第4話「チェリボ不知火明人」その3
リサちゃんとの初デート!? 「はじめて」の連続に明人は…
「明人君、ごめーん。待ったぁ?」
待ち合わせ場所に現れたリサちゃんは、白いタンクトップに、白のミニスカート…もうそれだけでノックダウンされそうなくらいかわいかった。
「全然待ってないよ。てか今日も、抜群にかわいいね」
「だって明人君との初デートだもん。気に入ってくれた?」
彼女のその言葉に湧き上がる嬉しさを隠せず、俺は笑顔でうなずいた。
「もちろん。超うれしいよ」
「ホント?よかったぁ」
リサちゃんの輝くような笑顔に俺は幸福感でいっぱいになる。
でもまだデートはこれからなのだ。
俺はこの初デートを、これまで生きてきた中で最高に素晴らしい思い出にするんだと強く決意していた。
「じゃあ行こうか」
俺が促すと、リサちゃんは「うん♥」と答えて、当たり前のようにするりと俺の腕に手を絡ませてきた。
(なっ!?)
驚いて顔を向けた俺に、リサちゃんはニコッと微笑みを返してくる。
あ~ヤバいよ。どうしてもデレデレしちゃう…だってこんな幸せ過ぎる状況ってあるだろうか。
リサちゃんと肌を触れ合ってるんだ。
鼻先に届くリサちゃんの甘い香りに、俺の心はもうトリップしちゃってる。
しばらく歩いてると、リサちゃんが突然思いついたように声を上げた。
「そうだ、写メ撮ろうよ。初デートの記念に」
スマホを出してるリサちゃんを見ながら、俺は少しうろたえていた。だって女の子と一緒に写メを撮ったことなんてない。どんな顔して映ればいいんだろう…
でもリサちゃんの楽しそうな様子が、緊張で固くなってる俺の心をほぐしてくれた。
カシャッ、とシャッター音が聞こえる。
リサちゃんが見せてくれた画面には、ちょっと顔を赤らめた俺が映っていた。
自分でも緊張してるなって思ったけど、そんなことより、同じ画面の中にリサちゃんと2人で映ってることの感動の方が大きかった。
(カップルじゃん!こんなのカップルじゃん!)
いや、デートしてるからカップルではあるんだけど、思わず心の中でそう叫んじゃったよ。
デートって、こんなうれしい出来事が立て続けに起きるんだ…。
もうデート最高!
初デートの最初のメニューは、無難に映画ということにした。
だってリサちゃんみたいなかわいい子とデートとなったら、何の経験もない俺は絶対緊張MAXになって、何を話していいのかパニクって、せっかくのデートを台無しにしかねないって思ったからね。
映画だったら、少なくとも一緒に映画を見てたらいいわけだし、その間にリサちゃんと一緒にいる状況に慣れることもできるんじゃないかって思ったわけさ。
「どの映画見ようか?」
近くのシネコンに到着すると、リサちゃんが上映中の映画のラインナップに目を向けながら問いかけてくる。俺は用意していたセリフを口にする。
「リサちゃんが見たいの見よう」
俺はリサちゃんと見られるなら何でもよかった。それよりリサちゃんにも俺とのデートをできるだけ楽しんでもらいたかった。
でもリサちゃんは、「え~明人君は、どれ見たい?」っと甘ったるい声で聞いてくる。
事前の想定通りに事が運ばないとまどいはありつつも、リサちゃんにそんなふうに接してもらえてる嬉しさがやすやすとそれを上回る。
心がとろけてしまいそうになるのを押し隠すように、俺はポーカーフェイスを装って言った。
「う~ん、この中だと2番目のやつ?」
「ホント?私もそれいいなって思ってた」
「じゃあ、それにしよ」
「ウフフ、気が合うね」
「そうだね、アハハ」
映画館の暗がりの中、俺は隣に座るリサちゃんの横顔をこっそり盗み見る。
スクリーンの光に照らされるその顔は真剣そのもので、俺みたいに余計なことは考えていないのだろう。だけど俺は、あふれだす気持ちを抑えられなくて…意を決してリサちゃんの手に自分の手をそっと重ねた。
一瞬、リサちゃんが驚いたように俺を見た。
でも、すぐにその顔がほんのり赤く染まって、柔らかく微笑んでくれる。
やった!手をつなごうとする俺を受け入れてくれた!…それだけでもう心が舞い上がってどうしようもなくなる。
「ハハハ」
「ウフフ」
映画を見ながら手を握り合ってイチャイチャ。なんて夢のような時間なんだろう…。
映画の内容なんてまるで頭に入ってこないけど、そんなことはどうでもいいんだ。かわいいリサちゃんと手をつなぎながら一緒に映画を見ていられることがとにかく幸せなのだ。
映画が終わると、俺たちは近くのレストランで食事を楽しんだ。
「あーおいしかったし、楽しかったね~」
「うん、超楽しかった」
「どうする?この後」
(こ…この後?)
突然の質問に、俺の頭が真っ白になる。
「えっと…どうしようか」
そう口にしながら、頭の中では高速で思考が駆け巡る。
(俺は今、リサちゃんに試されてるのか?信頼に値する男なのかどうか…)
(最初のデートでエッチなんてNGだっていうし…でもどうするって聞かれて解散ってのも変な気が…)
(どうしよう…この場合の正解は何だ?)
「えっと…!」
何とか考える時間を稼ごうと口を開いた俺に、リサちゃんは突然ぐっと顔を寄せてきて、そのぷるっぷるの唇を俺の唇に重ねた。
キス!? えっキス!? キ、キスぅぅぅ???
その甘い香りと柔らかい感触に、完全に呆然としてしまう俺を見て、彼女が小さく微笑む。
「今日はずっといっしょにいよ」
……ず、ずきゅうううん!!!
次回は土曜日に投稿する予定です。