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異世界おせちの革命〜地味スキル『調理魔法』で、貧乏な辺境の村を美食の都に変えてみせます〜  作者: 黒崎隼人


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第13話「ミストラル村の新年」

 すべての騒動が落ち着き、ミストラル村に本当の平和が訪れた。

 バルザック男爵の脅威が去り、王家からの手厚い保護も約束された。村人たちの表情は、以前とは比べ物にならないほど明るく、晴れやかだった。


 そんなある日、村長のギードさんが、村人全員を集めて宣言した。


「皆の者!我々は、大きな困難を乗り越えた!これも全て、カナタと、そして皆が力を合わせたおかげだ!そこで、改めて我々の勝利と、村の新たな門出を祝う宴を開きたいと思う!」


 その提案に、村中が賛成の歓声で応えた。

 そして、その宴の主役となる料理は、もちろん決まっていた。


「もう一度、みんなであの『おせち料理』を作ろう!」


 僕の言葉に、村人たちは大きく頷いた。

 前回は、どこか新年を祝うというよりも、厳しい冬を乗り越えるための景気づけ、といった意味合いが強かった。

 でも、今回は違う。

 全ての不安から解放された、本当の意味での「新年」を、新しい年の始まりを、みんなで祝うんだ。


 二度目のおせち作りは、一度目よりもずっと手際が良かった。

 村人たちは、一度僕が教えた手順をしっかりと覚えてくれていた。

 そして何より、みんなの顔が、前回とは比べ物にならないくらい楽しそうだった。


 歌を歌いながら野菜を切る女たち。

 冗談を言い合いながら薪を割る男たち。

 そんな大人たちの周りを、きゃっきゃと笑いながら走り回る子供たち。

 村全体が、温かい幸福感に包まれていた。


 僕も、そんなみんなの輪の中心で、腕を振るった。

 王家から届けられた上質な小麦粉や砂糖を使って、前回は作れなかった新しい料理にも挑戦した。

 ふわふわのスポンジ生地を使った、ロールケーキ風の伊達巻。

 甘く煮詰めた木の実をたっぷり使った、デザートきんとん。

 僕の創作意欲は、留まるところを知らなかった。


 リアナも、僕の隣で甲斐甲斐しく手伝ってくれる。

 彼女の笑顔を見ていると、僕の心も自然と温かくなった。この村に来て、彼女に出会えて、本当によかった。


 そして、宴の日がやってきた。

 広場に並べられたテーブルには、前回以上に豪華で、彩り豊かなおせち料理がずらりと並んだ。

 その光景は、まさに圧巻だった。


 ギードさんが、祝いの酒の入った杯を高く掲げる。


「ミストラル村の、新たな年に!そして、我々の未来に!乾杯!」


「乾杯!!」


 村人たちの声が一つになり、冬の空に響き渡った。


 宴が始まると、誰もが夢中で料理に舌鼓を打った。


「うめえ!何度食っても、カナタの料理は最高だ!」

「この伊達巻、ふわふわで甘くて、まるで雲みたいだねえ」

「この村に生まれて、本当によかった……」


 あちこちから聞こえてくる幸せな声。

 子供たちの笑い声。

 大人たちの陽気な歌声。


 僕は、その光景を、少し離れた場所から眺めていた。

 胸がいっぱいだった。

 僕がやりたかったこと。僕が見たかった景色。その全てが、今、ここにあった。


「カナタ」


 ふと、隣にリアナがやってきて、僕に木の杯を差し出した。中には、果実を発酵させて作った、甘いお酒が入っている。


「ありがとう、リアナ」


 僕たちは、コツン、と杯を合わせた。


「ねえ、カナタ。私、今、すっごく幸せ」


 リアナは、頬を少し赤らめながら、はにかむように言った。

 その笑顔は、どんな料理よりも、僕の心を温めてくれた。


「僕もだよ。僕の居場所は、ここにあるって、心からそう思う」


 僕たちは、言葉もなく、しばらくの間、目の前の幸せな光景を眺めていた。

 雪は、しんしんと降り続いている。

 でも、もう、この村の冬は寒くも、寂しくもなかった。

 みんなの笑顔と、美味しい料理が、何よりも温かい光となって、僕たちの村を、そして未来を、明るく照らしてくれている。


 僕の異世界での新しい人生は、こうして、最高の仲間たちと共に、最高の新年を迎えたのだった。

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