6『相手しなくていいよ』
「ヤシロ、頼みがあるんだけど」
「お、なんだ飯か」
ライト村に作られた孤児院。ヤシロさんが最近そこで食事番をしていると聞いて私とシャードさんは女将さんに届けるついでにヤシロさんにもフルーツを届けに来た。
「これ渡すから美味しいお菓子を作って欲しい」
「………お前ら……」
「ちなみにいすずが大好きなこの村の飯屋の女将にも同じのを渡しているからね……わかってるね?」
ウキウキで食べ比べするんですね、分かります。
しかし…最近ずっと転職関係とか高速レベリングで色々忙しかったので女将さんのところでゆっくり出来るのも随分久しぶりな気がする。
引きつった顔のヤシロさんはシャードさんに任せて、私は飯屋の方へ行った。
「久しぶりでーす」
「あら、久しぶりだね。元気にしてたかい?」
「お陰様で、って繁盛してますねえ」
飯屋さんのカウンター席は半分以上埋まっていた。それからテーブル席も。
「嬉しい悲鳴さ、最近買取の方が豊富でレパートリーもどんどん増えたよ。一人かい?」
「いや2人です」
「そうかい、じゃあそこの2席に座っときな」
買取が増えたって……子供たちが採取でも始めたのかな?
私が居なくなっても色々と安定供給がされているようなら何よりだ。渡されたメニューも、パンと軽食から定食、それからクッキーが常設販売されているようだった。
「村に孤児院ができてね、うちの近所は子供たちでも狩れるようなモンスターばかりだから毎日持ってきてくれてね、助かってるんだよ」
「それはいいですね。あ、とりあえずお土産にクッキー20枚とサンドイッチはお願いします。
でもそれじゃ、私からの素材は買い取って貰えないですか?」
「何馬鹿なこと言ってるんだい、なんでも持っておいで」
おばさんから見たら私も孤児たちも変わらなく見えているんじゃないか……そんな疑惑を覚えながら林檎、オレンジ、はちみつを渡すと女将さんの顔が引きつった。
そうそう、これ。
この驚く顔がないといけないね。
悪戯が成功してニコニコしているとシャードさんが中に入ってきてまっすぐ隣に座った。
「あんたらまたえらいもの持ってきたねえ」
「今シャードさんとグルメ開拓してるんですよ。美味しい食材を集めて、毎日のご飯の品質をあげよう計画です」
「あげられるのは、あたしの腕ってことかい。数日待ちな、これらを使って調理できるようになるから」
「はーい」
女将さん、腕を上げたな。
「……この村も人が増えましたねえ」
美味しいご飯を食べながら入れ替わり立ち代り飯屋に人が入ってくるのを見ていると、シャードさんは無言になった。
「……シャードさん?」
いつもなんだかんだいって返事をしてくれるのに…と思っていると私とシャードさんの間に誰かが割り込んできた。
「よお、シャード。紹介してくれよ噂の彼女さんをよう」
赤褐色の髪をした青年はシャードさんを見てニヤリと笑ってから、こちらを見てきた。
「初めまして、俺はトール。君が人嫌いのシャードの仲間かい?どうやってこいつを手懐けたんだ?」
「相手しなくていいよ。食事の邪魔だから別の席行ってよ」
「おいおいつれないじゃないか。同期だろ?」
「あんた、食事の邪魔だから他の席に行きな」
「ちょっとくらいいいだろ?」
私に絡んで、シャードさんに絡んで、女将さんに絡んで。
なるほど、シャードさんが無視した理由はわかった。シャードさんの知り合いみたいだけど……これは相手したくないわ。




