「無能」
周りの音が聞こえない。
思考はとっくに停止してしまってる。
ちょっとまてよ・・・・・・・・・・。
”謎系”って・・・・・・。
なんだよそれ・・・。
思考停止していると、『鏡』が異能の内容を俺に説明する
『レン・キリシマ ”異能” 【怪化】 倒した怪物に変身できる。』
いや、変身ってなんだよ・・・・。
「お、おいキリシマ・・・・。」
さすがの鬼教官も動揺が隠せないのか、声が揺れている。
俺は黙って下を俯くことしかできずにいた。
そりゃ当然だ。
わけもわからないような異能をもらって、人生を潰されたんだ。
悔しくて、情けなくて、何もできずにいた。
『鏡』は異能の内容までは言わないものの、何系統かははっきりと聞こえるようにする。
”異能の儀”はこれでもれっきとしたれっきとしたイベントの一つである。ここ数年は一人たりとも”謎系”が出現しなかったので、問題もなかろうといった声もあり系統だけは伝わるような仕様になっている。
(終わった・・・・。)
俺はそう思った、これからの人生どうすりゃいいんだ・・・。
状況を理解した周りからは無責任な笑い声や、声が聞こえる。
恥ずかしくて、ただ恥ずかしくて情けなかった。
心が痛い、視界がぼやけ始めるがグッと我慢をする。
「お、おい・・」
教官の声も届かないまま俺は自分の席に戻る。
周りからは白い目で見られたまま、誰の声も聞こえなかった。
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今日は”異能の儀”だけでそれぞれ帰宅といった予定だったので各々帰りの準備をしていた。
言わないでもわかるように俺は当然ボッチであった。
俺の方をちらほらみて嘲笑する連中の声が嫌に耳に残っていた。
「キリシマ、ちょっと来い。」
唐突に呼び出された方を見てみるとレイコ教官が俺を呼んでいた。
「はい」
と、一言だけ気のない返事をして教官についていく。
廊下を無言であるていく。
このステアード学園は木造で建築されており、上級魔導師たちの精密な計算によって作られているのか、百年以上建っているというのに崩れるなどといった心配もない。
校舎内は生徒たちの日々の努力があってなのかとても綺麗にされている。
「中には入れ。」
辺りを見回していると、『生徒指導室』といった標識がある教室に俺は入れられた。
中は机が二つあるのみで余計なものは置かれていない、寂しげな部屋だった。
「話ってなんですか?」
「わかっているだろう、お前のことだ。」
「ですよね。」
短い会話の中で俺は気づく。
教官が話したいのはおそらく、学園退学のことだろう。
俺の異能は、はっきりいって「無能」である。無能な生徒を育ててもおそらく意味はない、いや、意味はあるか。ステータスは伸びるからな。
ステータスというのは、異能を授かるとともについてくるものである。
その力は絶大であり、授かっている者と、授かっていないものでは約2倍の開きはあると言われている。
それを、怪物討伐や鍛錬、または勉学によって鍛え上げることによってどんどん強くなっていく。
力が蓄えられていくと、レベル、といったものが上がる。
これは簡単にいえば強者の印である。
下級のものが1~29レベル 中級が、30~59レベル 上級となれば60~80レベルとなる。
それ以上になると、この世に12人しかいないと言われる超級と呼ばれ、超人、と認定される。
しかし、それはあくまでも、使える異能があった上での話である。
というのも俺のような「無能」と、使える「有能」では約10倍の開きがあるのだ。
なので俺がここに残っても、ある程度は強くなる可能性があるが、それでも10といった数字はでかい。
だから俺に退学しろ、と教官は言いたいのであろう。
しかし、その俺の考えを見透かしているかのように教官は、口角を上げて、ニヤリ、と笑った。
そしてたった一言だけ俺に言い放った。
「最強になれ。」