表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

2.息子と母

 小学2年になった藍子(あいじ)は、祖母と出かけた際に再び車に撥ねられ死んだ。


「おばあちゃん! こっちこっち! はやく~!」

「待って頂戴。藍子ちゃん。危ないから。おばあちゃん、そんなに速く走れませんよ」


 藍子は、自分の所為で母親が亡くなったのでずっと落ち込んでいたが、最近漸く元のように元気になっていた。


「あ。赤になっちゃう」


 祖母も追い着いて来ないし、急ぐ必要も無かったのに、直ぐ渡らなくてはと飛び出した。

 そこへ、やはり必要も無いのに急いでいた車が、藍子に気付かずに右折して来たのだ。




「どうして、もっと気を付けてくれなかったんですか!」


 再び藍子を失った正子(まさし)は、母を責めた。


「おばあちゃんは、悪くないよ!」


 美鳥には、母の命と引き換えに助かっておいて、たった一年でそれを忘れたかのようにうかつな行動を取った藍子が悪いとしか思えなかった。


「藍子は死んだんだぞ!!」


 美鳥は正子の剣幕に怯え、何も言えなくなる。


「クソッ!」


 そんな美鳥に何故か罪悪感を感じた正子は苛立ち、壁を殴るとその場から離れた。




 その夜、正子は夢を見た。


『息子の死を、無かった事にしてやろうか?』


 何者かは、気前良くも再びそうしてくれると言う。


「今回も、同居家族の?」

『無論だ』


 正子は、母か美鳥かで迷った。

 母は大切だが、藍子をよく見ていてくれなかった所為で、藍子は死んだのだ。

 美鳥は薄情で可愛くないが、彼女の所為で藍子が死んだ訳ではない。


 大切さで言えば、母に軍配が上がる。

 しかし、非があるのは母の方なのだ。


 結局、正子は、母を引き換えにしたのだった。




 走る藍子を追い掛けていた母が倒れ、それに気付いた藍子は足を止め、事故に遭わなかった。

 母は心臓が弱っていたと、辻褄が合うようにされた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ