表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前略、魔界の実力者でしたが勇者やってます  作者: おいかぜ
序章 魔人と従者、魔界を発つ
1/51

はじまり ~精霊さんいらっしゃい~

 新しい朝が来た。

 魔界の朝は暗い。

 さほど広くない自室。ベッドの上で目が覚める。


 視界の隅に光の塊があった。


 ん。

 目を閉じると消えたが、再び目を開ければ間違いなくそこにある。

 光の塊。今はまだおぼろな形をしているそれは「精霊憑き」となった証。


 靄のかかった思考が冴えてくる。同時に、彼は困惑を深める。


 え、え?


 目をしばたたかせる。光が明滅した。


 面倒ごとの予感しかしない。

 ウソでしょ…?

 いや、確認が先だ。何かの間違いだろう。そうだよ。


 冷静になろうと努めて、寝間着を着替え、歯を磨いた。光の塊は消えない。まだ慌てる時間じゃない。ただ一人の配下を呼びつける。


 待つこと15分。


 エニシダが姿を現した。


 「お呼びでしょうか。ギジッツ……様」

 整った人形のような美貌。ただし目は半開き。

 どう見ても寝起きです。本当にありがとうございました。


 「おい…まず言うことあんだろ」

 「おはざっす。遅れて、申し訳、アリマセン」心底面倒くさそうな声音で彼女が応対した。

 舐めきった態度を隠そうともしない。いつもの事なのだが。


 しかし溜息をつく気にもならない。今はそれどころではない。


 「朝っぱらから、どんな下らないお考えを思いつきになられたのですか」


 ギジッツが彼女を呼び出す時というのは、暇つぶし計画を自信満々で開陳する時と決まっていた。


 そこでふと、エニシダは怪訝な眼差しを彼の主に向ける。

 「気づいた?」

 「ギジッツ……様、その目は…」

 ギジッツの左目、その虹彩が金色の微光を放っている。

 自分のカン違いではないようだ。そうならどれだけ良かったか。


 「やっぱそうか。アハハ。こんな事ってあるんだなぁ。精霊かー」

 投げやりな気分とともに吐き捨てる。

 「クソがっ!」


 「…見たところ…光が弱いですね。まだ定着していないのでは?」

 他人事なのだろう。言いながらあくびしている。

 「どうしたもんかね、これ。無かったことにならないかな。消す方法とかわかるか」

 「分かりかねます。ご自分でどうにかなさってください」

 「だよな」


 新しい朝が来た。陰鬱な朝だ。


 「メス公に面会を取り付けろ。なるべく早くな。出来次第支度しろ」

 「仰せのままに」

 魔界有数の実力者にして、博識を誇るメスならば、あるいは何か。


 精霊は気まぐれと聞いてる。でもなあ。まさかだろ。

 魔界の片隅に領地を構える彼、第四位魔公爵ギジッツはその日、「精霊憑き」となった。


 精霊憑きとはすなわち、「勇者」の別称である。



なんちゃって中世風味ファンタジー世界を舞台に、

ぶち込める限りいろいろぶち込んでみたい実験作です。

力量不足をヒシヒシ感じています。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ