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短編集 掌篇  作者: かわ
世迷言
21/26

10:逃避に非ず

あなたには感謝しています。

それでも、尊敬することはどうしてもできないのです。


あなたは私に充分な食事と、棲佳と、生活をお与え下さいました。

世間で言われる所の責任を確かに果たしていると、未熟な私にも思えます。


けれど、その陰であの方がどれ程苦心されていたか、

あなたはご存じないでしょう?

あなたが話す、ご自分の如何に優れんかのお話に、

醜悪なばかりの自尊心、己惚れ、他者への無意識の侮蔑が

確かに含まれているのに、今を以ってもお気づきにはなられないのでしょうね。


それにあなたはご自分にとても素直でいらしたわ。

私が口答えをした時、あなたは口が開かなくなるほど私の頬を張りましたね。

そんなあなたから目を背けた私のこめかみを、あらん限りのお力で殴られましたね。

あなたは他者を貶める方、貶められる側では耐えられないのですもの。

私が全ての諸悪の源に見えてしまわれるのですね。


でも…考えて御覧なさいまし?


この顔を周りの方がご覧になられた時、あなたがどのようなことをなさったのか

隠しようもなく知られてしまうと思われませんか?

その人のものではないような雄叫び声が、この薄い壁を越えて

さぞや響いていることがお分かりになられないのですか?


これが明るみに晒された時、あなたはきっと醜くも無意味な弁解を

辺りに垂れ流すことでしょうね。

ああ、けれど。

今のあなたにはきっと私の言葉は油のような可燃性を秘めていることでしょう。

だから私は黙って参ることに致します。


この腫れ上がった瞼も

元は白かったこの頬も

どす黒く歪んでしまったこの口唇も

伸びやかとはいえないこの手足も何もかも。

全て持って消え行きます。


××××様

私は、あなたのことを心より愛しておりましたのよ。


だから、私のたった一つのこの体躯は

決してあなたに支配などさせない。


私の居ぬ世で 苦しみもがき 報いを受けられんことを…





*****


すさまじく後ろ向きな、皮肉と呪詛の入り混じった言葉ですね。病んでますよ、語り部さん(汗)

でも、病んでるっていうのを自覚するのには健康な状態がどんなものかを知らなければいけないのですよね。

自分の置かれた状況が全てと感じてしまう種族としては、比較できるものがなければ普通と言うのがどんなものか、統計すら出せないものだと思っています。

おかげで知識なんかは豊かになるのだろうけれど、代わりにそれに囚われて自分の意識の幅が限定されてしまう、など何らかの制限を受けてしまうのじゃないかとも思います。

話が逸れましたね。

ええと、その比較をするのに必要なのは、それまでの自分の経験が根本にあって、幼い頃感じたことや学んだことが自分の判断の基準を司るものだと思うのですが、例えばそれが歪んでしまっていたらどうなるのかと思って書きました。

歪んだ根底を植え付けられた人が成長して普通を学んだら。きっとその狭間でひずんで、心が悲鳴を上げて、挙句壊れてしまうのじゃないかな。

勿論それが全てではないけれども、全ての中の一つでは無いかと傲慢にも考えいます。

一度歪んでしまった心は治るのか。世迷言にすらなら無い戯言ですが、今考えるのはそればかりです。

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