Prolog─③ 目覚め
読んで欲しいが読まれると恥ずかしいムジュン
「んん…」
目の前に広がるのは穴あきの天井。
ケネルに行かなきゃなぁ…そろそろここもゾンビにやられるんだよなぁ。自給自足も限りがあるし。
適当に準備をして適当に飯を食って家を出た。今日でここの家とはおさらばなので、荷物は全てまとめている。
長い長い下り坂を歩き始めた。
数時間後、旧市街地。やはりゾンビは多いが、ビルの間をいわゆる「壁ジャンプ」をしたら捕まることもない。
1度ゾンビに噛まれてから、脚が変になった。
硬くなった皮膚が割れて装甲のようになって、筋肉が異常に発達した。そこから、脚の力がこんなことに…
あっ、見えてきたな。ケネル。
「識別番号──!至急──を!」
門の前の兵士がトランシーバーに向かって叫んでいる。そして銃口をこちらに向けた。はっ?
スパパパパパ
あぶね!なにしやがる!アタシじゃなかったら当たってるぞ!
「標的、逃走!」
そりゃ逃げるだろ!ゾンビならまだしも人間に殺されてたまるか!
ズバババババババババ
ビル間を飛び回っているにもかかわらず、容赦なく撃ってくる。ゾンビじゃねえっつの!
ババババババ
ビシュッ
いった…耳にかすった。いや、少し抉られた。いい加減に…
「しろォ!」
もう我慢できない。全員ぶっ殺してやる。
まずはさっき抉ってきたお前だ。大ジャンプしてからの、カカト落とし。ヘルメットごと潰してやった。
次に、門前にいたもう1人の兵士。さんざん撃ちやがって。
カカト落としの直後、その脚をバネに再び飛び、接近する。反対の脚で軸を作り、回転しながら横の蹴りを頭にくらわせる。そして首を飛ばす。
援軍が来ない今のうちにケネルに潜入しよう。
そしてケネルの門を文字通り飛び越えると…
何も無かった。本当に何も無かった。地面さえなかった。それはまさにゲームのバグのような世界で、どこまでも続く空の続きが下に映っている。門を飛び越え、着地できるはずの地面が無かった私は、そのバグに為す術なく落ちていく。
上には地面が透けて、ハリボテのビルが見える。
やばい、なんだこれ。どうしたら…
するとノイズが周りに出てくる。次第に視界もノイズで歪み──
バツン!
激しい痛みと共に目を覚ました。目が覚めたと表現するには似合わないほどの息切れと共に。私は──
閉じ込められている。だが視界は真っ暗、何もわからない。
あれ、何だこの天井。脆いし、低いし、開くな。金属じゃないのか?ガラスか?それにしても天井は開かないだろう。
そしてすぐに開いて、顔を触ってみる。自分の顔とは思えないほどの冷たく綺麗な肌と丸み。いや違うなんか被らされてる。
それを脱いで、入っていたカプセル(だった)から出て、周りを見渡した私は、思考が止まった。
「なに、ここ」
限りなく高く、暗くて見えない天井に、真っ白だが、少し黒ずんだ壁。どこまでも両脇に細長く連なる、私がいたカプセルのようなもの。
ふと右隣のカプセルを見ると、上半身が不自然に欠けている。腹から上が、一切無くなっている。そして、手首から下だけが残っている。左隣のカプセルは、手を自分の首に刺している。
「どういうこと…?」
ほかのカプセルも見てみる。
下半身欠損、頭部破壊、四肢切断…見渡す限りのカプセルが酷い有様になっている。
ただ気になったのがー
カプセルに反射する私の顔と、カプセルの中の人物の顔がそっくりなのだ。頭部破壊されている死体などは確認できないが、綺麗に顔が残っている死体は全て、私に似ている。
それにしてもなぜ、死体をカプセルに入れているのか。ここは死体安置所だろうか。
ならば私はなぜカプセルに入れられていたのか。
そもそも私が見ていたあれは夢?
試しに飛んでみる。するとー
飛べない。せいぜい20センチ。やはり夢だったのだろうか。
何も分からないままどこまでも続くカプセルの間を歩いていると、1つカプセルが空いているのを見つけた。
まさか生存者が!?
カプセルの中には温もりが残っている。まだどこかにいるかもしれない。だがその人物が仲間である確信はない。相手も混乱しているかもしれない。自分と同じ顔──かもしれない。
とにかく、探そう。1人では不安だ。会うことの不安もあるが…
ぺた、ぺた、ぺた。
裸足での足音が無限かと思われるほどの空間にこだまする。ほかの足音は聞こえない。頼りなのは一定間隔である足元のライトだけだ。足元しか見えないので足元を見ながら歩いていると、人が倒れているのを見つけた。
私は駆け寄って、声をかけた。
「大丈夫…ですか!?」
やはりその顔は──
私と、同じだった。
それに、ピクリともしない。外傷を探していると、手になにか握っているのを見つけた。
紙か?文字が書かれている。とにかく起こそうと、声をかけた。
「大丈夫ですか!起きてください!」
するとゆっくりと目を開けた。あちらも相当驚いたようで、目を見開いている。
「すみません、私も何が起きているかわからないんです。空いたカプセルがあったので人を探していたら、道に倒れているあなたを見つけました。」
こんなにもスラスラと言葉が出る自分に驚く。
倒れていたその人は、落ち着いたのか、立ち上がった。
「その紙、なんですか?」
私は問うた。すると言葉が返ってきた。
「これは…さっき、拾った。」
途切れ途切れである。相当疲れているのか。とにかく無事なようでよかった。
「何が書いてあるんですか?」
再び問うた。すると返事が返ってくる。
「わからない…」
そう言って、紙を見せてくれた。
そこには地図らしきものが書いてある。
「これ、地図ですよ!どこのものかはわからないけど…」
私は彼女を見た。
紙をずっと眺めている。地図だと気づかなかった…ことなんてあるのだろうか。とにかく、1つ手がかりが増えた。
「とにかく、出る方法を探しましょう。」
「ええ…わかった。」
顔が似ていれば声も似ているものだ。自分が発言していないのにこだまが返ってくる変な感覚に陥る。
それからしばらく、直線に歩き続けた。
両脇には相変わらず得体の知れないカプセル、その中の変死体。どれもこれももれなく私、私達と同じ顔をしている。
ふと、私は右隣の彼女に話しかけた。
「私達以外に生きている人はいるんですかね。」
彼女は少しの沈黙の後、答えた。
「居ても…会いたくない。3人やそれ以上は、嫌だし…怖い。」
当たり前である。声も容姿も全く同じなのだから。強いて違う点を言うならば、言葉遣いなどだろうか。
それからまた沈黙が続いた。変死体を見ながら会話ができるほどの精神は持ち合わせていない。
ちょっとずつ頑張ります!更新ももうちょっと早くしたい。




