第4話「チェリボ不知火明人」その2
チェリボをこじらせる明人を狂喜させたウッキウキの出来事とは…
ことの発端は数日前…
「あのぅ…不知火君ですよね」
図書館から出ると、どこからか俺の名前を呼ぶ女の子の声が聞こえてきたんだ。
「はい…あっ!」
声の主を特定すると、俺の口から思わず声が出た。
そしたら、彼女もびっくりしたように目を丸くして言ったんだ。
「え?私のこと誰かわかるんですか?」
「はい…あの…コ…コンビニの店員さんですよね?」
そう。そうなんだ。それはあの時の金髪ショートのかわいいコンビニ店員さんだったんだ。
「うわぁ♥うれしい!私ずっと不知火君のこと探してたんだけど、覚えててくれたなんて」
彼女が笑顔でそう言ったので、俺は自分の目と耳を疑ったよ。
「え?俺を探してたんですか?」
「そうなの。ちょっと話したいことがあったんだけど、あの時バタバタしてて…気づいたら不知火君いなくなっちゃてたから…」
「でもなんで俺の名前を?あっそっか、あの時支払いしたやつで…」
「そう!手がかりがあれしかなかったから…。たぶん学生さんかなと思って…だとしたらこの大学かなって、時間ある時探してみてたの」
「そうだったんですか…。で…あの…話って…」
俺は急に不安になって聞いた。
だって、わざわざ俺を探し出して、話があるなんてそんなこと…
もしかしたら、払った電気料金のお金が足りなくて、それを請求に来たのかも…そんな考えが頭をよぎった瞬間、彼女の口から耳を疑うようなセリフが飛び出したんだ。
「今日はバイトあるからダメなんだけど…また時間ある時…一度ゆっくり会えないかなと思って」
(えぇっ!)
俺は自分の口から心臓が飛び出してしまうんじゃないかと思うくらい驚いたよ。
だって、なんか俺をデートに誘ってるように聞こえたから。
「そ…それって…」
「あのね…はっきり言っちゃうけど、私、不知火君と仲良くなりたいなと思ってて」
「えっ!」
(や…やっぱり!?)
俺はもう天にも昇るような気持ちになる一方で、何度も夢見ながらこれまで一切縁のなかったその状況にパニクった。
「ダメかな?誰か付き合ってる人とかいるの?」
俺が困ってるように見えたのか、心配そうに眉根を寄せた店員さんを見て、俺はあわてて否定した。
「いません!全然いません!」
「よかった!」
そう言って彼女の顔に笑顔が戻る。それは人をとても幸せな気持ちにする笑顔だった。
「私、楠神リサ。連絡先交換してもいい?」
「もちろん!楠神さんっていうんですね…」
「リサでいいよ。私も明人君て呼ぶから」
…てなことがあったわけさ。
あのかわいい店員さんが、俺ともう一度会うために、あちこち探してくれた挙句、俺にデートを申し込んでくれたのだ。
何度思い出しても、夢みたいな時間だった。そして思い出すたびに、幸福感でいっぱいになる。
「ああ…リサちゃん…リサちゃんかぁ…なんかヤバいよ俺…」
<私、不知火君と仲良くなりたいなと思ってて>
<誰か付き合ってる人とかいるの?>
<いません!全然いません!>
<よかった!>
「はっきりそう言ったもんな。俺に付き合ってる人がいなくてよかったってことは、そういう関係になりたいってことだよな。こんな俺にも好きになってくれる人って現れるもんなんだな」
「しかも、あんなかわいいなんて、最高過ぎる」
「それにあの時の恰好見ました?コンビニの制服姿もかわいかったけど、肩まる見えで、あのミニスカ!目のやり場に困っちゃうくらいだったよ」
俺はもう心がはしゃぎまくるのを抑えられなかった。
「リサちゃん…楠神リサ…結婚したら、不知火リサになるのかぁ…俺が婿入りするなら楠神明人になるんだなぁ」
「…の前に、まずデートからだけど。デートだよ、デート。初デート!ウヒィー♪」
次回は水曜に投稿する予定です。