第三話 勇者の自覚
「ジャーク教団め、絶対に許さん!」
奴らの教義や主義主張なぞ知らん、人々や世界に害を為すなら叩き潰す。
家を壊され財を奪われ家族や仲間を殺されて傷つき嘆く人々。
サニーカイザーは与えられた神の権能を使う事にした。
額の刻印を輝かせ、村を優しい金色の光で包む。
その光は、生きている者は病や傷を癒し身体欠損も修復し
強靭な肉体へと変化させた。
死者は死体が金の粒子に分解された後、再構成されて魂を天使へ
と生まれ変わらせて昇天させた。
水や空気の汚れは神の炎の優しき熱が清めた。
「ひとまずの応急処置は済んだな、後は教団の力を借りるか」
サニーカイザーの思いつく範囲で神秘の力でできる事はした。
後は金や政治の力での村の立て直しだ、他にも被害にあった所の調査
もあるがその辺りはサンサン教の協力を仰ごう。
「ありがとうございます勇者様!」
筋骨隆々の屈強な老人がサニーカイザーにひれ伏したのに続いて
村人達が全員サニーカイザーへ五体投地で拝礼した。
「こちらこそ、助けに来るのが遅れて申し訳かった!」
サニーカイザーも村人達に対してひれ伏す。
「頭をお上げください勇者様、あなたは我らを救って下さった」
村長に言われて立ち上がるサニーカイザー。
「そう仰っていただけると俺も救われます」
素直に答えるサニーカイザー。
「村の復興は必ず成し遂げます、あなった様から戴いた力で」
村長ら村人達が一斉にポージングをし体から金色の光を放つ。
後にその村は輝きの村、シャイニー村と呼ばれる事となった。
カイザーホイールでベーグルの街へ帰還したサニーカイザーは
変身を解除する。
「お帰りなさいませ勇者様」
体形に合った白い法服姿の司祭がハルヒコを出迎える。
「司祭さん、サンサン教の本山は何処でしょうか?」
協力をえるには総本山に出向いて教団のトップと話した方が良い。
「村の復興の件でしょうか? 本山は南の火山都市ボルケです」
司祭が答える。
「それもありますが、サンサン教の全面協力を得る為にも一度
教団の教主と話し合いたいんですよジャーク教団に聖戦を挑みます」
ハルヒコは決意した、ジャーク教団を滅ぼすのは自分の勇者の
責務であり奴らを倒すためにこの世界に生まれ落ちたのだと感じた。
女神ソレイユから信徒達が力を貸してくれると聞かされてはいるが
それならばなおさら会って話をしておかないといけないとハルヒコは思った。
「聖戦ですか! 勇者様のお言葉とあらば喜んで!」
バイセップアップのポーズを取る司祭。
「ああっ! まずは俺があちこちに行って奴らの悪事を潰して回るので
その支援を頼みます、各国とも相談しつつ決戦に備えて準備を!」
司祭が今すぐ飛び出しかねなかったので止めるハルヒコ。
「確かに、聖戦となれば国家の協力や備えは不可欠ですからな」
ハルヒコの言葉に納得する司祭。
「敵も密かに動くならこちらも密かに行きましょう、俺が隠れ蓑になります」
サニーカイザーと言うヒーローが表立って動けば敵の目はそちらに行く。
自分を囮にして敵を引き付けてその間に決戦の準備をしようとハルヒコは
絵図を描いた。
「それでは、教主様に魔法で連絡を送りますので暫しお待ちください」
司祭のアポイント待ちという事でその日はハルヒコは下宿に戻った。
自室のベッドで眠りにつくハルヒコ。
夢の中で女神ソレイユと再会した。
「ハルヒコ♪ 勇者としての活躍、誇らしいです♪」
ソレイユの周囲では黄金に輝くマッチョな天使達が向日葵を
育てたり石造りの神殿を建設したりと活き活きと働いていた。
「ああ、敵を前にして自覚できた勇者の力はジャーク教団
みたいな奴らを倒して人々を助ける為にあるんだって」
自分の手を見るハルヒコ、その手は熱く燃えていた。
「その意気ですハルヒコ♪ 火山都市で私の分体、現世での
あなたのお嫁さんがあなたを助けるべく待ってます♪」
微笑むソレイユ。
「よ、嫁ってのが何と言うかまだ早い気がするが覚悟するよ」
現代日本時代も恋などろくにしたことがなかったのに嫁と言われても
どうすればいいのかわからないハルヒコだった。
「大丈夫です、彼女はもう一人の私で素敵な娘です♪」
自画自賛するソレイユ、確かにソレイユは美しく温かい素敵な人だが
とハルヒコが思っているとソレイユがハルヒコに抱き着いてくる。
「大丈夫です、私達の愛は永遠です彼女は私なので全力で愛し合って
子孫繁栄しましょう♪」
ソレイユが悪戯っぽくささやきハルヒコは赤面する。
「こっ恥ずかしいこと言うなよ!」
ハルヒコはシャイだった。
「ハルヒコ、可愛いです♪ やはり神の国に連れて帰りたくなりました♪」
「いや、それは現世で勇者として為すべき事をしてから!」
照れるハルヒコは女神ソレイユに可愛がられて、現実へと戻って来た。
夢から覚めたハルヒコ、大家が用意した朝食を食い身支度を済ませる。
「大家さん、火山都市ボルケに行くのでしばらく留守にします」
と大家に話をする。
「ああ、行っておいで管理は任せな♪ 家賃はサンサン教から払って貰ってる
から心配しなくていいよ♪」
大家の返事に礼をしてハルヒコは軽い手荷物程度で、下宿を出て行く。
勇者の自覚を身に付けて、ハルヒコはサンサン教の神殿へとむかった。
「お待ちしておりました、教主様からぜひお越しくださいとの事です」
訪れた神殿で司祭からアポイントが取れたと聞かされる。
「ありがとうございます、それではカイザーホイールを
使わせていただきます」
「ああ、お待ちください勇者様! 路銀と身分証をどうぞ」
司祭が金の入った袋と金環日食をイメージした金の輪をハルヒコに渡す。
「おっと、ありがとうございます」
改めて司祭に礼を言い神殿の地下の宝物庫に行きカイザーホイールに跨る
ハルヒコ、変身しなくても炎の馬が出現し通路が開く。
「よし、行くぜ♪」
カイザーホイールを走らせて、ハルヒコは旅立った。




