9『その通りではありますが、説明不足は否めませんねえ』
「モンスターが、モンスターを襲ってるの?」
『左様でございます。使徒様はご存知ないのかもしれませんが、エリアに自動で産まれるモンスターとわたくしどもは別種でございます。人種とモンスターが敵対するように、我らとモンスターも敵対しております』
「……そうなんですね」
『神様から説明は受けておりませんか?』
「無いですね。頼まれたのは人が弱いので強化してモンスターを減らしてくれってだけです」
『その通りではありますが、説明不足は否めませんねえ』
困った神様です事、と楽しげに馬車さんが笑うとカタカタという馬車の走行音がコロコロという音に変わった。
これは、笑い声なのか…!
『ではわたくしめがお迎えに参ったこと、さぞ驚かれたでしょう。モンスターに乗るなど殺されるかと思われたでしょうに、よく乗ってくれましたねぇ』
「私を使徒って呼ぶのは神様を知っている人達なので。それに何となく……誘導されている気配は感じたので」
思い出すのはランクアップクエストのゴーレムと深淵さん。
彼らも任務には忠実だったが…私を『使徒』と呼んだ。
『左様でございますか。僭越ながらもし宜しければ、この世界の成り立ちなどをお伝えさせて頂いてもよろしいでしょうか?使徒様をこのままご主人様の元へお連れしても……認識の差で問題が生じてしまいそうで少し心配になりました』
「大歓迎です。むしろよろしくお願いします」
そこから馬車さんに聞いたのはこの世界の循環システムについてだった。
人が生きるためにモンスターは自動で湧く。
食材や道具などを人に与えるために、湧くのだ。
なるほどこれは理解できる。
だが……人が強くなりすぎたら?
全てのモンスターを、自動湧き出来ないくらい強化されてしまったら?
私が知るボスエリアのモンスターは、そういった人が過剰に強くなりすぎた際に人を間引く為の存在らしい。なのでどのボスも中央王都から一番離れたエリアの最奥にすまっているそうだ。
「じゃああなたがたは倒されたら死んでしまうんですか?」
『ご安心を、私どもは死にません。処分された場合は一定期間を得れば復活致します。ですが、定数よりも増えません。溢れるモンスター共とは違うのですよ』
「そうなんですね」
『ですが……最近はもう、死にたいとおっしゃる個体が増えています。それが問題なのです』
上記までは世界の成り立ちで、そこからが…神が問題視する世界危機の詳細だった。
『現状、人が弱すぎてモンスターが溢れかえっております。そして……放置されている高レベルエリアのモンスター共は、頻繁にわたしどもの住む最奥エリアに襲撃しに来るのですよ』
スタンビートが頻繁に起きるのか…それは辛いなと思ったらもっと酷かった。
『わたしどもの使命はエリアを、主人を守ること。ですが壊れて、復活してもまた即座に壊されてを延々と繰り返されて……下のものに完全なる破壊を望むものが増えております』
…復活即殺…ゲーム用語で言うリスポーン地点狩り…リス地狩りか。
あれは萎えるよなあ、ゲーム辞めようって思えるもの。
しかも対人イベントとか期間限定でなく常時なら……そう思うとゾッとした。
それは確かに終わりを望みたい。




