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ABC詩集シリーズ

聞かせて君の冒険物語 小さな村から旅立ったかつて病弱だった少年、ものすごい経験をして帰ってくる

作者: 仲仁へび




 ひさしぶりに、一人の冒険者がこの村に帰ってきた。

 子供の頃、私の後を「お姉ちゃんお姉ちゃん」って言いながらついてきていた、あの弟の様な子だ。


 冒険者になるって言った時、だいぶ反対されてたな。


 病弱だったから、周りの皆はとめてたけど。


 でも、私は応援したんだ。

 だって、それがあの子の夢だったから。


 心配はするよ。

 でも、夢って大切なものでしょ。

 それにあの子は、とても本気の目をしていたから。


 ただの憧れてやっていける世界じゃないって知ってたけれど、それでも冒険がしたいって言っていたから。


 だから、応援したの。


 そしたら、五年後にこんなに逞しくなって帰ってきちゃって。


 しかもなんだか、可愛い女の子がいっぱいだよね。


 むぅ、モテモテだ。


 そんなだったら、もう君のお姉さんは必要ないよね?


 えっ、そんなに焦らなくても。


 冗談だってば。


 それで、どんな冒険してきたの?


 早く聞かせて。


 ふむふむ。


 どれから聞きたいって?


 十メートル以上もある大蛇に飲み込まれた話?


 飛行魔法なし、飛行用のアイテムもなしで、上空300メートルから落っこちた話?


 えっと、地獄に行って死にそうになってた人を連れ帰ってきた話?


 そのついでにコロッと死んじゃいそうになったけど、妖精の女王様に助けてもらった話?


 神様のふりをしていた邪神を、行方不明になってたお姫様と一緒に倒しちゃった話?


 もう、冗談ばっかり。


 え?


 本当?


 本当の話なの?


 全部?


 全部の全部が?


 えぇー……。


 うん。


 分かった。


 一応信じるけど。


 一つ言って良いかな。


 強くなったね、おめでとう。


 でも、無茶ばっかりじゃない!


 馬鹿っ!


 一言じゃないって?


 あれこれ言わない。

 つべこべもなし。


 きちんと、反省して。


 はぁー、病弱で慎重だった君はどこに行っちゃったのかな。


 そんな冒険ばっかりして、ある日突然ころっと死んじゃっても不思議じゃないんだからね。


 そんな事になったら、悲しいじゃない。


 私、毎日泣いちゃうかもしれないわよ。


 べ、べつに泣いてなんかないわよ。


 そんな泣き虫扱いしないで!


 子供の頃は、君の方が泣き虫だったじゃないの!


 うん。


 うん。


 困らせてごめんね。


 安心した。


 ありがとう。


 何だか変な気分。

 子供の頃は、私が君の頭をなでてあげてたのにね。


 もう行っちゃうの?

 泊まっていけばいいのに。

 また、冒険に出掛けるんだ。


 だったら、約束して。


 無茶はしない。


 そして、また必ずここに帰ってくる事。


 そんなの当たり前?


 どうして。


 だって、「俺の帰る場所はここだから」って?


 もう、そんな真剣な顔して言うなんてずるい。


 分かった、信じて待ってます。


 だから、また聞かせてね。


 君の冒険物語を。


 どんなに無茶苦茶でも、どんなに大変な内容でも、どんなに辛い内容でもいいから。


 他の誰でもない、君の口から。


 聞かせて。



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