第二十八章 それぞれのプライべート(前編)
「いやぁ、この魔導書ほしいなぁ、しかしこっちも。」
そうつぶやきながら俺はショッピングを一人で楽しんでいた。なぜおれが一人の時間を楽しめているかと言うと、話はちょっと前にさかのぼる。
「大量大量!あの骨かなりの財宝隠し持ってたわ!」
「出汁も隠してたね。」
と上機嫌なサルラとタノ。
「いやあ、まさかアイツが本当にロードさんの後輩だとはなぁ。」
「なんかかわいそうでしたね。」
そして過去を振り返りながら骨吉を憐れむ俺とアンナ。
「まあ旅も一段落ついたことだし、しばらく単独行動しようか。」
「あ、それなら私行きたいところあったので行ってきます!モフモフが私を呼んでいる!」
なんかわけわからないこと言ってるのはスルーして。
「俺もちょっと魔法のレパートリー増やしたいから魔道具展行ってくるわ。」
「僕は保存がきく食材の買いだめ!」
と特売のチラシを握りしめてタノが言った。
「私はちょっとその辺ぶらついてるわ、やることないし。」
「じゃ、解散!」
というわけで今に至る、ほんとにどれにしよう。「土系のキホン」ってやつもいいし、「炎のすすめ」もありだなぁ。
「お困りですか?」
うおっ!気配がなくてびっくりしたぁ!
「あ、はい。ちょっと魔導書で悩んでて。土属性か火属性かで悩んでます。」
「じゃあせっかくだし適正見ますね、ちょっと失礼。」
その店員は懐から水晶玉を取り出してみせた。
「ちょっとこれに触れてみてください。」
試しに触れてみるとなんか文字やら光やらが出てきた。何が何を表してるかさっぱりわからん。
「ふむふむ、お客様は…え!?これは珍しい!召喚魔法が向いています!」
「えぇぇ!?ところで召喚魔法って何です?」
店員が盛大にずっこけた。
「ゴホン、おおざっぱに説明しますと、召喚獣を呼び出して戦ってもらう魔法です。」
「ああよかった、てっきり悪魔とかを召喚するものかと。」
「できますよ、極めれば大国を一瞬で消し炭にできるほどの悪魔を呼び出すことも。まあ『理論上は』ですけど。」
あまりにも軽く言うなこの店員さん!まあせっかくだし買おう。
「あ、ちなみに召喚魔法だとこれがおすすめです。」
と、「イラストつきでよくわかる!召喚魔術の基礎。」と書かれた魔導書を出してきた。そして俺はそれを買い、魔道具店を後にした。さぁ、練習するゾ!
ー続いてタノサイドー
「せっかくの特売なんだ!引き下がるわけにはいかない!」
と僕はおひとり様三袋限定の小麦粉に手を伸ばし、その腕の長さと手の大きさを生かしてなんとか三つ手に入れられた。
「じ、じぬかと思った。主婦は時にロードさんより恐ろしいなぁ。」
「ただいまから、今日の朝にとれた新鮮人参のタイムセールを行いま、」
その告知の音すら置き去りにし、人参のあるワゴンへと無数の人影が向かっていた。
「なんとか二本はつかめた。しかし皆さんすごいパワーだ。」
ちょっと周りを見渡してみて15本も人参を手に入れてる人を発見。ちょっと教えを請いに行って来よう。
「あのぉ、すいません。」
「ん?なんだい?お兄ちゃん。」
うぉっ!この人は強い!そんな気迫がびりびりと伝わってくる!
「特売でほしい商品を手に入れるコツを教えてください!」
「簡単なことさ、厚かましくワゴンと人の間に体をねじこみ、時には地面から足を離してでも商品をつかめばいい。あとは商品を離さなければ勝手に人の波によって外に出れるよ。」
タノに電流走る。
「あ、ありがとうございます!参考になります!」
「アタシとしたことが、ライバルを増やしちゃったねぇ。まあ気張り、お兄ちゃん。」
そして言われたことを生かし、特売されている数々の食材を購入できてとても上機嫌なタノであった。




