表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏アカ女子二人、微エ◯小説で名を上げる【完結済】  作者: ながつき ゆう
2部 投稿と 新ペンネームと 新環境
6/12

6万字 『須堂、脱ぐ(?)』

────────────────────

前回のあらすじ


通与を膝枕することで

礼多はスランプを脱することができた、が

────────────────────


膝枕イベントの翌朝、

通与は礼多から俳句を再び3首受け取った。


「これ、いいんじゃないか」


セミの()

 夏のおくるみ

  彼のシャツ


「青春って感じだな

 情景が思い浮かぶ」

「それ、私も推したいと思っていました」

「ただ受け取り方によっては

 エッチに取る人もいるかもしれないけど」

「え、なんでですか?」

「だってさぁ?……

 ほぼ事後じゃん?これ」

「ツーさん……」

礼多は遠い目をした。

「夏の昼下がり

 彼氏のシャツを畳んでいるうちに

 愛おしくなってシャツを身体にかけて眠るんですよ?

 それのどこがエッチですか」

「同棲してんじゃん!

 関係進みすぎだろ!」

「今どき同棲の一つでうろたえないでください」

「今どきの子こわ……」

「一歳差ですけど」


あーだこーだやったが

通与はこの句で水墨画を描くことに決めた。

「そういえば、この前の俳句

 季語がなかったな」

「そうでしたね

 理性が足りないと忘れるみたいです」

「これで締め切りまであと何日だ?」

「8日ですね」

「筆が乗れば問題なくいけそうだな

 礼多、あたしが絵に専念してるときなんだが……」

「あまり時間を取らせないほうがいいんですよね」

「あ、うん……そうなんだけど……

 よくわかったな」

「想像ですよ想像、

 わかりました、

 差し入れしながら、次の小説の構想でも練っています」

「うん、ありがと」


……翌日……


「礼多、すまん

 描けなくなった……

 というか礼多と近い症状起こしてるかもしれん」

「ええ!」

差し入れに行った直後のことだった。

「まずスケッチを描いてるんだけど

 これ……」

「うわぁ……これはエッチですね」

先日通与が言っていたような

シーツの上に裸ワイシャツで座っている少女や

床の上にシャツ一枚で寝そべっている少女などが描かれていた。

「なんで私が解説したシチュエーションの絵も

 裸ワイシャツなんですか?

 服着せれば良さそうなのに……」

「服着せたときのバランスがわからなくなった……」

「難儀してますね……」

「でもあたしは礼多と違って

 こういったスランプは何度か経験してるんだ」

「お、ということは解決方法があるということですか?」

「……いや、すまん、ない

 というかその都度解決手段が違って固定化できてない」

「あら、じゃあどうするんですか?」

「とりあえず色々手は尽くしてみるよ

 画集読んだり散歩したり、いろいろだ」


……翌日……


ここ数日、礼多は目線を感じていた。

通与と今の関係になってから、以前よりさらに注目されるようにはなったが、

物珍しさで見ているのではなく、純粋に自分に興味を持っている、

そんな目線が紛れていた。


その相手を知る機会はわりと早く訪れた上に、

礼多からすると意外な見知った顔であった。


礼多は通与と共に昼食を取るのではなく、

一人で教室で軽食を取ることにした(通与には伝えた)。

すると一人の人物が近寄ってきた。

「須堂さん、今日は一人なの?」

爽田(さわだ)さん?うん、そうだけど」


爽田丁夏(さわだ ていか)

高等部1年。礼多と同じクラス。

専門はデザイン、特に装丁に秀でる。

校誌「王文」の編集委員の一人であり、

表紙の装丁・デザイン担当でもある。

背は低め(通与よりやや高いぐらい)。

肩で揃った真っ直ぐなストレートヘアで、

制服もビシッと着こなすお硬いイメージであるが、

話してみると気さくで柔らかい物腰のため、友達は多い。

礼多との会話も少なくはない。

「今日は小瀬さんと食べないんだ?」

「うん、まぁちょっとねぇ……」

「え、喧嘩?」

「そういうのじゃないよ!

 一人になってもらう時間が必要そうだったから」

「ふぅむ……

 須堂さん、やっぱり小瀬さんと付き合ってるんだ?」

「お、やっぱそう見える?」

「隠さないんだね

 というかここ最近の行動見てたらそうとしか思えないわよ」

礼多、ちょっと考える。

「もしかして……

 爽田さん最近私のこと見てた?

 ……自意識過剰だったら恥ずかしいんだけど」

丁夏はバツが悪そうな顔をした。

「あー……実はけっこう見てた

 ごめん

 迷惑だった?」

「いや、それはないんだけど

 でもなんで?」

丁夏ひと呼吸、

「最近の須堂さん

 以前にも増してイキイキしててさ

 見てて元気出るんだよね

 私のデザインの刺激にもなるし」

「へぇ」

「小瀬さんといるときの須堂さん

 すごくキラキラしてるよ、素敵

 ……ああ!嫉妬とかの暗い感情は全然なくて!

 だから今日はどうしたんだろうなって……

 それで声かけたの」

「それはありがとう!

 じゃあ爽田さんには話してもいいかな」

礼多は裏アカの件のみ伏せて、

通与との今の関係と現状を説明した。

「スランプ……ねぇ……

 確かに描く系だと解決法は一つじゃないかも」

「今日は距離をおいてみたけど、

 なんか違うかなって気もして……

 私なんもしないのがあんま性に合わなくて」

「解決法は一つじゃないって言っても

 こういうときの解決法の根っこって

 めっちゃインプットするっていうのがあるの」

「あ、言われてみればそうかも!」

「だから小説も漫画もアニメも映画も

 外に出て景色を見るのもアリって話

 なんかやれそうな感じしてこない?」

「うん、イケるかもしれない!」


……さらに翌日……


「それでこういうことに?」

「はい!」


放課後の美術室、

礼多は自前のワイシャツを持っている。


礼多の俳句と同じ情景を礼多が再現し、

それを通与がスケッチすることにしたのだ。


「効果があるかはわかりませんが

 いろいろ試すとツーさんが言っていたので

 こういうのもありですよね」

「まぁ、拒む理由は特にないな」


礼多がワイシャツを広げ、身体の前にタオルケットのようにかけた。

「ほら、こういう感じです」

礼多が目線を通与に移す。

通与はジッと礼多を見つめている。

「あの……ツーさん?」

「礼多、自分で自分のこと可愛いと思ったことある?」

「え?!」

「正直に」

「んと……可愛いかはわからないですけど

 可愛く見えるように最大限の努力はしているつもりです」

「そうか……なるほどな」

通与はスケッチブックに鉛筆を滑らせる。

「発露というかオーラというか

 礼多は自分を隠さずに発してるんだな」

「どういうことですか?」

「可愛いってことだよ」

「なッ!!」

礼多の顔が真っ赤になった。

その間も通与は手を止めない。

「んん……よし、いけそうだ、どうだ?」

「わぁ!かわいい!」

通与が描いた礼多のスケッチは

これまでの扇情的な要素を澄んだ形に転換し、

若さ相応の瑞々しいものになっていた。

「効果は……あった!」

「ですね」

「ありがとう、礼多」

「いえ、お互い様です」

「あたしはこのまま作業を続けるが、どうする?」

「邪魔しない程度に書きものしてますよ」

「わかった」

「これでもツーさんがダメだったら

 私、脱いじゃおっかなって思ってました」

「は?!」

「刺激になるかなって思って」

「自分の身体は大事にしろ!それにここ学校だぞ!」

「その言葉そのまんま返しますよ!」

二人はそのまま小言を挟みつつ、

互いの作業をモリモリ進めた。


続く!




────────────────────

次回予告!


スランプを脱した通与、

無事共同制作を提出する二人

そして投稿作の反響は?

次回 7万字『二人、喚く』

────────────────────


用語まとめ


小瀬(おぜ) 通与(かよ)

私立文王女子学園高等部2年。

美術専科。

特に水墨画に秀でる。

微エロ絵描き「オズ(OZ)」の裏アカウントを持つ。

背は低い。

着物女子。

礼多と共同創作者以上恋人未満の関係になった。

今回スランプを脱した。


須堂(すどう) 礼多(れた)

私立文王女子学園高等部1年。

詩歌専科。

特に俳句に秀でる。

微エロ小説書き「レターパックマン」の裏アカウントを持つ。

背は高い。

ギャル(2010年代基準)。

通与と共同創作者以上恋人未満の関係になった。

前回スランプを脱した。


爽田(さわだ) 丁夏(ていか)

私立文王女子学園高等部1年。

礼多と同じクラス。

デザイン専科。

特に装丁に優れる。

背は低め。

きっちりした着こなしを好むが、

だいぶくだけた性格。

礼多と通与の関係に興味を持ち、

縁あって深入りすることになる。

今回より新キャラ爽田(さわだ)の登場です。


立場上通与と礼多とよく絡むポジションなので

今後も出番があるといいですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ