だからどうせなら、しっかり前を向いて、正面から私と対峙して。
(2008/05/09)
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14
例えば何重にもしたガーゼで目隠しをされた感じ。
柔らかくて護ることを目的としたそれは、一枚ずつは薄くても幾重も連ねれば厚い膜となって、堅固な鎧にもなる。
時には盾に時には壁になって、外界との接触に拘ってくるそれ。
けれどもそれは、決して永遠の物ではなくて、患部に触れた箇所から徐々に徐々に廃れていって。
いずれは薄い膜すらも視界を遮る物がなくなる。
でもそれは完全に消えるのではなくて、
或いは瞼に
或いは患部に
或いは、本当は何も変わっていないのかも知れないと不安を残して。
見えないそれを感じながら年を経て行き、
模索し振り返りながらその道を進むか
蹲り、全てを投げ出し止ってしまうか
それらを決めるのは、
目隠しの主次第。
(2008/05/13)
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15
ねえ、僕が本当に恐いものはなんだと思う?
君に嫌われることかな?
どうしようもない奴だと呆れられること…嘲られることかな?
ううん。そんなことのはずがない。
君の言葉が何であれ、その一つ一つが今でも僕の宝物だ。
僕が恐いのはただ一つ、
君の
無関心
(2008/05/23)




