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混沌世界の空の下  作者: yukestar
第1章
5/6

3話

いやー、遅れてすみません。

完全に投稿すること忘れてました。

ちなみに次話の投稿予定日は未定です。いつも通り不定期です。

「この鬼畜が!死ね、死ね、死ね!」


「鬼畜じゃなくてかかり先生っすよ。次期公爵様なんですから、もうちょっと慎みを持つべきですよ~」


「うるさい、このクソ鬼畜が!そんな性格してるから彼女が一向にできないんだよ!」


グサリ、と何かが鬼畜カカリの心に刺さったような音がしたが、俺は気にしない。

あの地獄のような訓練が一週間たった今、俺は短剣スキルを自力で会得した。といっても、鬼畜によると俺は知ってる中では一番早いらしく、その次に早かったのが一年ぐらいだったそうだ。

まあ、生まれた時から持ってる人とかもいるが、そういう人たちはカウントしない。


短剣スキルを会得したと同時に、俺は武技アビリティである≪乱舞≫を覚えた。

≪乱舞≫とは武器をただひたすら連撃させるだけの武技なのだが、これが意外と強力で、普段の連撃の倍以上の速さと強さを持てるのだ。

ただ、あまり自由が利かないのがそんなところだ。といっても、連撃の場所を変えることは可能で、ピンポイントとはいかないが、狙うことはできる。ピンポイントの連撃をしたければもっと短剣スキルのLvを上げなければいけない。


「おりゃおりゃおりゃ!」


「はいはいはいはい、武技ばっかりに頼ってちゃあだめですよ~」


「黙れこの毎年恋愛運がプラスに上がらない鬼畜男!」


グサリ、とまた何かが鬼畜の心に刺さったような音がしたが、俺は気にしない。

その一瞬のスキを突き、俺は武技を解いて左の短剣を脇腹に勢いよく振りぬく。

とっさの判断でそれを防ごうとしたのだろうが、それはおとり。俺は右手に持っていた短剣を上から下に落とすように振るう。

それを余裕そうな顔で、だがなぜか笑っていない鬼畜が止めるが、それもおとり。本命は———砂を蹴り上げ砂埃を起こし、背後に回る、ように音を出して正面からがら空きな鳩尾に掌底を打ち込む。その際に短剣を鬼畜の後ろに投げてしまったが、それはしょうがない。それで鬼畜の背後に音を出さなければ意味がないのだから。

しかし、さすがは公爵家に家庭教師に来た暗殺者だ。俺の掌底を片手で止めるだけでなく、その力を利用してカウンターをかまされた。

脚にしっかりと力を入れていなかった俺はあっさりと鬼畜のカウンターにはまり、宙に挙げられ、背後に投げられた。

ここで前世での柔道の出番である。きっちりと受け身を取り、ダメージを最小にして立ち上がる。


ここまでで経過した時間はやく一分。

それなのに、俺の体は汗をかきまくっている。

鬼畜は一切かいていない。


「今のはすごくよかったっすよ~。あともうちょっとで鳩尾に一発喰らってましたっす。ははは」


「そんなに余裕そうに笑ってられても褒められた気がしねえっての」


「そうっすかね?」


ニコニコしながら鬼畜はこめかみを袖で拭う。


「じゃあ、今度は体術の特訓の方に移りますっす。まず、体術は基本的に三つに分けることができるっす」


「攻撃系、防御系、あとはカウンター系ってところだろ?」


「そうっす。暗殺者としては攻撃系一択っす。理由は、きずかれないうちに一撃で相手を()るためっす。ただ、格闘家の場合は違うっす。防御系に徹して相手の隙を伺う流派もあれば、相手の攻撃を受け流しその力を倍以上に返してくる流派もあるっす」


「で、今回俺が習うのはどの流派の体術なんだ?」


「それを決めてもらおうと思ってたんすよ。で、どれにします?」


どれにするかって言われても……。

攻撃系は一撃一撃の威力が高いんだろう。先手必勝の流派だな。

防御系は隙を待たなければいけない。それまで耐えられるかが問題。だけど、確実に力のある一撃を与えることができるようになると。

最後のカウンター系。これは、前世でいう合気道だな。敵の攻撃を受け流したり、攻撃を返したりする体術。ある意味、対人戦では一番うざい相手かもしれない。


この中で優先順位をつけるとするなら。


「カウンター系、その次に攻撃系で最後に防御系だな」


「決まったっすか?」


「おう。決まったぞ鬼畜」


「鬼畜じゃないっすよ〜。それだけは訂正してくださいっす。それよりも、体術の訓練はカウンター系を最初に倣っていいんすね?これ、結構癖があって他の系統の体術を習う時に苦労するっすけどいいっすか?」


「大丈夫だ。俺は暗殺者じゃないし、防御するには体が小さすぎるしな」


「そうっすか。じゃあ、今から教える流水拳法の基礎の基礎を見せてあげるっす」


流水拳法。

相手の攻撃をいかに見切れるかが重要なポイントとなる。

敵の攻撃の予備動作、癖、攻撃時の力の流れを見切り、水の流れを操作するように力の流れを相手に返す。


鬼畜はゆっくりと深呼吸をして、息を吐くとともに姿勢を低くし、爪先立ちになる。

左足を少しだけ下げて、目前に敵がいるかのように石戦を外さない。

そして、左足を大きく引き上半身を回転させてさっきとは真逆の方向を見る。


「これが流水拳法の基本的な足の動きっす。さっきは左に攻撃がきたときの対処法っすけど、逆方向も同じようにやるっす。ただ、引く足が逆になるっす」


「へえ。で、そのあとは?」


「そのあと、例えば今の場合は体を回転させた後に右足を少し引くと同時に肘を相手の鳩尾に入れるとか、あいての肘を殴って壊すとかっすね」


エグいな、結構。

でもまあ、一番対人戦では有効かもしれない。


「じゃあ、今から実践訓練っすね」


「いや、何言ってんの?馬鹿なの?」


「実践訓練が一番、教えるのに適してるっす。だから、行きますよ〜!」


「行きますよ〜!じゃねえ!」


右ストレートを不意打ちしてくる鬼畜。

俺はその右腕の力を強引に止めず、そのまま拳が向かって言った方向に力を加える。

すると、面白いように鬼畜の力が抜け、俺は容赦なく肘を鳩尾に入れる。

しかし、さすがは鬼畜。俺の肘うちをいとも簡単に受け止めて俺から離れていく。


「危ないっすよ〜。もっと力を抜いて売ってくださいっす」


そんなことを言いながらヘラヘラする鬼畜を見て俺はイライラしていくのだった。




そんな体術訓練の朝はおわり、昼ご飯の後は魔法訓練に移った。

そう。あの、魔法だ。

長ったらしいけどかっこいい詠唱をして、魔法陣を出現させて、原爆や水爆以上の威力の攻撃を行う魔法だ。

爺ちゃんが家庭教師をやっと雇えたらしく、今日から魔法を学ぶことになった。


「フォリュタイ・ジュリアードです。よろしくお願いしますね、カオス坊ちゃん」


「よろしくお願いします、フォリュタイ先生」


フォリュタイ先生は鬼畜とは違いイケメンだ。それだけでなく優しそうであの鬼畜とは大違いである。

だが、このフォリュタイ先生。実は女性だ。

それも、三十代ととても見えないような年齢だ。

この世界では二十二の時までに婚約や結婚をしていなかったら行き遅れの烙印を押され、フォリュタイ先生も例外ではない。特に彼女の場合は顔がイケメンすぎて男が寄らないんだろう。

胸は大きいのに……。


「フォリュタイ、でいいですよ。カオス坊ちゃん」


「わかりました、フォリュタイさん」


「敬語も不要です」


「……わかった、フォリュタイさ–––じゃなくて、フォリュタイ」


「ではまずは魔導書初級編を開けてください。初級編の9ページを開いてください」


「1ページ目は?」


「魔法についての説明ですので必要ありません。口頭で説明します」


そう言われて俺は魔導書の初級編を開いた。

9ページを開くと、そこには何かの模様のようなものがあり、その下に大きな魔法陣が描かれていた。

魔法陣とは文字や模様が描かれた円のことで、詠唱を成功させるとこの魔法陣が出てくるらしい。


「まず、魔法について知ってる音を教えてくれますか?」


「魔法について知ってること……魔力を消費し、きちんとした詠唱を行って魔法を繰り出す、ですかね」


「ええ。それであってることはあっているのですが、正解にはできません。まず、詠唱とは何でしょうか?」


「詠唱?」


「はい。例えば9ページの詠唱は『我が道を照らすは小さき灯火なり』と読みます。これは何のためにあるのでしょうか?」


「何のため?詠唱を自然な発音でこなせたら勝手に魔力が消費されるんじゃないのか?」


「はい。詠唱とは、はっきりとしないイメージを鮮明にするために創られた文です。つまり、いらない文なのです」


「なら、詠唱無しでも魔法は発動できるってこと?」


「はい、可能です。ただし、ほとんどの人は詠唱が必要です」


「なぜ?」


「では聞きますが、戦闘中にイメージをしている暇がありますか?」


戦闘中にイメージねえ。

鬼畜と戦ってるときに妄想してんのと同じようなもんか。

うん。できるわけがねえ。そんなことやったら死ぬ。


「無理だな」


「はい、そういうわけです。魔法は詳細なイメージがあって発動する物。何度も何度も使ってそのイメージを覚えるか、身体に覚えさせるかしないと無詠唱、または詠唱破棄などは不可能に近いのです」


「なら、その詠唱ってのは自分で考えてもいいってことだよな?というより、魔法の名前も変えても何の問題もなく魔法を発動することは可能なんじゃないか?」


例えばさっきの≪灯火ライト≫。

あれを例えば≪火≫というだけで出そうと思えば出せるのではないだろうか。


「はい、可能です。例えばこの≪灯火ライト≫をやってみませましょう。『小さき火を指の上に』≪小火リトル・ファイア≫」


彼女がそう言うと、人差し指のところに小さな赤い炎が出てきた。

例えるなら、ライターのような火だ。これでタバコを簡単に吹かすことができる。便利だな。


「このように詠唱や名前を変えても可能なのです。私が出した火をイメージした詠唱を作って、試してみてください」


「わかった」


火をイメージ、ねえ。

名前は……灯火ライトでいっか。

そしてイメージはライター。俺の指がライターだと思い込む。

それだけでなく、摩擦を利用して火を作り出してるから指を鳴らして(パキポキ鳴らすのではなくぱちんと鳴らす方)それを再現しよう。

あれ、ちょっと待てよ。それなら詠唱はいらなくねえか?詠唱の代わりに、動作で表現すればいいんだから。

ちょっと試してみるか。


俺は深呼吸をして体中の魔力を循環させる。それだけでなく、活発させていつでも魔法を発動でいるような状態にする。

それを見ていたフォリュタイは目を驚きで見開いていたが、そんなことはどうでもいい。

右手の中指を親指にくっつけ、パチンと鳴らすと同時に火が出るようなイメージをする。

おし、いけそうだ。

パチン、と音が鳴る。そして、そこから火が出る。俺がイメージしていた灯火ライトだ。

火はその場で消えることはなく、俺の人差し指についているかのように、動かすと一緒に動いて指の動きについてくる。


「おお、成功した」


「……私って、いるのでしょうか」


フォリュタイがそんなこと言っているが、俺は聞こえないふりをして、久しぶりに子供の心を震わせてはしゃいでいた。

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