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第42話 王としての威厳

 翌日以降も、私とアメリアの特訓は続いていた。

 アメリアが効果を感じていると言うので、このまま続けることにした。

 私の額はデコピンの嵐によって赤く腫れ上がっているが、これも修行の一環だと思えば耐えられる……はずだ。


「まっぴー、今日は杖を使わずにやってみよっか」


「えっ、杖を使わないで魔法って使えるの?」


 私がそう言うと、アメリアは指先から微かな炎を生み出した。

 その様子はまるで指先から魔法の精霊が舞い降りたようだった。

 炎は彼女の意思に従い、生き物のように揺らめいている。


 私も試してみたが、何も出ず……。

 そう簡単にはいかないらしい。

 体内の魔力がどこかで行き場を失い、霧散していくような感覚だ。


「杖は補助具として魔法の制御がしやすいように加工されているんだよ。まっぴーの周りに杖を使わずに魔法使っている人はいないの?」


「そういえば、宰相が『髪を乾かす魔法』を使ってくれるんだけど、杖は使っていなかったわね」


「『髪を乾かす魔法』とか、超ウケる。宰相ヤバくね」


「火属性と風属性を少しだけ混ぜて使うらしいよ」


「ふうん、こんな感じでおけ?」


 驚くことに、アメリアが『髪を乾かす魔法』を完全再現してみせた。

 どうやら、今後の私の髪はサラサラになることが約束されたらしい。

 それにしても、聞いただけで再現するとは……。


 アメリアの素早い理解力に、私は驚きつつも感心した。

 この世界において、アメリアのような才能を持つ者は珍しいのだろうか。


「アメリア、あなた凄いわね。魔人族ってみんなこんなことができるの?」


「そうですね。多分みんな感覚でできると思うけど、カイルはあまり上手くないかも。あいつは武術に偏っているタイプだから」


「カイル君は別な意味ですごいと思うわよ。あのフェルドリムの両目を潰したんだから」


「そういえばそうだったよね。ウチのために無茶しやがって……」


 そう言った彼女は嬉しそうだった。

 双子にしか分からない世界があるんだろうな。

 アメリアが言うには、お互いの考えが大体分かってしまうらしい。

 言葉にしなくても通じ合う絆、少し羨ましい気もする。


「ねえ、アメリア。どうしても上手くできないんだけど、何かコツのようなものはないかしら?」


「何かポーズをとってみたらいいかも。こんなのどう?」


 アメリアは指でV字を作って、目の前で横にしてみせた。

 すごくかわいいのだけど、私がやるのはちょっと違う気がする。

 王としての威厳が、音を立てて崩れ去る音が聞こえるようだ。


「アメリアがやるとかわいいんだけど、私はもうちょっと威厳のあるポーズがほしいわね」


「じゃあ、こんな感じはどう? ギャルピっていうポーズなんだけど」

 

 今度は右手を突き出す形だが、やっぱり指でV字を作って手のひら側を上にしていた。

 さっきのと何が違うのか、私にはさっぱり分からない。


「あのさ、その指の形は必須なのかしら……私としてはちょっと違うんだけど」


 アメリアの提案を受けながら、私は心の中で理想のポーズを思い描いた。

 王としての威厳を保ちながら、親しみやすさも表現したいのだ。

 そんな都合の良いポーズがあるのかは分からないけれど。


 その後、色々とやってみて、両手を横に広げるポーズとすることで落ち着いた。

 かわいいポーズを全て否定されたアメリアは怒っているのか、頬を膨らませている。

 これはこれでかわいい。


「まあ別にいいんじゃね。かわいくないポーズの方がなんか強そうだし」


 あ、これは完全に拗ねているわね。


「かわいいポーズはやっぱりアメリアが一番似合うからね。私にはちょっと荷が重いかな」


「まっぴーも十分かわいいじゃん。あーでも、やっぱり王だから強そうな方がいいのかも」


 よし!

 この子、結構ちょろいな……。

 褒められることに慣れていないのか、素直に喜ぶ姿が愛らしい。


 結局、両手を横に広げるポーズで杖を使わない練習を再開したのだが、私には蝶を出すことができなかった。

 私、こんなに魔法が下手だったのね。

 自分の才能のなさに、少し落ち込んでしまう。


「アメリア、もう魔力切れみたい……。私には杖を使わないと難しいわね」


「まだ始めたばかりだし、落ち込む必要はないんじゃね。というか、まっぴーはさすが魔王だよね。魔人族でもそれだけの魔力を持つ人は少ないよ」


「私って、魔力が多い方なの?」


「多いなんてもんじゃないよ。人間族なら最高レベルのはずだよ。私よりはるかに多いしね」


 そういえば、リナリスも私の魔力が多いようなことを言っていたような。

 リナリスの話は半分くらいしか本気にしていなかったのだけど、まさか本当のことだったとは。

 リナリス、疑ってごめんね……。今度会ったら謝ろう。


「でもね、あっという間に魔力切れで動けなくなっちゃうし、この魔法を初めて使ったときは気を失ったんだよ」


「その魔法は魔力消費が大きすぎるじゃないかな。古竜に致命傷を与えるほどなんだし、ちゃんと扱えないとそうなるよ」


「練習……すれば、なんとかなるかな?」


「あー大丈夫じゃね。最初っから何でもできる人なんていないっしょ。ウチだって最初からできたわけじゃないんだよ。ウチはまだ子供で角が小さいから魔力制御の練習はしてるんだ」


 そうか、やっぱり練習は必要だよね。

 気が遠くなるような話だけど、農地改良のために私の魔法が必要なのだから、私がやるしかないのだ。


「やっぱり、そうだよね……。ところで、角の大きさは魔法に関係あるの?」


「あ、説明不足だったよね。魔人族は成長に伴って角が大きくなっていくんだけど、角の大きさと魔力は関係があると言われているんだ」


 なるほど、そうだったのか。

 思い出してみれば、ヴァルゴンとリナリスは結構大きな角を持っている。

 カイル君とアメリアは、まだ子供だからだと思うけど、まだ小ぶりだ。


「ということは、大人になったら角の大きさである程度の強さが分かっちゃうわけだよね」


「そうだけどさ、魔力の大きさがそのまま強さになるわけじゃないから、角が大きくない人ほど訓練をするんだよね」


 魔人族も色々と大変なのね。

 見た目で魔力が分かってしまうなら、小さい人はかなりのコンプレックスとなるだろうから。


 子供は、将来角が成長しない可能性を考えて、魔力制御を訓練するそうだ。

 魔人族が魔法に長けているのは、案外こういったネガティブな理由によるものかもしれない。

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