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第24話 魔界を照らす光

「ところで、光属性ってどうやって調べたら良いのでしょうか。魔界で光属性に詳しい人なんて、ほとんどいないと思うのですが」


 リナリスの疑問はもっともだ。

 魔界は瘴気に覆われた闇の世界。

 光属性の使い手など、伝説上の存在に等しい。

 他の属性なら、その道のプロがいて判断できるが、光属性に関しては誰も正解を知らないのだ。


「簡易的な判定方法になりますが、瘴気を多く含む土に対し魔力をぶつけてみて、瘴気が減るかを見れば良さそうです。瘴気は闇属性なので、光属性の魔力であれば打ち消し合うはずです」


 スカーレットが即座に提案する。

 さすが、準備が良い。


「なるほど、スカーレット様の案で良さそうですね。瘴気の量が変わったかは私でも判断できます」


「では、リナリスにお願いしましょう。貴女なら適任です」


 確認役にはリナリスが手を挙げた。

 スカーレットは無属性なので、闇属性を得意とする魔人族のリナリスの方が、瘴気の微細な変化を感じ取れるだろう。


「ベルモント殿、土が肥沃かどうかはどのように判断するのでしょうか。せっかくなので瘴気の変化が土にどのような影響を与えるのかも調べたいのです」


 スカーレットがベルモントに向き直る。


「それは良い案ですね。色、匂い、触った感覚も重要ですが、私の場合は味で確認していますね」


 ベルモントは事も無げに言った。

 味……?

 土を食べるの?

 人間界ではこんなワイルドな方法で農業をしているのかしら。

 お腹を壊すような気がするんだけど。


「具体的にはどのような特徴があるのでしょうか」


「一般的に肥沃な土は甘みがあります。農業に適していない場合はえぐ味が強いのです」


「では、陛下が魔法を使う前後で味の比較もお願いします。ところで、お腹を壊したりしないのでしょうか」


「味の比較、承知しました。食べるわけではありませんので、すぐに吐き出して口を濯ぎます。まあ、多少は飲み込んでしまうこともありますが、慣れれば大丈夫です」


 ベルモントはスカーレットの無茶な要求にも平然と対応している。

 これは本当に凄いことだ。

 女癖が悪いとか言われていたが、仕事に対する姿勢は本物だ。

 プロフェッショナルなのだ。


 私たちは王都の北門までやってきた。

 リナリスが言うには、この門付近の瘴気が王都で一番強いのだそうだ。

 淀んだ空気が肌にまとわりつくような不快感がある。


「では、陛下。あの印を狙って魔力をぶつけてください」


 スカーレットが地面に白いチョークで印を書いた。

 私は大きく深呼吸をする。

 自分の中に眠る力を信じて。


「じゃあ、いくわよ」


 私は印に向かって、掌を突き出した。

 体の中から熱いものが溢れ出し、指先から放出される。

 

 カッ!

 

 眩い閃光が走り、周囲が真昼のように明るくなった。

 キラキラと輝く光の粒子が舞い散り、パチパチと火花が弾ける。

 それは、魔界では見たこともないほど美しく、神聖な光景だった。


 光が収まると、リナリスが印の箇所に駆け寄った。

 地面に手をかざし、真剣な表情で確認している。


「陛下! やはり瘴気が無くなっています。こんな事ってあるんですね……。私、光属性なんて初めてみました」


 リナリスが興奮気味に振り返った。

 その瞳は驚きと感動で潤んでいる。

 私、本当に光属性だったんだ……。

 ずっと魔法には向いていない、落ちこぼれだと思っていたのに。

 私にも、できることがあったんだ。


「あとは味ですね。さあ、ベルモント殿」


 スカーレットが嬉しそうに、事前に採取しておいた土と、今瘴気が抜けた土をベルモントに渡した。

 ベルモントは躊躇わずに土を口に入れた。

 ジャリッ、という音が響く。

 彼は眉をひそめ、しばらく味わった後、ペッペッと吐き出した。

 そして、もう一方の土を口に含む。


「こ、これは……。元の土はえぐ味がひどく、舌が痺れるようで農業には不向きですが、瘴気が抜けた方の土は……えぐ味が消えています。微かに甘みすら感じる」


 ベルモントの声が震えている。


「農業に使えそうですか?」


「このままでは無理ですが、しっかり耕して肥料をまけば使えるようになります。これは凄い発見ですよ。魔界の農業革命になります!」


「陛下、やりましたね。これで農業改革に繋がる可能性がありますので、私の方でさらに詳しく調べてみます」


 スカーレットが私の手を取り、強く握りしめた。

 その手は温かかった。


 魔界が農業に適さない理由と、解決方法がようやく見えてきた。

 スカーレットの調査結果次第ではあるが、明るい未来が待っているのかもしれない。

 私の魔法が、この国を救う光になるかもしれない。

 そう思うと、胸がいっぱいになった。

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