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Dr.Tの書庫漁り【一頁完結型短編の何か】

人形師と絡繰り人形【一頁完結型童話調・T書庫シリーズ】

作者: 【語り部】Dr.T

__幕間


 ここに一冊の本がある。タイトルは掠れてしまっている。

 それは、私たちにとっては物語であるかも謎らしい。

 しかし、コレが残されているという事は彼は確かに存在していたのは確かだ。

 そういう世界らしいからね。ココは。

 さて、短いが少しばかり話に付き合って貰おうか。

 弟よ。ココの書庫は蔵書がいっぱいで私はとてもわくわくしている。

 どうせ少ししたら存在が曖昧になって私たちは消えてしまうらしいからね。

 ちょっと位、盗み見たところで罰は当たらないだろう。

 それではDr.Tの読み語りの始まり始まり。



__


 ある所に人形師が居ました。その人形師は様々な絡繰り人形を作ってました。

 ずらっと部屋に並んだ絡繰り人形は、人形師を尋ねる人々を驚かせました。


 人形はどれもが精巧でまるで人をそのまま小さくしたような作りだったのです。一つまた一つと売れていく人形を見て人形師は記録に残す事にしました。


 時代にそぐわぬ絡繰り人形、撮影師。自動で皆の絵を写す。


 人形師は、その人形を作り、命を吹き込みました。果たして絡繰りは動作し、まるで生きているかの様に目の前のモノを模写します。人形師は模写された絵を見て物足りなさを感じましたが気にする事はありませんでした。


 ある日、人形師はとある人形の製作に取り掛かりました。喜怒哀楽、即ち感情を表現した人形です。


 人形師は喜びを表現した人形を作りました。口はお皿に山なり人形。

 絡繰り人形、撮影師。作られた喜びの人形を自動で絵に写します。

 人形師はその絵を見て破りさりゴミ箱に。喜びが伝わらない。絵の人形はにっこりしながら虚空を見つめる。


 人形師は怒りを表現した人形を作りました。口を結んで眉よせ人形。

 絡繰り人形、撮影師。作られた怒りの人形を自動で絵に写します。

 人形師はその絵を見てくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に。怒りが伝わらない。絵の人形は眉を顰めて虚空を見つめる。


 人形師は哀しみを表現した人形を作りました。口をへの字に眉下げ人形。

 絡繰り人形、撮影師。作られた哀しみの人形を自動で絵に写します。

 人形師はその絵を見て無言で割いてゴミ箱に。哀しみが伝わらない。絵の人形は涙を垂らして虚空を見つめる。


 人形師は楽しさを表現した人形を作りました。口は大きくぱっちり人形。

 絡繰り人形、撮影師。作られた楽しさの人形を自動で絵に写します。

 人形師はその絵を見て彫刻刀を突きさしゴミ箱に。楽しさが伝わらない。絵の人形はただ真っ直ぐに虚空を見つめる。


 人形師は納得出来ず。満足出来ず。槌を振るって作り続ける。

 撮影師、ただひたすらに絵を写す。


 動きの止まった人形師。写し続けた撮影師。

 撮影師が出来るのは、ただひたすらに写す事だけ。


 音のならない工房を疑問に思った家主が見に来た。

 倒れ伏してる人形師、つもりに積もった紙に埋もれた。

 動きの止まった撮影師。紙が無くても写し続ける。


 運び出された人形師。家主は人の居なくなった部屋を眺める。4つの人形、家主を見つめる。

 一つは喜び、一つは怒り、一つは哀しみ、一つは楽しさ。

 撮影師は無表情で写し続ける。家主は落ちてる紙を集めた。それぞれ4つの人形が描かれる。

 家主は首を傾げる。どう見ても一枚一枚表情が違っている。

 筆を止めた撮影師。家主は視線を彼に向けた。彼はやり切ったように微笑んだ様に見えた。



__


 人形師は工房に戻ってきた。出迎えるのは絡繰り人形、撮影師。その尊顔は無表情。

 自分が助かったのは、この人形が紙を自分に乗せたから。


 人形師は集められた絵を眺める。一枚一枚、絵が違う。

 絡繰り仕掛けの複写人形。同じ物を書いているのに違うだなんてあり得ない。


 最初は人形、最後は人間。絡繰り人形、撮影師。腕を振り上げ筆を振るう。

 それしか出来ない絡繰り人形。一枚の絵を描いた。


 人形師を写した絵。それは絡繰り人形を完成させた昔の人形師の顔だった。


 


__終幕


 さて、この物語の主人公は人形師、ではなく絡繰り人形の方だった様だ。

 言い換えて見ればコピー機のような人形をこの人形師は作ったのかな?

 人形師は喜怒哀楽の人形を作ろうと思ったけど絵を見て違うと感じているが……

 人形と絵の乖離の問題か?はたまた彼は人形を見る事は出来なくなったか。

 しかし、コピー機の筈なのに勝手に動き続けて画力も成長するとはね。


 微笑んだって事は喜怒哀楽の表現をマスターしたと言う事なのか……

 最終的に昔の顔を書いて来るというホラー要素満載だ。そもそも時代にそぐわぬって事は写真すら無い時代なのだろう。人形師が気絶しても動いてたって動力は何から供給してたとか色々気になる点があるな。


 電気で動くタイプかな。命を吹き込んだって通電したって事だろうか。


 成程分からん。情報が少なすぎるな。タイトルを決めるとしたら……絡繰り仕掛けの撮影師かな。


 さて、次はどの本を読もうかな。

シリーズとなっていますが小噺の方は何処からでも読めます。


絡繰り人形、撮影師。人形師は彼を相棒として作ったようです。

昔から大事にされた人形には命が宿るとも言われていますね。

人形師が倒れた後書いた紙が彼に積もる事で人形師は凍死せずに済みました。

撮影師の微笑みは彼が助かった事にかも知れません?それともDr.Tの言った通りでしょうか?


さてさて、これにてこの小噺は終わります。それでは皆様また次回。

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