【グロ系ホラー】姉様を返して【ショートショート】
姉様は優しい人だった。
婚約者を愛していた。
婚約者が結婚前から不貞を働いていても、黙って耐えていた。
なのに、あの男は。
『危ない!』
そう言ってあの男が暴走する馬車から庇ったのは。
姉様ではなく、たまたま近くにいて偶然ばったりと出会った浮気相手の方で。
姉様は暴走する馬に…。
「返して、姉様を返して」
そして私は『悪魔』となった。
『復讐鬼』となった。
黒魔術を探して探して、見つけた。
姉様を蘇らせる方法。
あいつらに、復讐する方法。
「こ、ここは…」
「おはようございます、お義兄様」
「レイチェル…?」
「ここは我が家の地下牢でございます」
「な、一体何を………」
ぴちょんぴちょんと雫がお義兄様と呼んだ男に滴る。
横にいる、まだ目覚めていない浮気女にも。
「この雫が、お義兄様とそこの浅ましい浮気女を殺してくれるのです」
「この雫が…ど、毒か!?」
「いいえ、この雫は毒ではありません。魔族の住む地の泉から採れたただの水でございます」
「な、なんだ」
ほっと息を吐く男に、私は笑った。
「でもね、この水を使ってとある儀式をすると死者が復活するのです」
「え?」
「レオナお姉様の復活の儀式ですよ」
「そ、そんなことが可能なのか?」
「ええ、まずそこの『姉様を死なせた』お二人にこの雫を垂らします」
そして。
ここからが肝心要だ。
「そして十分に『雫』を浴びたお二人を…」
生きたまま、ノコギリで首を切る。
「ぎゃあああああああ!?」
「ぎぇええええええええ!?」
まあ、これは魔術を使えば割と簡単。
「そして、土葬していた姉様の遺体にその血をたっぷりと掛けて…」
24時間後に今度はまたあの『水』で身体を洗い流すだけ。
その後24時間が経てば姉様は息を吹き返す。
「姉様の身体が腐り始める前でよかった」
こうして、儀式は滞りなく進んだ。
「…あら?ここは」
「姉様、お目覚めですか?」
「レオナ!」
「レオナちゃん!」
姉様は目を覚ます。
あの二人の遺体は、魔術で遠くの山に捨てた。
熊が出る地域だ。
処理は必要なかった。
「ああ、レイチェルの受けた神託通りだ」
「レオナちゃんが生き返る…ああ、神に感謝を!」
まあ、その神を冒涜する儀式の結果なのだけれど。
「姉様、体に不調は?」
「ないわ…えっと、みんな心配かけてごめんなさい。もう大丈夫だから」
「レオナー!」
「レオナちゃんっ」
こうして私は姉様を無事取り戻したのでした。