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~07~

 今日もまたオリヴァーの唐突な一言でタカミヤの苦労は始まる。


「アダマンタイトを出来れば10個、最低でも5個は手に入れて来て欲しい」

「・・・・・アレがどんなモンスターからドロップ率何%か分かって言ってる?」


 『アダマンタイト』、亀型モンスター『アダマンタイマイ(LV87)』からドロップする超!、超!!、超!!!、希少な高級素材でドロップ率なんと1%!?、何故こんな超希少高級素材が必要なのかと言うと、なんでもエリカ博士が最近発明している『動力式補助器具(ムーバブル・ギア)』を造るのに必要なのだと言う。


「なんでも、鉄鉱石やミスリル銀やらなんやらで色々試したけど弾力性が足りなくてダメだったらしい」

「まあ確かにエルダーテイルじゃあ、アダマンタイトは軽装備とかに良く使うわね」

「武器攻撃職御用達だからね」

「で、エリカ博士は何を造ってるの?」

「『義手』・・・・だってさ」


 その一言にタカミヤは眉を潜める、冒険者は基本的に腕が吹き飛ぼうが体が爆散しようが元通りになって大神殿で復活、もしくは回復魔法で治るので『義手』や『義足』が必要になる事などないはずである、元の世界であれば需要は確かにあるがこの世界では需要が無いように思える。


「僕らが使うんじゃないよ?」


 どうやら顔に『何に使うの?』と書いてあったらしい、オリヴァーに疑問が答えられタカミヤは少しバツが悪そうにするが開き直って聞くことにした。


「そりゃ当然大地人用じゃない?詳しくは聞いてはないけど」

「ああ、そりゃそっか」

 考えてみれば当たり前の答えで、『冒険者(プレイヤー)』はゲームだった頃からの名残で大神殿での復活や魔法で大概の怪我は治る、しかし大地人、この世界の人間達はそんな復活機能など備わってない、魔法で怪我やらは治るだろうが、腕が無くなったりするような大怪我が治る保証は無い、タカミヤは冒険者視点での考え方しかしていなかった事がバツが悪かったらしく『アダマンタイト』の収集の依頼を受けるとオリヴァーの執務室を後にした。


「・・・僕も気をつけないとなぁ・・・」


 グランセルにおける冒険者と大地人との共生の為に四苦八苦したオリヴァーだったが自分もまた冒険者視点で問題を考えてしまう癖が有り、人の事など言えない状況だった、オリヴァーの執務室に秘書(シェラ)が嘆願書各種書類を手に入ってくるとテーブルの上のスペースにドサリと置きオリヴァーが眉をひきつらせる。


「シェラ君、これはちょっと多くない?」

「いつもサボってるのは誰?」

「はい・・・僕です・・・スミマセン」


 抗議の姿勢を見せたオリヴァーだったが、自分の落ち度を指摘され溜め息を付きながら書類仕事を渋々始める。


「おっかしいなぁ・・・、僕の予定ではカシウスさんあたりがグランセル中央連盟の会長になってくれるハズだったのに・・・」

「皆、言い出しっぺががヤらないでどうするんだって言ってたわよ」

「皆・・・・つれないなぁ」


 言い出しっぺとしてグランセル中央自治連盟の筆頭をやらされているオリヴァー、ノリのいい話の分かるGMだと以外な所で人気だったオリヴァーが密かに行われた代表冒険者選抜投票でダントツの1位だったのは調子に乗るので本人には教えられてはいないのでした。





 所かわってアイテム研究所、ココでは最近ある事に挑戦していた。


「はい、これが今回の発明品の『カラフルレーション』です」

「普通にレーションじゃないのか?」

「ええ従来品ですね、これは新製品を食べるにあたって従来品を先ずは食べて欲しかったので」

「なるほど」

 

 ~『レーション』~

 軍用の携帯食料、栄養価が高く小さな欠片でも充分な栄養がある、しかし・・・味の保証は・・・。


 本物を食べた事のある代表としてカシウスが、一般受けを狙っているので一般人代表でカッツェが其々呼ばれて試作品を試食していたのだが、カッツェには不評だったらしく難しい顔をしていた。


「にゃははは、やっぱ一般受けはしないかぁ」

「私は気にならんのだがなぁ」

「大丈夫です、食べれ・・ます」


 猫人族の開発部長はカラカラと笑いカッツェにオレンジジュースを差し出し、次は彩り豊かなレーションを取り出した、アメ○カのお菓子もビックリな色づかいのレーションに流石に二人は引いていたが、カシウスが覚悟を決めて欠片を食べてみると。


「これは・・・チョコレートか?」


 その言葉にカッツェもレーションを食べてみると。


「あ、こっちはミントの味がします」

「にゃはは、どうやら成功みたいだね」


 猫人族の開発部長が言うには、着色料を使って色を変えているだけで中身は全くの一緒らしい、しかし何故こんな豊かな味なのか?それには実はキチンと種と仕掛けがあるらしい。


「それぞれ手に持ったレーションのテキストを読んでみて」


 開発部長に言われたとおりに二人は手にしたレーションのテキストを表示してみると、基本的な文章は同じなのだが最後にオマケ程度に『~味』と書き足されていたのである。


「テキスト文章の具現化は色々危険性を持ったものとして注意が呼び掛けられてたよね?」

「そうだな、武器や防具なんかは特に厳しい」

「そう!、でも悪い事ばっかりじゃないんだなぁコレが♪」


 何でも発案の切っ掛けは腹ペコ英雄二人に業を煮やしたノインテーターだった、毎度毎度暴食の限りをつくすモノだから食料がいくらあっても足りはしないと、アイテム研究所に企画を持ち込んだらしい。


「家の冷蔵庫も・・・最近減りがスゴくて困ってたんですよねぇ・・・」


 腹ペコ二人をギルドが経営しているカフェテリアで雇っているカッツェは流石に身に染みているのか反応にこまっている様子だった、反面開発部長は笑顔で。


「まあ、私も昔日本のコンビニで『カロ○ーメイト』とか『ソイ○ョイ』を買って食べた事があるけど美味しいよね~」

「どうやってテキストを書き換えたんだ?」

「ああ、トマス殿に頼んで書き直して貰った」

「なるほど」


 開発部長はトマス(GM)からテキスト書き換え用の権限を一時的に借り受けているらしく、目の前でカシウス達にも見えるようにウィンドウを表示してカッツェの持っていたレーションのテキストを書き換えていく、テキストの書き換えが済んだレーションを再び口にしてみると。


「あ、チョコミントの味」

「まあ書き換えて直ぐには具現化しないからね、ほんの数分は味が混ざりあったりするみたいなんだ」

「ふむ、中々面白い発見だな」

「でも、残念ながら万能じゃないんだよねぇ~」


 開発部長は頭をカリカリと掻きボヤき始めた、どうやらテキストで味が変わるのは限度があるらしい。


「ボンゴレ味とかコーンポタージュ味とかにしたら料理アイテムの方の味になっちゃってさ~」

「ああ・・・酷かったわけか」

「そうなんだよねぇ、あ!でもこないだ『ダンディズム』で新発売したブランデーの『ヘミソフィア』の味にはなったんだよ!、あれはウィスキーボンボンみたいで美味しかった」

「是非詳しく聞こう」


 カシウスに詰め寄られながらも開発部長はニャハハハと笑いながらのらりくらりと開発結果の話を続けていく中、カッツェは。


「あ、全部チョコレート味に変わった♪」


 まだレーションをかじっていたのだった、後日『カラフルミックス』という名前の携帯食(レーション)がグランセルで販売され始め、まあ色々騒動が起きるのだがそれはもっと先の話。













   ~所戻って『×∀∇(ホニャララ)海岸』~


 タカミヤはマリナ&ペンドラゴン(はらペコヒーローズ)と『アダマンタイト』の収集の為ある海岸へとやって来ていた、流石に超希少高級素材なのでパパっと終らせる事など出来るわけもなく、今ようやく『アダマンタイマイ』の8体目を倒し目的の品『アダマンタイト』を1個手に入れたのだった。


「コレがその『アダマンタイト』と言うやつか結構綺麗な色をしているのだな」

「まあ海の色って事らしいから多分青色か蒼色なんでしょう」

「でも、捕獲してから解体したほうが採れるのでは?」

「やってみたらしいけど、『アダマンタイマイ』を解体しても『アダマンタイト』は出てこなかったらしいわよ?」


 タカミヤは一息付こうと大鎚(ハンマー)を地面に下ろしながら研究者連盟が既に試して散々な結果になった事をペンドラゴンに伝え、マリナが持っていた『アダマンタイト』を受け取り納品用ケースに納めてからバッグに納め適当な岩に腰を下ろした。


「ミヤはいつも使っている武器が違うのだな?」

「ん?ああ私は仕様上装備の種類は限定されてないからね」

「その大鎚、綺麗な色ですね」


 ペンドラゴンがタカミヤが持っていたハンマーの色彩に目を見張っていたので、この鉄鎚の材料が何なのか教えてみることにした。


「これが『アダマンタイト』で出来た鎚で『アダマンの大鎚』って言うのよ」

「え!?、これ『アダマンタイト』で出来てるんですか?」


 流石にコレは意外だったようだ、『アダマンタイト』の収集に『アダマンタイト』を使った武器を用いるとは思っていなかったようだ、とはいえ『鉄鎚(ハンマー)』系の武器は亀型モンスターやスカルタイプ等のモンスターに特効効果を持つアタックスキルが多く備わっているので収集に来る際に『鉄鎚(ハンマー)』を持ってくるのは別段珍しい事ではない。


※例:スカルクラッシュ:骸骨系モンスターにクルティカル


「『アダマンタイト』は《鉱石》素材に一応は分類されるんだけど、《魔物》素材特有の性能も持った素材でかなり希少な品なのは間違いないわ」

「『アダマンタイト』は金属でありながら《魔獣の革》や《竜の鱗》等のようなしなやかさも有ると」

「むぅ・・・私は『天晶剣(アドナイ・メレク)』があるから気にしたことは無かったが、『素材』というのは奥が深いのだな・・・」

「私も『聖王剣(コールブランド)』があるので気にしたことは無かったのですが、むぅ・・・私・・・結構長く活動してるのですがまだまだ知らない事が多いですね」


 二人が神妙な面持ちで頭を悩ませていると、ドチラともなく『ぐぅ~』とお腹が鳴らしタカミヤは溜め息を付きながら昼食の準備をするべくバッグから器具を取り出して行く、幸いにも食材は『アダマンタイマイ』と同時にエンカウントした『ビーチフィッシュ』という魚とワニがまざったようなモンスターの素材が大量にあった(こっちは捕獲した後に解体して革と鱗(素材)と切り身(食材)に分けたので大量にある)ので用意してきた食材はさほど使わなくてもよさそうだった。


「私大盛り!!」

「あ!私も大盛りで!!」

「はいはい」


 足をパタパタと動かしながら「ごっはん~♪ごっはん~♪ 」と口ずさむマリナと自前で用意してきたらしい紅茶を静かに口にしながらペンドラゴンも食事が待ち遠しいようだった、タカミヤはテキパキと器用に料理を作りながらふと自分の立ち位置が気になった。


(GMなんだからトマスとオリヴァーも制限なく色々出来るはずだけど、料理とかできないのよね確か・・)


 権限行使で全てのスキルをMAXLVで使える筈の知り合いのGM二人は、現実での料理経験が乏しい為この世界で料理が作れるわけでもなく、かといって工学技術に優れているわけでもない、トマスは歴史学者であった経験からこの世界でも学者として活動しているのだがオリヴァーはぶっちゃけ役立たずGMになりつつある、タカミヤは器用な方で炊事・洗濯・料理・武術とこの世界では最低限困る事は無かった。


(・・・スキルLVがあっても経験が無いと意味無ってことよね~・・・)


 器用なのも考えものなのかもしれないとヤレヤレと溜め息を付きつつ出来上がった料理を携帯皿(復合鉄鉱石で作られたスチール性、汚れが付きにくいと婦人達の間でチョッと人気)に盛っていく、料理を盛っていく行く最中マリナは「大盛りっ♪大盛りっ♪」とフォークを手にタカミヤを急かす、「はいはい、今出来ますよ~」とタカミヤも返答しつつ盛り付けた料理をマリナとペンドラゴンへと渡すと自分用に料理を盛り付けていき、さあ食べようと手を合わせたところで。


「「おかわり♪」」

「速っ!!」


 光のような速さで食べ終えた二人におかわりを要求されたのだった。


 料理を食べ終え、片付けを済ませると空が曇り始めているのに気付いた、どうも雨が振りそうなので素材収集は一旦切り上げて近くの町へ宿を取りに行くことにし、一向は海岸を後にした。


 雨が降りだす頃には近くの村にたどり着く事ができた一向は雨宿りをするための小屋を貸して貰い、小屋に沢山山積みされていた藁束の上にマリナは無邪気に飛び乗った。


「おおっ!藁束も悪くないな、かなりフカフカだ♪」

「お行儀が悪いですよマリナ殿、貴婦人(レディー)がそんなはしたない真似をしてはいけません」

「別にいいではないか、ペンドラゴンもねっころがればいいのだフカフカで気持ちいいぞ」


 はしゃぐマリナと呆れるペンドラゴンを見ながらタカミヤは空の天気を眺め、グランセルに戻るのが予定より遅くなりそうだとコーヒーを啜っていた。



GMも一概に万能とは言えず、セルデシアでは現実世界での技術が求められるので思った以上に役立たずなGMも少なくはない。

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