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現実世界恋愛短編集

俺が諦めた相手は幼馴染みの美少女~彼女は幼馴染みのイケメンに恋をしている~

作者: 来留美

 俺の名前はカイ。

 俺には幼馴染みが二人いる。


 一人は男。

 名前はレン。

 こいつは誰が見てもイケメンでモテる。

 でもイケメンだからといって調子にのったりはしない。

 性格までイケメンなんだ。


 もう一人は女。

 名前はコト。

 彼女は美少女で目を離すと男にすぐ話しかけられる。

 簡単に言うとナンパされる。

 だから俺は彼女を守る為に彼女から離れない。

 それはずっと変わらないと思っていた。


「カイ。私のバッグどこに置いたか分かる?」

「コトのバッグなら玄関に置いてあったと思うけど?」

「私ったら、また玄関で靴を脱ぐ時にバッグを置いてそのまま忘れちゃったんだね」


 コトはいつも玄関に何かを忘れる。

 前は携帯を忘れていたし、俺に参考書を借りてそのまま玄関に忘れて帰った時もある。

 そして今日もコトは玄関にバッグを忘れて俺の部屋に遊びに来ていた。


「今日はレン君はいないの?」

「レンは生徒会長だから忙しいんだってよ」

「そうなの? せっかく三人お揃いのキーホルダーを買ったのに」

「コト。そのキーホルダーを俺とレンにつけろなんて言わないよな?」

「えっ。そのつもりだけど?」

「そのよく分からないキャラクターをつけろと?」

「これは今、大人気のキャラクターの野菜忍者だよ?」

「野菜忍者ってなんだよ。野菜に手と足があるだけじゃん」

「何、言ってんのよ。この大根忍者が言う言葉がいいのよ」

「またいつものか?」

「 “俺は大根忍者。白い俺はどんな色にも染まれる” 」

「 “だからお前達は俺には勝てない” 」

「レン君」


 レンが俺の部屋に入ってきてコトの好きな台詞を途中から言った。

 コトは嬉しそうに笑った。

 コトはレンが好きなんだ。

 コトからレンが好きなんて聞いたことはない。

 でも、この笑顔を見れば分かる。

 コトはレンに恋をしている。


 美少女とイケメンがくっつけば誰も文句は言わないだろう。

 だから俺は彼女を諦めた。

 俺なんかが彼女と釣り合う訳がないから。


「レン君。生徒会の仕事は?」

「終わったよ。コトが今日は渡したい物があるって言ってたから早く帰って来たんだ」

「待ってたよ。はい、これどうぞ」

「何?」

「レン君には大根忍者をあげる」

「主人公をくれるの?」

「うん。そしてカイには(ねぎ)忍者だよ」

「全然嬉しくないんだけど」


 俺は仕方なくコトから(ねぎ)忍者を受け取る。


「カイ、(ねぎ)忍者は格好いいんだぞ。なあ、コト」

「そうだよ。(ねぎ)忍者には大切な恋人がいるんだから」

「そんな設定まであるのかよ」

「それでコトはまさか、あの子?」

「うん。“トマトくのいち”だよ」

「トマトは女の子なんだな」


 二人は楽しそうに話している。

 野菜忍者への想いの温度差が俺とは違いすぎる。


「カイは何も知らなくていいからね。絶対、野菜忍者の話は見ないでよ」


 そう。

 俺は野菜忍者のことを全然知らない。

 コトとレンは知っているが、コトには見るなって言われるし、興味がないから見ない。


 俺達はバッグにこの野菜忍者達をつけた。

 コトが嬉しそうにみんなお揃いだねって言ったから一時はつけててやろうと思った。


 ある日、俺は電車に乗っている時に子供に(ねぎ)忍者のキーホルダーを見つけられ指を差された。


「あっ、(ねぎ)忍者だ。でもあの子はいないの?」

「あの子?」

「うん。恋人だよ」


 俺よりも野菜忍者に詳しそうな子供に訊いた。


「恋人って?」

「えっ、お兄さん知らないの?」

「うん」

「教えないよ」

「何で?」

「二人は秘密にしてるから」

「えっ」

「絶対に言わないからね」


 子供はどこかへ行った。


 気になる。

 (ねぎ)忍者の恋人が気になる。

 どうしよう。

 コトに訊こうかなあ。

 俺はコトの家へ向かった。

 コトの家は俺の家の隣。


「コト」


 俺はインターホンを押してコトを呼ぶ。


「どうしたの?」


 コトが家から出てきた。


(ねぎ)忍者の恋人って誰?」

「ダメ、教えないよ」

「気になって仕方ないんだ。電車で子供に言われたんだよ。恋人は秘密にしてるって」

「そうよ。二人は身分が違うからバレたら離ればなれにされちゃうの」

「そう。だから恋人は誰なんだよ」

「教えない」

「何でだよ」

「カイは知らなくていいの」

「なんだよ。レンはいいのに俺はダメなのかよ」

「カイ?」


 コトは心配そうに俺を見る。


「コトはレンばっかり。なんなんだよ」


 俺はイライラしながら自分の家へ帰った。

 コトに八つ当たりをしてしまった。

 自分の気持ちを伝えることもできない状況にイライラしていた。

 諦めたはずなのに。

 まだコトを好きなのか?

 レンに勝てる訳ないのに。


 次の日、俺のバッグに(ねぎ)忍者がいなかった。

 昨日は電車の中ではいたはずだ。

 まあいい。

 あんなのいらない。



「あれ? カイ。(ねぎ)忍者は?」

「昨日、失くした」

「嘘でしょう? どこで?」

「分からないけど電車の中ではあったから、降りてから落としたのかも」

「探さなきゃ」

「俺はいらないから探さなくていいよ」

「何でそんなひどいことを言うの?」

「買ってきてくれたのはありがたいけど俺は野菜忍者に興味はないんだよ」

「カイは知らなくていいの。でもちゃんと持っててほしいの」

「コトの言っている意味が分からないんだよ。俺じゃなくてレンにあげればいいんだよ」

「レン君じゃダメなの。カイじゃないと、、、」

「もう、俺を解放してくれ」

「カイ?」

「もう、俺は疲れたんだよ」


 そして俺は一人で学校へ行く。

 コトを置いて。



「おい、カイ」

「レン? なんだよ。そんなに焦って」

「コトは?」

「はあ?」

「コトが学校に来てないんだ」

「えっ」

「コトと一緒に来たんだよな?」

「それがちょっとケンカをしてコトを置いて学校に来たんだ」

「お前、何してんだよ。コトは俺達が守るって決めただろう?」

「そうなんだが。ちょっと色々あって」

「何があったんだよ」

(ねぎ)忍者が失くなったって知ってコトが探すって言うからいらないって言ったんだ」

「お前、コトの気持ちを考えたのか?」

「コトはレンのことばかりだから俺に言われたって気にしないだろう?」

「お前。何、言ってんの?」

「はあ?」

「コトはお前のことばかりじゃないのか?」

「どこが?」

「いつもコトはお前に助けを求めてたじゃないか」

「助け?」

「ケガをした時、いじめられた時、いつもお前の部屋に遊びに行ってただろう?」

「そう言えばそうだな」

(ねぎ)忍者はコトのカイへの気持ちなのに」

(ねぎ)忍者が?」

「これを見ろ。コトには見せるなって言われたけど」

「 “野菜忍者~第六話 秘密の二人~” 」


 俺はレンに動画を見せられた。

 野菜忍者の話だった。

 それを見て俺は教室を出た。

 コトを探さなくてはいけない。

 コトに伝えなければいけない。

 ごめんコト。


 俺は駅へ向かう。

 もし、コトが(ねぎ)忍者を探しているなら駅だと思う。

 やっぱりいた。

 下を見ながら探している。

 そんなに大切なのか?

 そんな物がなくても俺は、、、。


 コトを見ていたら男に声をかけられていた。

 ナンパだ。

 俺はコトの所へ向かう。


「コト」

「カイ」


 俺がコトに声をかけると男はすぐに去っていった。


「コト、ごめん」

「カイ?」

「俺、コトのことを何も考えてなかったよ」

「どうしたの?」

「見たよ」

「何を?」

「野菜忍者」

「嘘」

(ねぎ)忍者の秘密の恋人」

「レン君が?」

「ああ。秘密の恋人はコトだったんだな」

「うん」


 秘密の恋人はコト。

 秘密の恋人はトマトくのいち。


「それって俺のこと好きってことでいいよな?」

「うん」

「俺もコトが好きだよ」

「えっ」

「俺はずっとコトが好きだったよ」

「嘘。だって私とレン君をくっつけようとしてたでしょう?」

「それは諦めてたから」

「諦める?」

「コトはレンが好きだと思ってたんだ」

「だから諦めてたの?」

「そう。レンに勝てる訳ないからな」

「バカね」

「本当だな。バカでコトを傷付けて。ごめん」

「それでも私は(ねぎ)忍者のカイが好きよ」

「俺も、トマトくのいちのコトが好きだ」


 そして俺達は電車に乗って家へ帰る。

 レンに学校を休むと先生に伝えてもらうように言っていたから。


「あっこの前のお兄ちゃん」

「あれ? この前の野菜忍者が好きな子?」

「この前、(ねぎ)忍者を落としていったから探してたんだよ」

「えっ」

「これ返すね。トマトくのいちが心配するから、早く返したかったんだ」

「秘密の恋人のトマトくのいちだろう?」

「あっ。秘密だよ。誰にも言っちゃダメだからね」

「君が秘密を教えてくれたから俺も秘密を教えてあげる」

「えっ、何?」

「この隣にいる彼女は俺のトマトくのいちなんだ」

「えっ、本当だ。トマトくのいちがついてる」

「秘密だぞ」

「うん。秘密。トマトくのいちと(ねぎ)忍者が恋人なのはね」


 そして俺達は子供と別れ、電車を降りる。

 電車を降りて俺達は自然と手を繋ぐ。


「ねえ、あの美少女の彼氏すごい普通じゃない? 似合わないよね?」


 女子高生が俺達を見てそう言う。

 分かってるんだよ。

 好きになったんだから仕方ないだろう?


「ねえ、見てよ二人のバッグについてるの」

(ねぎ)忍者とトマトくのいちじゃん。それなら仕方ないね」

「そうよね。顔なんかじゃないものね。彼はすごく優しいんだろうね。いいな、(ねぎ)忍者」


 (ねぎ)忍者ってそんなにいいやつなのか?

 今度ちゃんと野菜忍者を見てみようかな?


(ねぎ)忍者は片目が眼帯で隠れてるの。死闘で目を犠牲にしてトマトくのいちを助けたの。優しくて、格好よくて、トマトくのいちの大切な人なの」


 そうコトは言って俺に笑いかけた。



 しかし、俺は何故、コトがレンのことを好きだと思っていたんだろう。

 そうだ、レンが大根忍者の台詞を言った後のコトの嬉しそうな顔がそう思わせた。


「コト」

「何?」

「何でレンが大根忍者の台詞を言った後、嬉しそうにしてた訳?」

「あっ、それは。レン君の声が大根忍者の声にそっくりだからよ」

「声が?」

「うん。大根忍者が私の目の前にいるみたいで嬉しかったの」

「それが俺の勘違いする原因だったのか」

「えっ、そうだったの? でもレン君には大切な人がいるんだよ。私しか知らないと思うけど」

「えっ何で俺にも教えてくれないんだよ?」

「恥ずかしいって言ってたよ。カイに言ったら絶対にバカにされるって」

「なんだよそれ。まあ、バカにするだろうな」

「レン君が可哀想だよ」

「コトは俺のことだけを見ててよ。俺はもう勘違いしないし、諦めたりしない。俺はコトの隣にずっといるって決めたから」

「うん。私を守ってね。(ねぎ)忍者さん」


 彼女は可愛い笑顔を見せてくれた。

 彼女の笑顔は俺の癒しだ。


 俺は彼女を諦めたはずだった。

 しかし、そんな簡単に気持ちは諦められない。


 俺はコトと一緒に野菜忍者の最終回を見た。


「俺はこれからも戦い続ける。だって俺は大根忍者。白い俺はどんな色にも染まれる。だからお前達は俺には勝てない」


 大根忍者が最後の台詞を言った後、トマトくのいちと(ねぎ)忍者が手を繋いで並んでいた。

 秘密の関係の二人は堂々とみんなの前で手を繋いでいた。

 ネットではこの二人は結婚したのだと噂された。


 俺達もそうなるのかもしれない。

 そうなればいい。

 隣で可愛い笑顔を見せてくれる彼女を秘密の恋人になんてしたくない。

 俺の恋人だと堂々と胸を張って言いたい。


「俺の大切な恋人」

読んで頂きありがとうございます。

彼女が『野菜忍者』の登場人物に自分達を重ねるように、皆さんも一度はしたことないですか?

私の作品を読む時も、自分を重ねて読んでもらえるともっと楽しく読んで頂けると思います。

この作品で出てくる『野菜忍者~第六話 秘密の二人~』の作品を書きました。

気になる方はそちらもお読み下さい。

(ねぎ)忍者は優しくて格好いいです。

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― 新着の感想 ―
ハピエンで終わったよかったです( ´∀` ) 最後どうなるのかハラハラしてしまいましたわ拗れてどうかなってしまうんじゃないかと(;゜Д゜)
[一言] これはコトが悪いとしか…そんな回りくどい事したら、カイには逆効果になるとは思わなかったんだろうか…?
[一言] 大根忍者も幸せになってほしいです。(^_^) 楽しく読ませていただきました。 学生時代を少し思い出しました。
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