第4話 未来の敵
親に嘘をついてしまった。本意ではない。けれどそれしか方法は無かった。おふくろは「昼飯前には帰ってくるんやでぇ!」と居間から顔を出して答えた。僕は玄関の鍵を開けると同時に扉も開いて「行ってきまーす!」と足速に外へ出る。
「上手くいったやん。おふくろ若いな懐かしいわ…」
二キロはそうこぼす。そのなんとも言えない気持ちが僕の心に伝わる。未来で何が起きたのか気になってきた。けれどそれを聞いても詳しくは教えてくれないのだ。
「そう膨れんな。俺が教えんでもいずれわかるし、納得もする。心配せんでも良え。早よ行くで!時間ないでな」
そうして体のコントロールも奪われる。そしてやって来たのはあの駐車場だ。やはり人気はない。ここで何をしようと言うのか。
「怖いんやけど。大丈夫なん?」
「正味、俺も怖いで。けどなやらなあかんねん」
そう言うと突然走り出した。滑り込む様にしてオンボロの放置された自動車の影に入った。間髪入れず異変が起きる。何もない空間に火花が起きる。まるで電気がショートしたかのようにバチバチと危険な音を鳴らす。そしてしばらくすると空間に風穴が開いた。
すると空気が一気にそこへ流れ込んだ。体が持ち上がり吸い込まれそうになる。けれどオンボロ自動車にしがみついて耐える。その頼みの綱だった車体も軽く浮き上がった。不味い。そのままではどうにかなってしまう。どうなるのかわからないけど絶対にヤバい!恐怖で声を出そうとするが未だに体のコントロールは奪われている。
「はよおさまれや!カスが!!」
代わりに二キロが愚痴をこぼした。そのお陰かはわからない。けれどその流れは途端にピタリと止まって僕と車体は地面に落ちる。運良くタイヤと床の隙間で助かる。もし挟まれていたらと思うとゾッとした。
そのあとでそれは出てきた。うつ伏せになりその隙間からしか外は見えない。しかし確かにそれは居た。上手く説明できないけれど、あえて言葉にするなら宇宙人?いや妖怪かも知れない。可愛く言えばスライム。それもグロテスクな色合いで動物の内臓を彷彿とさせる。
吐きそうになる僕を二キロが止める。瞬きは許されず。この瞬間を1秒たりとも見逃せてはくれない。トラウマである。きっと死ぬ。ここで助かっても、きっとこの不可避なミッションの途中で僕は死ぬ。そう確信した瞬間だった。