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第43話 魔将軍との別れ

 アメリアと馬車の中で魔法の練習すること数日、私たちはマジェスティアに戻ってきた。

 城塞都市の堅牢な城壁が見えてくると、長い旅が終わったという実感が湧いてくる。

 だが、レンナーラとの約束通り、ゾルトとはここで別れることとなる。


 ゾルトが弟子にしたカイル君ともここで別れることになるのだが、カイル君はアメリアと離れるのが辛いらしく、ここ数日は彼女に寄り添ってばかりいた。

 そのせいでアメリアは彼の執着に少々うんざりしていたようだ。


「ちょっとカイル! いい加減にしてくれる?」


 ぷんぷん怒っているアメリアはかわいいが、本人はそれどころじゃないのだろう。

 カイル君の顔は、まるで捨てられた子犬のように情けない。


「分かってるよ、分かってるんだよ……。分かってるんだけどさあ、俺はアメリアが心配なんだよ」


「カイルの気持ちは分かるよ。でもさ、カイルは今一番大事な時期なんだよ。ゾルト将軍に鍛えてもらって、もっと強くなって、そしたらまたウチを守ってよ」


 アメリアはカイル君をぎゅっと抱きしめた。

 二人とも目に涙を浮かべている。

 その光景は、兄妹の深い絆を感じさせ、見ているこちらの胸を熱くさせた。


 カイル君が言ってたのだけど、カイル君にとって妹は自分自身と同じなのだそう。

 物心がついた頃から、おそろいの服を着てずっと隣にいた存在。

 同じものを食べ、同じ景色を見て、一緒に泣いたり笑ったりしていたのだ。

 私にも兄様がいるけれど、双子という存在は想像以上に強い絆で結ばれているのだろう。

 彼らの間には、言葉以上の何かが通い合っている。


 双子の別れを見届けた後、ゾルトが私のもとに近づいて、小声で話しかけた。

 その表情は、いつになく真剣だった。


「カイルのことなのですが、陛下にお願いがございます」


「私にお願い?」


「はい。カイルのために、陛下に用意していただきたいものがあるのです」


 そう言って、ゾルトはカイル君を弟子とした目的を話し始めた。

 それは私の想像を超えた計画であり、ゾルト自身にとっても人生最大の大仕事となることが予想できた。

 彼の目には、未来を見据えた強い意志が宿っていた。


「それは……カイル君に伝えたの?」


「いえ、まだその時ではないと考えています。来たるべきその時に備えて、陛下に準備をお願いしたく」


「分かりました。そういうことであれば喜んで準備しましょう。その計画、私も支持します」


「ありがとうございます。これで安心してカイルと鍛えることができます。我が息子にとってもよい練習相手になるでしょうし、良いことづくめです」


 えっ、今、息子がどうとか言ってなかった?

 聞き間違いかしら。


「ねえ、今、息子って……」


「はい、拙者とレンナーラの息子、ゾルテスがカイルと同じ歳なので共に鍛えようと思っております。後ほど、レンナーラと共に挨拶させます」


 えっと……うん。レンナーラの時と同じ展開だよね。

 私、ゾルトのこと、本当に何も知らないのね。

 長年仕えてくれているのに、彼のプライベートについては謎だらけだ。


「ねえ……ゾルト。ゾルトの家族は他に誰がいるの?」


「拙者、家族の話を全然していませんでしたね。他には娘が2人おります」


 やっぱり……他にもいるんだ。

 なんとなく、そんな気はしていたけども。

 大家族の大黒柱だったとは、ゾルトの意外な一面を見た気がする。


「あのね、ゾルト。国ももちろん大事だけど、家族のこともちゃんと大事にしてあげてね。あなたの家族は私にとっても家族同然なんだから」


「お気遣いありがとうございます。短い間でしたが、陛下のお側でお仕えできて、拙者は幸せでした」


 ゾルトは片膝をつき、深く頭を下げた。

 その姿は、忠誠心そのものだった。


「ゾルト、今まで私を守ってくれてありがとう。あなたがいなかったら、私はとっくに死んでいたわ」


「勿体ないお言葉です。陛下、どうか無理をなさらないように。また会える日を楽しみにしております」


 これは永遠の別れではない。

 ゾルトは今までもこれからも、私が最も信頼する家臣なのだ。

 彼の背中が、そう語っているように見えた。


 ――


 出発前、レンナーラとゾルテスが私を訪ねてきた。

 ゾルテスは私より年下だけど既に2m近い大男で、筋骨隆々のゾルトによく似ていた。

 父親の名に負けないよう鍛錬してきたことが想像できる。

 その瞳には、父親譲りの実直さが宿っていた。


「陛下、約束を守っていただき、ありがとうございました。ゾルトが無傷で戻ってきて、久しぶりに家族の時間が作れそうです」


 レンナーラが深々と頭を下げた。

 彼女の顔には、安堵と感謝の色が浮かんでいた。


「さっき、ゾルトにも言ったのだけど、あなたの家族は私にとっても家族同然なのよ。だから家族の時間を大事にしてね」


「はい! 陛下にこのような優しい言葉をかけていただけるなんて、光栄です。この御恩は忘れません」


「レンナーラ、ゾルトから聞いているとは思うけど、カイル君をお願いね」


「承知しました。私も息子が増えたようで楽しみです」


「ありがとう。レンナーラにそう言ってもらえたら安心ね」


 私はレンナーラと固く握手を交わし、マジェスティアを後にした。

 振り返ると、彼らはいつまでも手を振ってくれていた。

 次に会えるのはいつになるのだろうか。

 その時まで、私ももっと強くならなければならない。

 彼らに恥じない王になるために。

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