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裏アカ女子二人、微エ◯小説で名を上げる【完結済】  作者: ながつき ゆう
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4/12

4万字 『二人、投稿する』

夜ちょっと前の夕方


ベッドで目が覚めた通与、

なんか普段より狭いなと思いつつ

身体を動かすと

手が「ふよっ」と柔らかいものにあたる。

「は?」

それは通与も持ってはいるものだが、

サイズは通与のものより2回りほど大きく、

手で押すと押しごたえのある弾力で跳ね返ってきた。

「は??」

恐る恐る通与が顔を右に傾けると、

そこにはこちらを見つめる礼多の目があった。

「やだ、ツーさんたら大胆」

「は???」


……


「なんで???」


────────────────────


その日の昼


────────────────────


「誤字はないですね

 イラストのフォーマットも問題ないでしょう

 でもなぜ投稿前に私に?」


メイド喫茶:川瀬(と書いてリバーサイドと読む)

その店員であるアヤこと分所文匁(ぶんしょ あやめ)

小瀬通与(おぜ かよ)須堂礼多(すどう れた)の合作である

『スペース女海賊サカナ屋さん』(15,000字)を読み終えていた。


「こういうのって当事者以外じゃないと

 ミスに気づけないってやつあるじゃない」

「分所さんもこの作品については一蓮托生ですよね」

「そうですね

 で、この作品どこに投稿するんですか?」

「双星社の春葵(はるひ)賞に出します!」

「ほう、大きく出ましたね」


双星社

文王市の隣の双星町に本社を持つ中堅出版社、

強みは守備範囲の広さであり、

一般向けから成人向け、漫画も文学もSFも扱う。

その双星社が3ヶ月に一回募集する投稿コンテストがあり、

春部門が春葵(はるひ)賞である。

夏は夏輝なつき賞、

秋は秋穂あきほ賞、

冬は冬海ふゆみ賞である。

ちなみに季節ごとの傾向の違いみたいなやつは、ない。


投稿は小説・イラストSNSサービス内にて行われ、

投稿作は選考前から一般ユーザーも読めるのが特徴だ。

大人気作となり、さらに審査員の目に止まれば

書籍化なども夢ではない賞であり、ドリームを求める応募も多い。


「ジャンルは迷ったがSFにした」

「無難ではないかと、ガールズラブもありかと思いますが、

 主題とは読むには難しいのでSFが適切でしょうね」

「それでは準備が出来ましたので投稿しますね」


礼多が投稿ボタンを押す。

しばしのアップロード時間を経て、投稿が完了し、

『スペース女海賊サカナ屋さん』は誰でも読めるものとなった。

投稿主はレターパックマン、イラスト作者としてオズ(OZ)が連名で並ぶ。


「投稿完了です!」

「やった!あー良かったなぁ!」

「お疲れさまでした、では祝杯でも?」

「それじゃあ……」

「「リバーサイドスペシャルで!!」」


リバーサイドスペシャルはスイーツランチである。

今日は「3種のフルーツサンド」、珈琲もつく。

「おいしい!」

「うまい!」

「ツーさん、お願いがあるんですが」

「んー、何?」

「今日ツーさんの家に行きたいです!」

「え?」

通与が聞き直す。

「お疲れさま会、やりたいなぁって」

「なるほどなぁ……むむ……」

「ダメですか?」

「ダメじゃないけど、部屋が汚い

 用意ができてないので掃除する時間が欲しい、2時間くれればOK」

「やったぁ!」

「あ......分所はどうする?」

目線が文匁に向く。

「遠慮しておきます、それはあなた方お二人のお疲れさま会でしょう?」

「ふむ......そりゃそうか」

「あと小瀬さん、『にぶい』って言われたことありませんか?」

「え?なんだそりゃ?ないぞ」

文匁は礼多の顔が赤くなっていることは黙っていた。


……


一時解散


……


「まぁこんなもんか」

通与は実家を離れてアパートで暮らしている。

一人暮らしも2年目であり、かなり慣れた。

出しっぱなしにしていた化粧品や服をまとめ、

掃除機をかけ終えて来客を迎えるレベルには片付いた。


良いタイミングでチャイムが鳴った。


「ツーさん、いろいろ買ってきました!」

「おーありがと!さ、上がって」

「おじゃまします!」


投稿を終えた高揚感も冷めぬまま、

通与と礼多はお菓子やジュースをつまみつつ、

互いの小説・漫画知識を共有したり、

通与が持っている漫画・画集を見たりした。


「そういえば投稿作どうなってます?」

「ちょっと見るか……うぉ!」

「あ、けっこう伸びてますね」

「すげー……自分でもここまで初動が大きいのないわ」

「私もです、これはランキング狙えるかもしれませんね」

「ランキングどころか、賞もいけるんじゃねえか?」

「それは……あるかもですね、

 あの……ツーさんちょっと聞きたいんですけど」

「何?」

「私との合作……これからも続けませんか?」

「え?」

「楽しかったんです、投稿までツーさんとやりとりするの

 これから私の全部の作品に絵を描いてくださいとは言いませんから

 また機会があったときに合作するみたいな……

 そういう縁の続け方をやっていきませんか?」

「おう、いいよ」

「……いいんですか?!

 ダメもとで言ったのに!」

「あたしも実際楽しかった

 まぁそりゃ全部描くのは無理かもしれないけど

 次は夏輝賞に投稿するとか……

 そういうスパンだったらいいんじゃないの?」

「ありがとうございます!

 じゃあコンビ継続ですね!」


しばし逡巡


「それなら追加で確認したいことがあるんですけど

 ツーさん、付き合ってる人とかいますか?」

「え?いないいない

 男運なかったしさ、ここだって女子校じゃんか

 そういうの縁ないね」

「じゃあそれは"女子も含めて"ということでいいんですね?」

「うん……うん?……礼多?」

気がつけば礼多は通与の目の前まで迫っていた。

「ツーさん、私、どうですか?」

「どう……ってどう?!」

「私と付き合ってみませんか?」

「え?!」

「私、ツーさんのこと好きになっちゃったみたいです

 ただ、これが共同創作者として好きなのか

 ツーさん個人を好きなのかがまだ混同してて

 そこは了解して欲しいんですけど」

「礼多、男より女ってタイプなの?」

「いや、こういう感情抱いた女の人はツーさんが初めてで

 だから私も自分の気持ちがつかみきれてないんですが

 あえて名前を付けるなら"恋"以外ないなぁと……」

「そうかぁ……

 あたしもこういうの初めてだから正直困惑はしてる

 ただ不思議と悪い気はしないよ」

「じゃあOKととってもいいんですか?」

……

「ちょっと条件を付けてもいいかな?」

「なんでしょう?」

「恋人という関係にすぐなるんじゃなくて

 これから共同創作とかを通じて一緒に過ごす時間を増やしていく

 その中で自分や互いの気持ちに整理がついたら

 関係を更新していく、これでどうだ?」

「更新……なるほど、いいですね!

 ではそうしましょう!」

「じゃあ……」

通与が手を出した。

反射で礼多が握り返す。

「なんですかこれ?」

「こういうとき正直どうすればいいかよくわかんない」

「……ならこれでいいんじゃないですか!」

礼多がぐわっと通与に抱きついた。

「わーー!!」

「これから遠慮はしませんよ、ツーさん」

「呼び方変えないの?!」

「いいじゃないですか、特別な関係って感じで」

「そういうもんか?……うっ」

通与がフラッとした。

「ツーさん!?大丈夫ですか?」

「すまん、実は昨日あんま寝てなくて

 気が抜けて一気に眠気が来ちまった……

 このタイミングで悪いけど寝てもいい?」

「いいですよ、着替えます?」

「いや、仮眠で済むだろうからそのままでいい」

通与はベッドにズリズリと這入ると、そのまま目をつむった。

「うちオートロックだから、

 礼多が帰りたいタイミングで帰っていいよ……ほんとすまん」

「いいんですよツーさん、おやすみなさい」

「おやすみ……」

通与は2秒で寝た。


そして冒頭に戻る。

仮眠がしっかり取れた通与だったが、

礼多は帰っておらず、通与の横に寝そべっていた。

通与は意図せず触ったのは

礼多のおっぱいだった(もちろん服は着ている)。

「あ、思い出してきた……

 礼多、帰っていいって言ったのに」

「あんなやりとりしておいて

 帰るって選択肢はありえませんよ

 それにツーさんの寝顔、かわいかったですよ」

礼多が通与の頬を指でつついた。

「あのなぁ」

「あ、なんかすごい気が楽になりました

 やっぱ言いたいことは口に出すのが私の性分に合っていますね」

「お前……キスとかしてないだろうな?!」

「してませんよ!

 なんなら今しますか?」

「いや……まだダメだ!

 進展が早すぎる!ダメだ!ダメー!」

「ふぅん……まだ......ですか......

 なら待ちますね、いいですか?待つ、ですよ」


……


その後あーだこーだ理由をつけて礼多を家に帰したものの、

通与はその後ボーっと夜を過ごした。

惰性で作ったカップ麺だけで腹がいっぱいだ。


「これで明日からの学校どうすんだ……!?」


がんばれ通与

礼多のこともあるが、

今日投稿したやつが後々わりとすごいことになるぞ。




ここで一区切り 第一部完!




────────────────────


次回?予告

新たな関係になった通与と礼多

投稿作の反響がヤバいことになったり

校誌をめぐってトラブル発生?

次回 5万字「小瀬、オギャる」


────────────────────


用語まとめ


小瀬(おぜ) 通与(かよ)

私立文王女子学園高等部2年。

美術専科。

特に水墨画に秀でる。

微エロ絵描き「オズ(OZ)」の裏アカウントを持つ。

背は低い。

着物女子。

礼多と恋人未満共同創作者以上の関係になった。


須堂(すどう) 礼多(れた)

私立文王女子学園高等部1年。

詩歌専科。

特に俳句に秀でる。

微エロ小説書き「レターパックマン」の裏アカウントを持つ。

背は高い。

ギャル(2010年代基準)。

通与と恋人未満共同創作者以上の関係になった。


分所(ぶんしょ) 文匁(あやめ)

私立文王女子学園高等部2年。

出版専科。

特に校正に秀でる。

通称『鉛の女』

川瀬(と書いてリバーサイドと読む)の人気メイド「アヤ」でもある。

普段は髪をカチューシャでかき上げ、

赤色のナイロールの眼鏡をかけている。


・川瀬(と書いてリバーサイドと読む)

メイド喫茶。

文王市のほぼ市境にある。

すべてが店長の川瀬暝(かわせ めい)の趣味で作られた店で、

クラシカルメイドと豊富な種類のコーヒーと

安くて量が多いメシが売りの店。


────────────────────

ここで一旦区切りといたします。


またネタがまとまったら4~5話前後で新シーズンを始める予定です。

よろしくお願いいたします。

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