5よくわからないやり取り
とりあえず口を出さず、従者らしく黙って気配を消して置物のように壁際に立って静かにシャードさんたちのやり取りを見守る。
「確認が取れました。クラン『砂漠のオアシス』のシャード様ですね。本日はどのような品物をお持ちいただいたのでしょうか」
「たいしたものじゃないんだけど、今の時期ならこれ売り時かなって」
そう言ってシャードさんは豪華なテーブルの上にシロップを30瓶置いた。
係員さんはその瓶を1本1本丁寧に確認しています。
「なるほど、そろそろ陛下の誕生祭ですからね……嗜好品の類は高値がつくでしょう。ですがよろしいのですか?こちらの品物は国でも買取募集をしている品物ですが」
「あっちだと手続きが面倒だし買い叩かれるだろ。僕は名誉よりも現金が欲しいからこっちで出すよ」
「左様ですか、かしこまりました………ですがシャード様、少しご相談をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「何?」
「こちらの品物、品質劣化も無い新品のとても良品であることは確認いたしました。ですがシャード様のおっしゃる通り大変需要が高い逸品でもございまして……出品手数料はひとつ分でよろしいので、こちらの品物10本組を3セットという形で取引させていただけないでしょうか」
「………まあ確かにそっちの方が高く売れるだろうけど、どういう理由でそれに至ったの?」
「理由は至極単純でございます。こちらは国の方で買取を急募している逸品でして……入手チャンスを増やさないと、私が隣の部署から文句を言われてしまうのですよ」
なるほど、3セットに分ければ3人が買えるということか。
別に悪くない話のようだが……シャードさんは不機嫌といった顔で考え込んでいる。
「……僕は一纏めに売って欲しいんだけど」
「そこを何卒お願いいたします。なんでしたら、手数料もわたくしの権限で割引させていただきますので」
「………じゃあ、最速で行われるオークションで全て出してくれるならいいよ」
「………最速で全て、ですか……」
「ああ。分割にするってことはきっと別日に出そうとしてないか?それだと色々時間がかかるだろ。僕としてはそれをさっさと処分したいんだ」
「………なるほど…」
なるほどさっぱりわからん。
1日で全部売ることに拘るシャードさんと
数日かけて3回で売ることに拘る係員さん。
3回の方が高そうなのになんでシャードさんは拘るのかさっぱりわからない。
「…で、あれば一纏めの方がよろしいでございましょうね。くだらない提案をしまして申しわけございません。こちらのシロップ、30本を次のオークションで出させていただきます。こちらが提供者の証明札になりますので3日後以降に取りにいらしてください」
「わかった、またね。帰るよいすず」
「かしこまりました」
よく分からないまま、シロップはシャードさんの望み通り販売されることになった。
「……ご主人様?」
だが部屋を出ても、城を出てもシャードさんは無言で
そのただならない気配に私も口をつぐみ黙って着いていく。




