2パワーレベリング
「……いい加減泣きやみなよ」
「ぐす、やです。許しません」
「……そろそろローブを離してくれない?周囲の視線が嫌なんだけど」
「やです、ぐす。涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしてやります」
「……最悪。見せもんじゃないから」
泣き叫びすぎて喉が枯れて、恐怖で腰も抜けて
目的地の街、深海漁港の街外れで私はシャードさんに降ろされたが恐怖でローブを持った手が硬直して離せず
しぶしぶベンチに座ったシャードさんの横でシャードさんのローブを掴んだまま泣きじゃくって、腹いせにローブで涙や鼻水を拭いていた。
ちなみに深海漁港は深海に行くための道があるだけで街自体は陸地にある。陸地の最終地点みたいな街だ。
強エリア最前線なので当然周囲のモンスターは強い。
「あー、もう」
ふいに頭から毛布をかけられる。それでも鼻水はローブで拭くって決めてるんだ。強い意志でローブを掴んでちーんと鼻も噛んでやる。
「せめて、声は少し抑えて。君の存在をあまり見られたくない」
「誰の、せいだと、思ってるんですかあ!」
「破天荒で世間知らずな君だね」
「感謝してます、してますけどお!」
てっきりローブの代わりで差し出された毛布かと思ったけれど、どうやら私の姿を衆目に晒さないためだったようだ。
思いっきり悪態をつきたいけど、そういうことなら話は変わってくる。
声を抑えてしばらく泣き、疲れて涙が収まってくる。
「落ち着いた?」
「…はい。でも怒ってます」
「まあ、それはいいよ。毛布はそのまま被って、石碑の方に行くよ。歩ける?」
腰に手を回して支えられながら立ち上がるけれど、足はガクガク震えて立つこともままならない状態だった。当然だ、数時間死の危険に晒され続けたのだから。
そんな足を見てから、じっとシャードさんを見上げる。
「わかったよ、悪かったってば。全く…」
無言の文句を察してくれ
パッと杖をインベントリにしまうと、シャードさんは私を毛布にくるんだまま歩き出して…石碑前に連れてきてくれた。
「はい、これが必要アイテム」
鬼ホタテの貝殻というアイテムを5個受け取り
抱かれたまま、石碑に触れる。
-ワープポイントの初回登録をしました
-ライト村に飛びますか?(500銅貨)
-何をしますか?
-ストーリークエスト
-サブクエスト
-前提ストーリーが解放されてません
-デイリークエスト 鬼ホタテの貝殻x5
ポチッと納品を押すとザワっと全身に鳥肌がたって気持ち悪くてシャードさんに縋り付く。
「…大丈夫?」
「……ちょっと、待って、ください」
身体が、ごそっと作り替えられるようだった。
自分が別の何かになるみたいで…とても気持ち悪い。
「ちょっと、本当に大丈夫?」
「……はっ、…」
呼吸も苦しくて、酸素が足りなくて
呼吸を乱しながら必死に自分を立て直す。
「……一旦転移するよ。掴まってて」
目をぎゅっと閉じていると抱き上げられたままふわっと身体が浮いた気がして気がつけばそこは初期村(ライト村)だった。
「オープン。ほら大丈夫?ってすごい顔色じゃないか。ほら、ポーションとクッキーも食べて」
シャードさんは手馴れた様子でプレハブ小屋を設置してすぐにベッドに私を寝かしてくれる。
体勢が変わって、腕や足が酷く引きつっていたが…ポーションとクッキーを1口づつ食べてしばらくすると、すっと痛みが引いていった。




