第3話「運命的な出会い?」その2
コンビニでバイト中のリサの前に現れた、ごく普通の大学生風の男。
この男の接客中に、リサを驚愕させる出来事が…!?
ピンポーン。
自動ドアが開く音につづいて、軽快な入店チャイムの電子音が店内に響いた。
「いらっしゃいませーっ!」
私は笑顔を作って習慣通りの挨拶を声に出す。
入ってきたのはメガネをかけた白いTシャツ姿の若い男性客だった。
彼はまっすぐ私のいるカウンターにやってきた。
少し伸びたぼさぼさの髪が額にかかり、メガネの奥で目がちょっとおどおどしてる。
「あの、すみません」
「いらっしゃいませ」
「これお願いします」
彼は小さな声でそう言って、電気料金の払い込み用紙を差し出してきた。
私はにっこり微笑みながら受け取る。
「かしこまりました。少々お待ちください」
もうほとんどオートマティックな感じで手順化された要領でレジ操作を進める。
「お会計、2210円になります」
「じゃあ、3000円からで」
「3000円お預かりします」
預り金を打ち込んで客層キーを押すと、ガチャリと音と立ててドロワーが引き出される。払い込み用紙に店のハンコを押して、受領証を切り離し、手早くドロワーからつかみ取った小銭と一緒に差し出す。
「それでは790円のお返しと…受領証になります」
そしていつも通り、受け取ろうと差し出された男性の手に小銭と受領証を乗せるタイミングで、下に添えている左手と挟み込むような形で、その手に触れる。
その瞬間のことだった。
――ドクンッ。
(えっ!?)
今までに感じたことのない大きな衝撃が、私の体を貫いた。
心臓が強く跳ね上がり、電流みたいに鋭い感覚が全身を駆け巡って、ゾクッゾクッと背筋が震えた。
(あっ…あっ…ああん…ダメ…ちょっと!)
私は驚いて反射的に、目の前の客に視線を向けていた。
メガネの彼の顔にはクエスチョンマークが浮かんでる。
(こんな強烈なの初めて…一体何者なの、この人…)
「あ…あの…」と声をかけようとした瞬間、少し離れた隣のレジから同僚の声が飛んできた。
「すみませ~ん!」
「えっ?」
振り返ると、新人の女子大生バイトが困った顔で駆け寄ってきた。
「なんかレシートが途中で切れちゃったんですけど…」
(ああもう…こんな時に…)
私は内心ため息をつきながら、一緒に隣の1レジに向かう。
「それはレジペーパーがなくなったってことだからさ、そこから新しいのを出してセットするのよ」
「どうやってセットするんですか?」
「じゃあ今やってみせるから」
私は新しいロールを手に取り、ポイントを手短に説明しながら、レジにセットしてみせた。
「…で、これでオッケーね。わかった?」と笑顔を向ける。
「ありがとうございま~す」
その声を聞くや否や、私は2レジにすばやく目を向けた。
メガネの客の姿はすでになかった。
私は急いでカウンターの外に出ると、一目散に店の外に飛び出した。
店の前の通りはたくさんの人が行きかっている。
その隙間を縫うようにして視線をあちこち走らせたが、ぼさぼさの髪も白いTシャツもどこにも見当たらない。
「だぁぁぁーっ、さすがにいないかぁ…」
私は肩を落としつつも、素早く考えをめぐらせた。
あの彼、初めて見る顔だったけど、なんか学生っぽい感じだったよね。
この辺に住んでる人なのかな? だとすればまた来る可能性はあるけど…
それとも通ってる大学がこの近くとか? このあたりで大学と言えば、あそこだよね。
でも家とか学校とか関係なくたまたま立ち寄った可能性もあるからなぁ…
あんな強烈なの初めてだから、あれでエッチしたらどうなるのか、絶対試したいのに…
次の瞬間、思い出した。
(待って。手がかりがあるじゃん。あの電気料金の紙!)
私は急いで店内に駆け戻った。
そしてレジのドロワーを開けると、金種別に収納されているトレーを持ち上げ、さっき自分が入れた払い込み用紙を手に取った。
(あった!)
用紙の表面に小さく印字されたあの男性の名前を見つけ、私の胸が躍る。
不知火明人…それが彼の名前だ。
(何て読むんだろ、この名前…)
ただ、入手できたのは名前だけだった。住所も電話番号も用紙には記載されてない。
それでも何も手がかりがないよりは全然マシだ。
(ともかく、絶対見つけ出してやる)
私はそう心に誓った。
次回は木曜に投稿する予定です。