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turn2 暴食

「うおおおおおっ!?」

 ガンナーが魔法のハンドガンを乱射する。

 彼の持つ魔法の銃はデザートイーグルに似ている。

 元々ミリオタでもあった彼が魔法天使と成った時、真っ先に望んだのは核兵器だった。

 魔王の欠片の適合者、つまりは悪魔憑き。

 その悪魔憑きの中から成長した上位存在、魔王。

 そして何も知らない自分達にそれらと戦う運命を押し付ける神とその御使い共。

 全部倒して生き残る。

 その為の核兵器。

 戦略級核兵器を魔力によって構築すれば絶対無敵である。

 それが出来れば、だが。

 悪魔憑きにしろ魔法天使にしろ、具現化出来る武器は己の欲望やイメージに依る。

 FPSゲームやサバイバルゲームで遊んでいた彼の欲望の範疇には、戦略核どころか戦車すら入っていなかった。

 その手に現れたのは、小さい頃から憧れていたハリウッド俳優やアニメキャラが使うハンドガンだった。

 もしも魔法の核爆弾を生成出来る魔法天使が居るとしたら、それなりの科学知識と軍事知識に精通する者だろう。

 しかしそれは有り得ない。

 何故ならこれは神秘と文明の聖戦であるからだ。

「くそがっ!頼むぜ相棒っ!」

 彼は窮地に陥った自分を鼓舞する様に愛銃に叫ぶ。

 せめて遠距離狙撃が出来る得物が良かったが、それでもまだマシだったろう。

 仲間になったコックは料理好きらしく、その得物は調理器具だった。

 包丁や肉叩き等は武器にもなるが、コックの本領は創り出した料理を他者に食べさせる事で発動するバフ効果である。

 他にも金属バットを得物にする野球少年のバッター。

 音波系範囲攻撃は便利だが得物はマイク一本のシンガー。

 今その仲間達は誰も居ない。

 彼を置いて逃げたか、それとももうすでに⋯

「くそくそくそくそっ!」

 デザートイーグル似の魔法の銃⋯広義では魔法の杖を振り回し乱射しまくるガンナー。

 魔法武器なのでリロードは不要。

 マガジン交換等せずに、彼の魔力が尽きるまで弾丸を放てる。

 しかも持ち主の意識一つで弾丸をチョイス出来る。

 貫通力重視の徹甲弾や支援目的の煙幕弾。

 そして今は火力重視の爆裂弾を使用している。

 連射しまくると爆発音が連続する。

「くそっ!くそがっ!」

 ホームレス。

 天使と名乗る真っ白い鼠の指示を受け、彼等魔法天使達は魔王の欠片に適合した悪魔憑きを狩り続けていた。

 今回も簡単な任務のはずだった。

 再開発が失敗しゴーストタウン化した旧市街。

 其処に住み着いたホームレスを始末するだけだった。

 舐めていた。

 それなりに強い、炎を操る悪魔憑きを倒した事もある。

 ガンナーと同じく銃への造詣が深かったのか、両手をマシンガンに変化させた悪魔憑きも倒した。

 ガンナー、コック、バッター、シンガー。

 彼等はそれなりに戦えていた。

 強かった。

 なのに――――

「くっ!来るなぁっ!」

 デザートイーグルの引き金を引きまくる。

 マズルフラッシュと爆発音。

 物凄い土埃の向こうから、巨大な影が現れる。

「いた⋯だき―――」

「来るんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 核兵器のイメージは湧かない。

 だがイメージでとにかく火力を求める。

 爆裂弾よりも破壊力の有る弾丸が自動で射出される。

 彼は現実的な武器も好きだったが、未来的な銃器も守備範囲内だった。

 量子分解弾。

 なんとなくイメージしたのは物質を塵に変える近未来兵器。

 ただ神秘の極致である魔法の銃は量子分解ではなく、魂の存在力を消滅させる性能にシフトされる。

 あくまで使用者のイメージを基に構築されるのが魔法武器だからだ。

「うおおおおおおおおおおおおおっ!」

 デザートイーグルから射出された弾丸が着弾すると、そこを中心に球状に空間が抉り取られる。

 噴煙も、家屋の柱も、こちらに迫って来ていたナニカも。

 バキンバキンと云う氷を砕く様な音と共に消し飛んでいく。

「はぁ、はぁ、はぁ⋯」

 気付くと静寂が訪れていた。

 魔法のデザートイーグルは彼の手から消えていた。

 冬季迷彩風の魔法天使の衣装も、普段着の迷彩ファッションに戻っていた。

 魔力切れである。

「がはっ!はぁ、はぁ、た、助かった⋯か?」

 ギリギリで倒せた。

 能力上限いっぱいを超えた運用で、彼は魔力どころか魂の力も使用していた。

 擬似的量子分解弾を使用した事が原因ではあったが、それは単なる威力の違いではない。

 それなりの威力が有る攻撃手段にはそれなりの代償が要る。

 そう云った常識に囚われた精神が、彼の魂を疲弊させていた。

 極端な話、量子分解弾がBB団と同じ値段で取引されてると思い込めれば⋯彼は超威力の弾丸を無尽蔵に撃てる無敵の魔法天使と成れたろう。

「はぁ、はぁ、優子⋯達也⋯」

 コールサインでなく仲間達の本名を呟くガンナー。

 重い足取りでその場を去って行く彼。

 しかし、その背後から―――――

「いた、だき、まぁす」

「え?」

 肉片一つ残さず消し飛ばしたはずの悪魔憑きの⋯暴食の魔王の声が聴こえたのであった。

お読み頂き有り難う御座います。


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