ファンタジーは唐突に
どうも、こんにちわ。前回でトリップ体験したと思われる鈴木桜といいます。
おじいさん、本名をセルジ・ミラーというそうです。彼の風貌はまさに魔法使い。
白髪に白髭、目は綺麗な蒼で身長はなんと180cmぐらいかな。でかすぎぃ・・・。
そんなおじいさんに対して私は典型的な日本人で黒髪黒目です。ええ、平凡な容姿ですがなにか?
話を戻しますとセルジさん、略してセルじいはこのシルフェス王国の王都で住んでたみたいですが仕事環境が嫌になって国境近くの辺境の田舎の山の中に隠居したそうです。山である必要性は分かりません。
セルじいの前職はなんと魔法使い!しかもセルじい曰く私にも魔法の才能があるそうなので弟子にしてもらいました!ファンタジーきたあああああああああああ!!!
私がセルじいに拾われた日はちょうどセルじいが山に隠居する日だったらしく新築の家には家具があるだけだったのでこの一週間に、私の部屋が宛がえ割られ内装や消耗品や日用品を揃えたり、この環境に慣れるという作業をしていました。
他には家事ですかね。・・・嘘です実際は私はまだ5歳ぐらい?だと思れるので家事手伝いがいい所でした。
あとは家の裏に畑を作ったりセルじいが魔法で井戸を作ったり・・・。なかなかにハードな時間でした。
私が住んでいるところは山の中腹あたりにあるちょっとした平地にある。家も畑もあるので土地としては十分に広いと思うが山全体から見るとほんの一部分何ですけどね。
この山かなりデカいんですよ。あと山頂付近は立ち入り禁止区域です。子供には危険だからという意味合いもあるんだろうけど他にも何かあるらしい。
こんな体で行くほど無謀じゃないし中身は子供じゃないから行かないけどね。めんどくさいし。
そんで今日は待ちに待った魔法を教えてくれる日!
この世界では王族貴族の人たちは魔力が強く、平民の人たちは使える人がチラホラいるぐらい。
血統で決まるのかという質問に対してセルじいは半分正解で半分不正解というなんとも中途半端な答えだった。
魔力の継承というのは今現在でも解明されていなくて貴族でも魔力の大きさはピンキリだし平民だって少しは魔法使える人から偶にとんでもない魔力を持って生まれてくる人もいる。
そんな中私は平民で魔法の才能があると!
・・・ちょっと待て。私は異世界から来た人間で魔力(笑)なんて微塵もなかった。あるわけがない。あってたまるか。
正直に言おう、私は魔法が使えればラッキーとか思ってた。だって小説やゲームの中の主人公って華麗に魔法使って敵倒していくじゃん?あと便利そうだし。
でもさ、よく考えて欲しい。強い力って平民貴族問わずほっとかないじゃん?それってトラブルまっしぐらだと思うんだ。平民の出で魔法使えるとか風当たり強そうだし貴族の隠し子とか嫌な疑惑とか持たれたくない。
魔法は使いたいがトラブルは嫌だ。最悪魔法なんて使えなくてもいいと思う。死にたくないし。
でも目の前のセルじいはやる気満々ですよ。ニコニコしてるしなんかやる気がにじみ出てるし。
・・・腹括ろう。
「おおサクラや、今準備が終わったところだ」
「セルじいお疲れ様。その魔法陣壊してみていい?」
「物騒なことを言うな。これがなきゃ魔法のテストが出来んぞ?」
「よし壊そう」
「やめんか!・・・まったく、では始めるぞ。魔法陣の中の机の上にある水晶に触れてみなさい」
「幼気な幼女に何させるつもり?」
「変なことを言うな!水晶はサクラの持っている属性と魔力量を教えてくれる。触ってみなさい」
「うぃ~っす」
なにやら難しそうな円形の魔法陣の真ん中に木製の机と机にフワフワ浮いている直径30cmほどの大きな水晶があった。この程度では驚かなくてよ?
とりあえず触っても平気っぽい。こんな怪しい装置なんて説明なしで触れられないよね。
属性だか魔力量だか知らんが異世界人の私には全て無意味!!科学信者の現代人なめんなよ!!
目の前にある水晶に小さく意気込み、両手で水晶に触れる。
・・・何故この水晶は熱を持ってきているのでしょう?嫌な予感しかしない。
しかしこの水晶、熱はほんのりと持ってきたけど他には何の変化もない。ええー・・・。
「セルじい~!なんも反応がないんだけど~?」
「そりゃあまだ呪文唱えてないからのぉ」
「(くっそじじい!)」
その後、クソ爺がブツブツなんか言ったと思ったら水晶に反応があった。
私が水晶に触れている手の輪郭に沿って光が生まれ、やがて水晶全体が光に包まれた。
光は白、黒、赤、青、緑、茶、最後に無色になり反応がなくなった。ただの水晶のようだ。
頭に?マークを浮かべつつも後ろに居たセルじいを見てみてみると無表情。え、なにそれ。
強要してきたんだから感想か反応ぐらいほしいんですけど。
「セルじい~?」
「ん?ああ、サクラ、もう一回水晶に触れてみなさい。次は魔力の量を調べるから」
「はーい」
実にやる気のない返事をした後は再度水晶に触れてみる。さっきのような熱は感じない。何故だ。
セルじいの要求は水晶に触れることなので余計なことはしない。
そんなことを思いつつも後ろからブツブツと聞こえてくる呪文をBGMに今日の夕飯について予想する。
昨日獲った熊の肉がまだあったからシチューかな?贅沢言うならビーフシチューが食べたい。
・・・お腹空いて来たなぁ。
ビキッ
「え?」
「・・・!サクラ!」
ガラスが壊れる音を聞きながら私は意識を手放した。
―――その音はとても綺麗な音だった。