表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

~03~

 数日前、タカミヤはオリヴァーに呼び出され執務室へとやって来ると、執務室には珍しいことに職人連盟の大知人側の筆頭のエリカ博士がやって来ていた。


「別任務?」


 タカミヤに告げられたのは、いざレイドが始まり兵隊蟻の軍勢がグランセルの冒険者を押し込み始めたとき、ソロで集団を引っ掻き回し、最悪エレボニア側へと引っ張って行ってほしいと言うものだった。


「それMPKじゃない?」

「そうだね、でもこの事態の一端は彼等エレボニアのプレイヤー達にある、ならそれなりに責任は取って貰わないとね」

「レイドが始まってもエレボニアが動かなければ、力付くで動かすと?」

「そうでもしないと彼等は動かないかもしれない」


 オリヴァーが言うには既にエレボニアのプレイヤーに向けた新書を届けたとの事だが、一切の連絡はないとのことだった、エレボニアのプレイヤー達の協力が得られずとも別にレイドが失敗するわけでもないが、彼等が意図的にコチラに敵対攻撃(PK)を仕掛けてくる可能性も捨てきれない、既にトマスに頼み対処はしているものの出来れば最終手段であるそれは使いたくない。


「で、私がタームソルジャー数百体のタゲを取ってエレボニアのプレイヤーにぶつけろと」

「そうすれば少なくともコッチに手を出す心配は無くなるし」

「それを切っ掛けに吹っ掛けて来るかもよ?」

「嫌だなぁタームソルジャーは勝手にエレボニアに向かったんだよ?僕らにはどうにもできないよ」

「よく言うわ」


 そこまで言うとオリヴァーの話は終わりだったらしい、続いてエリカ博士から話かけられる、何でも新兵器の運用テストを頼みたいらしい、エリカ博士に連れられてタカミヤは中央会館地下にある職人連盟の特殊工房(GCF)へとやって来ていた、この場所は魔法道具(マジックアイテム)各種や冒険者の知識を元に新しい魔法武器(マジックウェポン)や何かを開発しているらしい、割りと立ち入り自由だがタカミヤは入るのは初めてだった。


「何、あの山積みの兵器の残骸」

「ん?ああ、アタシが作った『アガットデストロイヤー』の残骸だよ、中々上手くいかなくってさ~」

「アイツ、一体何をやらかしたらこんな意味不明な事態に・・・」


 本人が聞けば誤解だの逆恨みだのコッチだって迷惑を被っていると言い分は有るのだろうが、あまり深く関わって巻き込まれるのは面倒なのでそれ以上は聞かないでおいた。

 エリカ博士に案内された先にあったのは動力大砲(ムーバブル・キャノン)動力銃(ムーバブル・ガン)動力弓(ムーバブル・アーチャー)、他にも7種類もの動力兵器の数々が組み合わされた複合型特殊兵器が置いてあった。


「『アガットデストロイヤーV3γ(ブイスリーガンマ)』に付けようと思ってたんだけど案外重くってさ~、重量に耐えれなくて機体が壊れちゃったんだよね~」

「・・・・・」


 一体この博士は何を作っているんだとツッコミを入れたくなったが面倒なので止めておく、エリカ博士はそれぞれの兵器の使い方を説明し、最後に自信満々に胸を張り兵器の名前を告げた。


「これが複合型特殊動力兵器(タクティカル・ムーバブル・アームズ)『ファランクス』よ!!」


 自信満々に言うエリカ博士とは裏腹にタカミヤはそれを持ち上げようとして眉をしかめる、ファランクスはやたら重かったのである、まあ動力兵器10種が組合わさってこれなら軽い方なのだろうが、タカミヤでさえ持つのに少し苦労するそれを何とか持ち上げるとその兵器はいきなり動力追尾弾(ムーバブル・ミサイル)と呼ばれるそれが発動し、研究所奥を歩いていた1人の冒険者に向けて飛んでいった、弾はすんでの所で冒険者に切り落とされ、エリカ博士は舌打ちしながら。


「ちっ、また失敗か」

「てんめぇ!!、まだ諦めて無かったのか!!」

「落ち着きなさいアガット、ここ一応研究室なんだから」


 どうやらさっきのはファランクスの暴発ではなく、自動攻撃システム照準にアガットが入っていたかららしい、本当に迷惑な兵器である。

 エリカ博士が言うには、他のプレイヤータウン(エレボニアにもない)にはあるがこの『動力甲冑』を着た衛兵が居ないグランセル自警団の大地人の人達に持たせるために対モンスター用のデータが欲しいらしい、対冒険者用のデータは腐るほどあるらしいので必要ないらしい、理由もさっき垣間見たが。


「レイド行くんでしょ?、たっくさん倒していっぱいデータ取ってきてね~♪」


 とエリカ博士に笑顔で『ファランクス』を押し付けられ(自動攻撃システムは解除したらしいが真偽は不明)、レイドの始まった今現在、この危険な武器を手に戦場に赴くことになったのであった。

 タカミヤはコマ○ドガ○ダムやV2ア○ルトバ○ターもかくやという武器の数々を用いて1人戦場を走り回っていた、武器の威力は中々でLV75まで成長してしまったタームソルジャーの数々に大打撃を与え、タゲを取り上手く軍団を分散させることに成功していた、数の減ったタームソルジャーの軍団は後方の支援部隊の放った火炎魔法でさらにその数を減らし、援護の受けて斬り込んだ前衛の殲滅部隊によってさらに数を減らしていく、そのなかにはレオンやカシウス達の姿もあった。


「さて、そろそろかしらね」


 タカミヤは懐中時計で時間を確認すると、ファランクスで群れの中腹を狙い攻撃しヘイトを上げてタゲを取り、先程とは違う方向にタームソルジャーの群れを誘導して行く。


「MPKは趣味じゃないし、早いとこ出てきて来れると嬉しいんだけど」


 グランセルの隣国《帝都エレボニア》の影が見え初め、街まで残り僅かとなった所でタカミヤは大気に混ざる音に気付き、慌てて近くの森に身を隠す、音の招待はエレボニアから出てきた冒険者の大群だった。


「久しぶりのレイドだ、者共存分に喰い散らかしてやれ!!」


 指揮官の号令が響き、エレボニアのプレイヤー達は我先にとタームソルジャーに斬りかかっていく、この様子ならグランセルに襲いかかってくる様子は無いと安堵しグランセル側の戦場へと戻ろうとした時だった。


「グランセルの使者よ話がある、居るのは分かっておる出て参られよ!!」


 指揮官はそう叫び周囲を見渡していた、タカミヤは手早くオリヴァーと念話を繋げると状況を説明した。


「向こうが話があるのなら聞いた方がいいんだけど、エレボニアのプレイヤー代表とは限らないしねぇ」


 エレボニアから亡命してきた大地人から聞いた情報では帝都では少なくとも3つの派閥に別れているらしく、大地人の亡命(帝都脱出)を手助けしたのは一番小さな派閥ではあるものの大地人には優しく理解のある冒険者が多い派閥でもあるとの事だった。


「グランセル中央議会のものです、それでお話とは?」

「先ずは名乗ろう俺はユージーン、エレボニア内にある派閥『保守派』の筆頭代理を勤めている」

「ああ、ではあなたが大地人達の帝都脱出を」


 ユージーンと名乗る守護戦士はエレボニアの3つの派閥『保守派』に属する者で、エレボニアに住む大地人達の帝都脱出を手助けしてきたも者の名前であると、亡命してきた大地人達から聞いていた、ユージーンが言うには残り2つの派閥の内『過激派』が去年の夏ころから平原付近でPKを繰り返し、グランセル中央議会代表理事のオリヴァーからの手紙を握り潰していたらしい、ユージーンはあるとき部下が何とか拾ってきたそのオリヴァーの手紙を読んだ事で夏から続く事態を理解し部下達と共にレイドに出陣する準備を整え機を伺っていたらしい。


「スマンな、もっと『過激派』と『楽園派』の動向が掴めていれば良かったのだが、奴らは奴らで怪しい動きを繰り返し跡を辿るのも容易ではなかったのだ」

「いえ、大地人達からは帝都では貴方達が居なければ、いつ死んでもおかしくはない状況だったと聞いています」

「話は戦が終わった後で再びするとしよう、俺も戦場へ行くがそなたはどうされる?」

「私?、う~ん一応1回戻って出直す事にします」

「では戦場で会う事もあろう、先に行かせて頂く」


 それだけ言うとユージーンは馬を走らせ、大規模なレイド戦闘が繰り広げられる戦場へと向かっていった。タカミヤはそれを見送ると再び帝都を眺め。


「『過激派』に『楽園派』ねぇ」


 タカミヤはそれだけ言うと情報交換を行うためにグランセルへ向けて一路走り出した。


 タカミヤはグランセルに戻ると防衛部隊と合流しオリヴァーと情報を交換すると、ファランクスを下ろし魔法式の情報収集機(レコーダー)を、援護部隊に動力銃を配布していたエリカに渡す、その後バッグから自分がレイドで散々使い回した御用達の武器を取りだし。


「んじゃまあ、ひとつ暴れまてきましょうかね」


 そう言って剣を肩で担ぎ戦場へと走り出した。




 ~~平原では大規模な戦闘は継続中だった、どうやら女王蟻(タームクィーン)が新たな兵隊を産み出し続けているらしい、倒しても倒しても尚続く戦闘には終わりが見えず冒険者も疲労が溜まり押され始めていた、しかそこの苦境を盛り返したのはエレボニアからの冒険者の援護という増援だった。

 これによりグランセルとエレボニアのレイド部隊は戦闘部隊のグループ分けを行い、より長期戦向けの戦いができる編成に組み直したのだ、そして再び彼らに救いの手が。


「どいたどいた♪、私の剣はチーム戦なんかにゃ向いてないんだから邪魔すると怪我するよ!!」


 タカミヤはその極大な刃を振り回しタームソルジャーの大群をバッサバッサと切り捨てていく。


「あれはミヤか」

「相変わらず『龍覇斬』はバカみたいな長さだがよく使えるな」

「はは、まあ味方ならこれ程心強いもんはねぇが」

「成る程、あのものが『覇斬無双の酒呑童子』であったか」


 『龍覇斬』というのは幻想級の大剣の中でも特殊なもので、敵を複数斬れるという効果がある剣でありレイド向けのギルドには持っている奴は必ずいる、言うほど珍しくはない剣なのだが、大災害以降判明したその剣の大きさはこの剣のテキストに書かれた龍すらも一太刀で葬る事の出来る、という部分を再現したのか刃2m柄1mの全長3mという大きすぎる剣であったがゆえに多くの愛用者がこの剣を封印又は鍛冶素材に替えるという選択肢を選ぶ中、タカミヤは今回の戦闘で敢えてこれを振り回すという選択肢を選んだのだった。


 その効果たるやタームソルジャーの大群の2割は既に倒され、尚も剣を振り回すタカミヤは他のタームソルジャーのヘイトを煽りに煽り、他のタームソルジャーもターゲットを望み通りタカミヤに集中させていく、しかしタカミヤは一切気にする事無くスレード○ルミル顔負けに『龍覇斬』を振り回しタームソルジャーを殲滅していく。


 そして機を同じくして、前戦で戦っていたレオンに念話が入る、相手はオリヴァーからで、今から数時間後に精鋭部隊での巣への進入とタームクィーンの殲滅作戦を決行するというものでレオンとカシウス、そしてユージーンもエレボニア代表として参加してほしいとの事だった。



『ユージーン』

帝都エレボニア内の冒険者の派閥『保守派』に所属している、他の派閥の大地人達の扱いに反発し彼らを何とか帝都から逃がす事にした、亡命してきた大地人達からはエレボニアの冒険者の中でもかなり感謝されている。

ヒューマン:守護戦士:Lv90/決闘者(デュエリスト):Lv90

主に使っている武器:剣、騎士剣、大剣など剣各種。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ