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第9話 リミッター


 臓物の集合体がこちらを見た。無数の眼が見開き驚いている。この遅くなった世界でも反射神経だけはついて来れるらしい。けれどお爺さんの動きはスローリーだ。とてもゆっくりと動く。もう一度僕に拳を向けるまで何時間とかかるだろう。そんな感覚だ。


 「キロ。謝った理由その1や!」


 二キロはそう言うと、僕の掌で手刀を作り臓物の中に突き刺した。グチョグチョとした生暖かい感触が伝わってくる。気持ち悪い。悪寒が背筋を伝う。やった本人も平気では無いようだ。そしてその中をしばらく弄った後、何かを取り出す。それは心臓のように脈打つ丸い肉の塊。繋がった組織をブチブチと引き剥がして手に入れた。


 すると途端におじいちゃんごと臓物の塊は腐り果て、悪臭を放ちながら溶け出した。恐ろしく吐き気を催す。流石の二キロも耐えれなかったらしい。僕の望んだ生理現象を代わりに引き受けた。


 「おえぇ!!くっさ!おろろろぉ。あぁだめや…。向こう行くで!耐えられへん!」


 怪物だったものをそこに置き去りにして撤退する。アパートの方だ。けれどそこにも同じような成れの果てが置き去りにされ悪臭を放つ。きっと最初の被害者だったものだろう。更に場所を移す必要があった。体調は最悪だ。その場でもう一度嘔吐する。


 よろよろとした足でその場を離れようとする。けれど体力の限界だった。


 「謝った理由その2や!しばらく動けへんなる…」


 その言葉だけを残して僕の意識を巻き添えにして気絶した。


 はっと飛び起きた。そこは病院のベット。その傍にいたおふくろと目が合う。


 「キロ!アンタ大丈夫か!!心配してんでもう!」


 おふくろはすぐにナースコールを押す。


 「アンタもう〜、すぐ変なもんに巻き込まれて!!今回は許さんで!!もうしっかりし!」


 「ごめん…」


 「まぁでも、無事で何よりや…。せやけど後でちゃんと話し聞かせてもらうで!覚悟しときや!」


 「はい…」


 そのあと、親父が駆けつけて来た。前回と同様に仕事途中で抜け出して来てくれた。散々な目にあったけれど僕は生き残れた。それが何よりも嬉しく。怒られている最中に何度か笑顔になってしまった。

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