初遭遇冒険者
「…………」
「…………」
無言で見つめ合う。銀髪の魔法使いさんはなかなかイケメンだ。なんで見られてるんだと自分の状態を確認して……右手のクッキーに気づく。
「あげませんよ?」
「っ、ち、ちがう!美味しそうな菓子だからどこで買ったものか聞こうか悩んだだけだ」
違うといいながら右手を左右の動かすと視線が着いてくる。そのわかりやすさにぷっと笑いが込み上げる。
「なっ、き、君!!失礼だぞ!!」
「ご、ごめんなさい。このクッキーはこの先の村の飯屋で買えますけど…」
笑ったことに怒っていたのに、店を聞いた瞬間ピンッと反応して目を輝かせる。分かりやすくて面白い人だなあ。ああでもクッキーって…
「そ、そうか!!じゃあ僕は失礼する!!」
「……でも、今朝売り切れちゃってたなあ」
確か雑貨屋の奥さんが買い占めて、分けてくれと縋りおじさんを追い払っていたはずだ。今にも走り出そうな魔法使いさんはぎぎぎっとこっちを振り向き……その表情があまりにも悲壮感たっぷりでこらえこれず、笑ってしまった。
「あはは!!」
「君は僕をからかっているんだな、それくらいはわかるぞ」
「だ、だって面白くって、すみません」
悲壮感たっぷりの顔から、明らかに不機嫌ですって顔でこっちを見る彼は当人からしたら怒っているのだろうが…とても面白くって可愛い。
びたんびたんと謎の音がすると思ったら…ローブの後ろ側で大きな尻尾がいらただしげに揺れていた。
ああ、これはそろそろ怒らせすぎたな。それにしても鱗族で魔術師か…適正はバッチリだな。
「お詫びと言ってはなんですが、これをどうぞ」
ひとしきり笑うと、インベントリから今日採取したばかりの樹液を差し出す。
すると今の今まで不機嫌だった彼が…また一瞬で嬉しそうに目を輝かせた。
「甘い匂いがする。これは?」
「樹液です。これを納品したら飯屋のおばさんがクッキーを作ってくれたのできっと渡せば作ってくれますよ」
「そ、そうか!!感謝する!お礼に…ああ、これを差し上げよう」
そう言って彼が差し出したのは……『高級回復薬』だった。MP,HPどちらも超回復する逸品で、明らかに価値が釣り合わない。
「いやこんなもの……ってもういない…」
物を見て、返そうとすると彼は既に走り出していた。
「…どんだけ甘いものが好きなのやら」
面白くって可愛い人だなあ。
食べかけのクッキーをパクッと食べ終えて、午後からの採取を始めようかと立ち上がる。
疲労も回復してるし、面白い人を見れて気分も上々だ。
シャベルはもうないので…ゲーム記憶の岩場へと向かった。今度はツルハシで採取だ!!




