悪役令嬢モノ未満
右も左も、もちろん前も分からない。
わかるのは、銀世界に刻まれた、後ろにある私の足跡だけ。
どうやらかなりの距離を歩いたらしい。
景色に一切変化がないから、全くわからなかった。
ほんの数日前まで私は、ギラギラと輝くシャンデリアとシャンパン、そしてドレスを着て、毎晩踊ってた。
好きな人もいて、縁談も来てた。
なのにどうして…
あんなぽっと出の娘と…?
私はあの2人の結婚に猛反対した。
だってもともと好きだったのは私だから。当然。
でも、お父さ…… …王様は許してくれなかった。
なんなら歯向かった私に罰を与えた。
私をこの極寒の地に飛ばして、勝手に生きろという罰だ。
正式名称は…国家反逆罪…?だったかな…
もうどうでもいいけど…
あー…体の芯まで冷えてきた…
もう休みたい…
この雪はふかふかで、もしかしたら最高のベッドかもしれない…
そんな気がしてきた…
あー…これが死ぬってことなんだね…
私は前向きに横になった。
雪のベッドは予想とは違って、とても冷たく、ふかふかというよりギシギシで、かたい。
でももういい。つかれたから…
………
なぜか暖かい…
雪のベッドは…
…ふかふか…?
あれ…?
ここ…どこ…?
私の目の前には、すすれた暖炉と、温かそうなスープを作っている初老の女性がいた。
さっきまでとは全く違う感覚。
なんなら経験もしたことない。
このスープの香りと、このベッドの居心地、この不思議な場所。
なのになぜだかなつかしい。
ずっと私が求めていた温かさがここにある。
初老の女性は私にこう言った。
「コーンスープはいかが?」




