助ける助手はスケテてほしい
短編「透けてる助手はタスケテほしい」の続編です。ページ上部「すけてる助手はたすけてほしい」シリーズから見る事が出来ます。是非どうぞ。
「犯人は……貴方だ」
探偵の私は、目の前の幽霊に、犯人である証拠を出し示していく。
平静を装っている幽霊であるが、目線はあちこち忙しい。
『やだなあ、探偵さん。私は貴方の助手ですよ? それに他の方が犯人である証拠も、幽霊である私がひっそりと探して揃えたじゃないですか』
「そうですね。貴方は、幽霊である事を活かして証拠を揃えてくれた」
私は幽霊と意思疎通ができる探偵だ。そして、その事を利用して幽霊に助手を頼んでいる。
幽霊ならば、霊感の無い人間には感じる事は出来ないし、尾行や見張りにうってつけなのだ。
そうやって集めた証拠を犯人に突き出し、事件を解決していく。
「でも、幽霊であるから、その姿で人を欺けるからこそ、集めた証拠の真偽の見極めは、慎重さを必要とされる。そして、君の集めた証拠は、君に都合の良い証拠でしかない」
そう切り捨てた所で、駆け付けた市役所の職員が幽霊を連行していく。
これで、一連の事件は、一応の着地を見るだろう。
『く、クッソォ!! 探偵、お前!! 裏切りやがったなッ!』
暴れながら、幽霊は大声で喚き騒ぐのを見ずに、私は、窓から見える交差点の隅に一つ、目配せをしてから、深く溜息をつく。
「裏切るも何も……最初から、貴方は助手ではありませんでしたからね」
◇
「……今回は、交差点の地縛霊を、その、助手にしたとか。何でもありですね」
市役所の職員が、今回連行した幽霊の成仏報告書を差し出し、真剣な顔でこちらの様子を伺う。目の前にある緑茶には手を付ける様子もない。
「その地縛霊が、成仏の列の妨げになっていると聞いたからね。その地縛霊の声を聞いたまでだよ」
「……今回は、本当に助かりました」
幽霊の成仏には、現実世界の道路が使われる。幽霊は道路で列を成し、輪廻の入り口、霊山へ向かう。
その成仏の列の妨げを解決するのが、市役所除籍係の職員。市民のスムーズな成仏を仕事としている為、今回の事件にも出動頂いた。
「ん……しかし……助手に出来る幽霊と、助手に出来ない幽霊というのがあるのですね」
「そうだね。今回の犯人幽霊は、悪事が過ぎて悪霊という誰でも見える実体を持ちつつあった。私の助手は、スケテる事が条件だからね」
助手という漢字2文字を音読みすれば<じょしゅ>だが、訓読みをすれば<スケテ>とも読む。
だから私が雇う助手は、透けてる事が条件なのだ。
プルルルル
「あ……すみません、電話……失礼します。え……猛スピードで走る幽霊が出ている……?」
その会話を盗み聞きしながら、私はお気に入りの紅茶を一口含む。そのふくよかな苦みが、いつもより苦く感じたのは、これから起こる問題の難しさを予見していた、のかもしれない。




