第10話:陰謀の糸口 — 秘密の鍵と真実の一手
朝陽が薄く差し込む王宮の大広間。昨日の緊迫した討論の余韻がまだ空気に残る中、貴族たちは再び真実を求めて集まっていた。誰もが次なる展開を期待し、緊張の糸を張り詰めている。
レティシア・エルフォードは静かに深呼吸をしてから、声を落ち着けて話し始めた。
「リサ・ヴァレンティーヌ嬢の証言をもとに、私は宮廷内の秘密を探るため、ある宦官に接触しました」
広間の視線が一斉に彼女に注がれる。宦官は宮廷の闇を掌握する者とされ、その存在は誰もが恐れ敬うものだった。
「彼の名はマルクス・フェイン。表向きはただの雑用係ですが、実は多くの情報を握っています。彼から得た話によると、偽装された“夜薔薇”の香水は、密かに製造され、特定の貿易商を経由して宮廷に流入しているとのことでした」
レティシアは手元の資料を広げ、詳細を示す。
「貿易商の名前はカミーユ・ローデン。彼女は最近、密輸取引に関与している疑いがあります。宮廷内の誰かが彼女を操っている可能性も否定できません」
会場は静まり返った。裏切りと陰謀が渦巻く宮廷に、新たな闇の影が浮かび上がったのだ。
「これが偽装工作の糸口となり、真の黒幕を追い詰める鍵です」
レティシアの言葉に、王子リオは険しい表情で頷いた。
「次の段階は、このカミーユ・ローデンを宮廷に呼び、真相を問いただすことだ」
その言葉には重みがあった。誰もが今後の展開に息を飲む。
レティシアは決意を胸に静かに誓う。
「真実を明らかにするため、どんな困難も恐れません」
だが、誰も気づかぬうちに、宴の影で密かに動く黒い影があった。秘密はまだ深く隠されている——。