召喚
「………………」
そこは遺跡であった
そこは祭壇であった
そこにいるのは一人の少女
少女は一人で祭壇に祈る
神に神に縋り神に祈り神を求める
魔物に嬲られ蹂躙され壊されていく国のため国民に為祈る
少女は王族であった
少女は今まで何不自由ない暮らしをしていた
だが魔王を名乗る魔族が現れ魔物が活性化してから全てが変わった
兵は魔物討滅の際に少しずつだが確実に数が減り
今では国民に被害が出始めている
そして魔物は時間が経つことに少しずつだが確実に増え
そして強くなっていく
だが少女には魔物と戦えるほどの力がなかった
故に祈る
この世界に神が本当にいるかはわからない、だが過去に神が勇者なる者を連れこの世界を救ったというか伝承がある
だから祈る
いるかどうかわからない神に祈る
どうかこの世界を救う英雄を連れて来てくれることを…………
………………………
……………
……
「姫さまっ!」
一人の兵が中に入ってきたこの兵は遺跡の周りの警護についていたはずなのだけど、
どうしたのだろう
……変な現実逃避はやめよう
私は後ろを振り返る
「魔物の数、負傷者の数は?」
「はっ、魔物は犬が数十頭、負傷者は10人ほど」
犬は確かに群れると強いけど兵を負傷させるほどではないはず……
「もしかして……」
「はい、感染種が確認されました」
感染種……魔王の影響を強く受けた魔物……
「負傷者は10名ほどよね?死者は?」
そしてなにより
「死者は、負傷者以外の全員です…」
圧倒的に凶暴で強い
「姫様、今のうちに逃げましょう」
「でも、勇者を呼べる祭壇なんて残って」
「姫様!
祭壇はいざとなれば組めばいいのです、しかし巫女の血を引く者は姫様しか残ってないのです!」
「…………わかりまし」
兵の言い分を聞こうと思った時
ドンっ!
音が響いた
死の音が響いた
音同時に目の前にいた兵が消えた
一拍あけて強い風が吹き抜ける
そして祭壇の上に奴がいた
普通の犬に、魔犬に比べ数倍の大きさの身体、太い四肢鋭い牙そして圧倒的存在感
「感染種……」
声が震える、身体が震える
「あっ」
そこで気づく、兵がどこに消えたか
足だ、感染種の前足に潰されていた
恐らく奴が入って来る際に巻き込まれたのだろう
最弱と言われる魔物の感染種でさえ簡単に、不用意に、意識せず人を殺せる
それが、その理不尽の塊が感染種なのだ
そこで感染種がこちらを見たその瞳に私を映す
そして
「あっ」
私は私の終わりを悟った