6追手
シャードさんは真っ直ぐ王都を出ると、砂漠エリアに繋がる道を歩き出した。
時刻はもう夕方。夜は出歩くなっていつも口を酸っぱくして言っているのに……
「遅いよ」
混乱していると不意に手を取られて……シャードさんが走り出した。
昼間みたいに本気で走り出したシャードさんから振り落とされないように必死につかまると耳元でシャードさんが小さく囁いてきた。
(尾行されてる。見通しの良い砂漠まで行けば追跡がバレるから引くと思うからそれまで黙ってしっかり掴まってて)
なんですと。よく分からないけど、シャードさんにぎゅっとしがみついてフードを深く被る。
「『ウインドサークル』」
聞こえるのは知らないモンスターがシャードさんの魔法で倒される音だけ。
どこまで進んだのか、どれくらい進んだのかも分からない。
「ちっ」
シャードさんが舌打ちをしてしばらくすると、私はどこかに降ろされた。
「オープン」
そこは…砂漠名物綺麗な湖のあるオアシスだった。
とはいえそれをゆっくり見る間もなく私はシャードさんのプレハブ小屋に連れ込まれた。
部屋に入ってすぐにシャードさんは消音の小道具を起動して出ていった。
「………」
もしかして…追跡者をまけなかった…?
あれかな、シロップを30個も出品したからかな。きっとそうだ、だって国で急募してるって言ってたもの。
時間をかけて出品しようとしたのは…私たちを長く近場において出処を調査するため…?
そう考えると怖すぎてゾワッと鳥肌が立った。
シャードさんが後ろ盾にも、矢面にも立ってくれると聞いて安心していたけれど……こうなってくると罪悪感と不安で潰されそうになる。
……彼を巻き込んだのは……迷惑かけたのは間違いなく私だ……。
sideシャード
国は随分手練を追跡に寄越したようだ。
ロッドマスターで身体を動かすのが不得意とはいえ、133レベルの僕でまさか追跡を振り切れないなんて。
予測はしていたが、予想以上の執着に舌打ちをこぼしてからクランマスターに電話をかける。
『おう、シャード珍しいなどうかしたか』
「…悪い、追跡が振り切れない」
『……何があった、手短に詳しく』
「国に目をつけられた。従者がまだ行ける範囲が狭くて転移で逃げられない」
『わかった、応援に行こう。だが再発防止の為に従者はちゃんと行ける場所増やしとけよ。そっちも手伝いいるか?』
「いらない。砂漠の第2オアシスに頼む」
『了解、2分粘れよ』
通話を切って、家に何者も通さない結界を張って……追跡者が居る方向を向く。
目には見えない。夜だし、そういう専門のジョブなのかもな。
だが……確かにまだ居る。
見られている感覚がわかるのだ。
だが無駄に挑発も相手もしない。
戦闘になって無駄に消耗はしたくないし……僕は狩るのは得意でも取り押さえるのは苦手だ。
そういうのは………クランマスターの方が得意だ。
「よーーーっす、遅くなったなシャード。捕まえたぜ」
「迷惑かけたね」
「いいってことよ。今度、掃討戦でも納品でも良いからクランに貢献してくれりゃいいよ」
と思ってる間に、クランマスターが気絶した追跡者を抱えて現れた。
「最近王家は俺たち冒険者を舐めてっからな、手を出すんじゃねえよってちょっくらお話してくるぜ」
「頼む」
「任せろ。でも、目をつけられるようなことはあんますんなよ」
「……まあ、気をつけるよ」
普段の功労のせいか、クランマスターは原因なども聞かずに手を振って去っていってくれた。
頼られたら助けるけど深く詮索しない、これがここのクランのいいところだ。
……いすずを連れていくべきじゃなかったな。
僕の従者いすずとして認識されてしまった。
もっと気をつけるべきだったと反省しつつ……まだ壁になれることに少し安心した。
あれだけ守る発言をしといて1日で無理だったなんて、僕のプライドにかけて許さない。
「ただいま…ってどこに座ってるの。汚いよ、椅子かベッドに座りなよ」
家に戻るといすずは真っ青な顔で床に座っていた。
「大丈夫でしたか…?」
「問題ないよ。でも、もっと逃げやすくするために…明日からは本格的に石碑を回るよ」
「…はい!!ご迷惑をおかけします。この恩は絶対に返しますので」
「……君が張り切るとちょっと怖いから程々でいいよ。それより、悪いけど念の為に今日はここで一緒に眠ってもらうよ。僕と同室なんて嫌かもしれないし狭いけどけどちょっと我慢してよね」
汚いので立ち上がらせて、いすずも寝れるように机や椅子を収納する。昔使ってた寝袋あったかなと考えてたりして何も気づかなかった。
誰かと一緒にいることがとても苦痛に感じる僕が
僕の部屋にあっさりといすずを泊める決断を悩みもせずにしたことを。それどころか今後も泊まる可能性があるならば倉庫と一緒にもう少し大きな家を買おうかなと思っていた。




