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裏アカ女子二人、微エ◯小説で名を上げる【完結済】  作者: ながつき ゆう
2部 投稿と 新ペンネームと 新環境
5/12

5万字 『小瀬、オギャる』

二人の関係が変化した翌日


小瀬通与(おぜ かよ)が玄関のドアを開けると、

階下に須堂礼多(すどう れた)がいた。

「ツーさんおはようございます!」

「おう、おはよう……え、わざわざうち寄ったの?」

通与の家は礼多の通学路の途中にはない。

「私こいつがあるんで大したことないです」

礼多が駆るのは軽快なロードバイク、かなりの速度が出る。

「じゃあ一緒行くか、歩きでいい?」

「はい!」


......


「礼多は学校でどう言うつもりなんだ?その、うちらの関係」

「うーん、合作を経て仲良くなったって感じですかね

 あぁ、もちろん、『アレ』の話は伏せますよ」

『アレ』は二人で合作した微エロ小説

『スペース女海賊サカナ屋さん』のことである。

「まぁそこが順当かな」

「いやー、これからどういうことしようかなぁ

 まず今日のお昼は一緒に食べましょう、ね?」

「おう」


……


昼休みに突入して約15秒


「小瀬さんいますかぁ?!」

通与のクラスに礼多がぶち飛んで来た。

そしてかなりざわついた。

芸に長けた各々の生徒はそれなりに有名人ではあるが、

礼多は「ギャルで俳人」というそのミスマッチさで

1学年上でも認知度は高い。

「お前……廊下走るとヤベーだろうが!」

「早走りです!」

そして相手が内向的な芸術家気質の通与であることも

ざわめきに拍車をかけた。

喧騒をBGMに、通与は礼多と教室を後にした。


……


学食ではさらに二人に視線が刺さった。

礼多が目立つのが8割、

二人の組み合わせが珍しいのが2割といった感じである。

「これってゴシップなんかな」

「そうでしょうねぇ、此処は色恋沙汰に飢えてますからねぇ」

「女子校だしな」


通与はスパゲティランチ、礼多はざるそば定食である。

「この前から思ってたけど、礼多は和食派なんか?」

「そうですかねぇ、ごはんとパンだったらごはん派ですけど

 そういうツーさんこそかなり洋食寄りじゃないですか?」

「どうだろうな、カレーでナンが選べたら絶対ナンだけど」

「ナンッ!あー!ごはんとナンだとさすがに迷いますね!

 ナン……かなぁ……」


そういう他愛のない会話を続けていた二人だが、

すぐそばの席にラーメン定食が置かれた。

二人と一蓮托生した分所文匁(ぶんしょ あやめ)である。

「こちら座ってもよろしいですか?」

「よう分所」

「分所さん、どうぞ」

文匁は麺をガッツリ啜ると、携帯端末を見せた。

「件の作品、かなり勢いがありますね

 昨日時点でSFジャンルで10位以内に入っていたようです」

「そんなにいってるんですか?!」

「応募期間が終わるまでまだ一週間ありますが、

 この勢いなら既にうちの審査員は読んでいるでしょうね」

「うち?」

「双星社に籍があるんです、私

 ああ、今回の審査には絡んでないですよ、一応」

「そうだったんですか?!」

「ん?分所がいる出版社って文王市内だろ?双星社なら双星市じゃねーか」

双星市は文王市の隣の市になる。

「鋭いですね、支社があるんですよ文王市に

 事情はお察しかと思いますが」

「あ……そうか……」

「おっと、お二人に話があって来たんでした

 今度の「王文」にて合作特集があるのですが、お二人で出してみませんか?」

「合作?」

「そうです。絵と文のコラボレーション企画です

 お二人なら須堂さんの俳句に小瀬さんが水墨画を併せる

 もちろん逆でも良いです」

「〆切は?」

「10日後です、短納期ですがいかがでしょうか」

「や、やります、やらせて下さい!良いですよねツーさん?!」

「え?おぅ……礼多がそう言うなら」

「やったぁ!じゃあ放課後美術室で!いる場所教えてくださいね!」


......


放課後


礼多は美術室に着くなり、ルーズリーフを通与に渡した。

紙には句が3首書かれていた。

「今日作った俳句です!これでいかがですか?」

「早いな!どれ……」


『くちびるに 重なりつもる おもいかな』


「どうですか?」

「良いけど……んー……

 礼多、これエロいぞ」

「え?!」

「これも……こっちも……

 思いの矢印が……全部あたし宛だな

 で、なかなかに生生しい」

「はい!」

「しかしだな礼多、「王文」に出すのは"須堂礼多"じゃないとダメだろ

 この色気は"レターパックマン"の作風だぞ」

「んー……でも、今の私の気持ちを俳句に載せたら

 『こう』ですよ」

「いや、直さないとダメだ

 須堂礼多とレターパックマンはきちんと分けるんだろ?」

「えぇ……じゃあそれができない今の私って……

 スランプ?」

「厳密には違うが、広義ではそうだろうな」

「うえぇ……そんなぁ

 こんなこと今までなかったのに……」

礼多は通与に身体をもたらせた。

「うぅ……あ、ツーさんに触ると安心する」

「お前なぁ……なんの解決にもなってないぞ

 しかしどうするかな……ちょっと時間くれ」


……



通話 通与with文匁


「そうですか、合作の影響が"こちら"にも出てしまったと」

「分所ならなにか解決法を持ってないかなと思って」

「ふむ……答えはないですが、

 このような状況を打破した例は見たことがあります」

「おう、教えてくれないか?」

「須堂さんの欲求を叶えてあげて下さい」

「え?」

「須堂さんが叶えたい欲求を抱えていて

 それがそのまま俳句に出ているのでしょう。

 一旦出し切って欲求を空にすることで

 新しい創作力が湧いてくるかと思われます」

「礼多の欲求って、なんだ?」

「そこはあなたの役目ですよ、小瀬さん

 私はエスパーではないんです」

「そうかぁ、うむ、ありがとう、やってみる」



……


翌日放課後


「……ということで、礼多、願いを叶えてやるぞ」

昨日の文匁とのやり取りを話したが、礼多はスンとしていた。

「礼多?」

「ツーさん、私のことちょっと舐めてませんか?」

「いや、そんなことないけど」

「違いますね、私の内にある欲求のデカさを理解してません

 今ここで「裸でハグしてください」って言って

 ツーさんはやってくれますか?」

「えぇ!?…………」


通与はちょっと逡巡した。


「……それで礼多の新しい句が浮かぶならいいけど」

「え?」

「礼多のためなら……それぐらいなんてことない」

通与は服のボタンに手をかけた。

「わー!!!

  ダメッ!!!

   ダメです!!!

    ツーさん!!!

     ダメー!!!」

礼多がグワッと通与の手を抑えた。

「なんだよ!そっちのお願いだろ!」

「欲求としてあるのは事実ですけど

 こんな形で叶うのはイヤです!」

「ええ!?ややこしいな!」

「これはツーさんの自然な欲求の発露があってから

 叶えられてこその夢なんです!

 こんな形で叶ったらダメなんです!」

「ああ?そういうもんなのか?」

「はい!そう!だからですね!」


礼多は正座して腿をポンポンと叩いた。

「私の欲求のステージを少し下げます

 ツーさん、私に甘えてください」

「は?」

「私の満足度とツーさんの難易度を考慮した結果です」

「な、なにすればいいんだ?」

「ここに頭のっけてください」

あらためて礼多は腿をポンポンと叩いた。

「さぁ、どうぞ」

「むぅ……慣れんことを……」

通与は身体に力を入れて横にじわーと倒れた。

肩が床に触れたが、強張った頭は礼多の腿よりだいぶズレていた。

そこから双方が身体をよじり、ようやく頭が礼多の腿に乗った。

頭を載せたはいいものの、

横向きの通与の視界にあるのは礼多の陰が落ちた制服である。

「なんもみえん」

「顔を上にすればいいじゃないですか」

「そうだな」

身体をねじって、通与の頭が天井を向いた、

しかし、見えるのは天井ではなく、礼多の双丘であった。

こちらを覗き込んでいる礼多の顔がかろうじて見える。

「うぉ、デッカ!」

「もう!ツーさんのアホ!」

頭を弱く平手打ちされた。

「いって」

「ツーさん、たまに異様にオッサン臭いですよね!」

「ええ?!これは誰だって反応せざるをえないだろ!」

「もう……で、どうですか感想は?

 おっぱい以外で」

「んん、そうだな......」

礼多の柔らかな腿に包まれ、

頭にはさっきはたかれた手が優しく添えられている。

体温と、コスメのほのかな甘い香りが心地よい。

「温もりを感じる……これは……母性?」

「ふぅん」

「……おぎゃ」

「デカい赤ちゃんですね」

「礼多はどうなんだ?」

「気分良いですよ、私の手の内にツーさんがいるんですから

 やはり欲しいのはスキンシップですね、昨日もあのままだったら……」

「……すぅ」

通与は寝息を立てていた。ほんと入眠が速い。

「あら寝ちゃった、もうしばらくこのままでいいですかね」

礼多は通与を膝の上であやし続け、

たまにハッとしては携帯端末をポチポチした。


続く!


────────────────────


次回予告!


スランプを脱した礼多、

しかし今度は通与がスランプ?!

礼多に手を貸す新たな人物とは?

次回 6万字『礼多、脱ぐ(?)』


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用語まとめ


小瀬(おぜ) 通与(かよ)

私立文王女子学園高等部2年。

美術専科。

特に水墨画に秀でる。

微エロ絵描き「オズ(OZ)」の裏アカウントを持つ。

背は低い。

着物女子。

礼多と共同創作者以上恋人未満の関係になった。

寝付きが激烈に良い。


須堂(すどう) 礼多(れた)

私立文王女子学園高等部1年。

詩歌専科。

特に俳句に秀でる。

微エロ小説書き「レターパックマン」の裏アカウントを持つ。

背は高い。

ギャル(2010年代基準)。

通与と共同創作者以上恋人未満の関係になった。

デカい。


分所(ぶんしょ) 文匁(あやめ)

私立文王女子学園高等部2年。

出版専科。

特に校正に秀でる。

通称『鉛の女』。

出版社「双星社」にも籍をおくセミプロ。

通与と礼多の裏アカ活動を知る人物。


────────────────────

第2部、開始です。

学校生活の二人を中心に、より関係を深めていく予定です。

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