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~15~

 チビドラゴンを住みかへと送り届ける旅の道中、日も暮れ始め立ち寄った町で宿をとった二人。


「こっちの地方の酒も中々、仕入れて帰ろうかしら」


 カノンは夕食を終えた後既に部屋へと戻り就寝中、タカミヤは酒場で酒を味わい他の客達の会話に耳を傾け、何か面白い情報や噂話等が無いかと1人カウンターで酒を飲む。


「お前あの噂聞いたか?」

「ああ、《アラバスタ山脈》に出てくる新種のドラゴンとか言うやつだろ?」

「何でもスゲー強くて、バリアみたいなモノでこっちの攻撃を遮断しちまうらしい」

「ソイツは怖えぇな、で倒せたのかい?」

「いいや、Lv90のメンバーがダンジョン最大パーティー数の12人で挑んだらしいがバリアを破れなかったらしい」

「ソイツはまたスゲーな、やっぱあれかな【ノウアスフィアの開墾】の新種かな?」

「かもな、しかも滅多に会えないらしいから相当なレアモンスターだぜきっと」


 タカミヤはその二人の会話を盗み聞きしつつも似たようなモンスターと戦った事があるのを思い出していた、もし同じモノであるのなら放ってはおけないがLv90が12人総出で倒せなかった以上、タカミヤが1人挑んだ所で結果は明らかだろう、とは言え重要な話だったのでタカミヤは。


 噂話をしていた二人が座っていたテーブルにウェイトレスがエールを配り二人は頼んだ覚えもないエールを指さして何だこれはとウェイトレスに訪ねると、ウェイトレスはカウンターで酒を静かに飲んでいるタカミヤを指し示し。


「アチラのお客様からです」

「ほぇ~、なにやら綺麗な姉さんじゃねぇか」

「俺らに気があるんじゃねぇか」

「バカ言え、きっと色んなレアモンスター狙いのパーティーの人らだろうぜ、さっきのレアモンスターの話の情報料ってとこじゃねぇか?」

「そう言うことか、まあタダより旨い酒はねぇんだし有り難く頂こうぜ♪」


 二人がタカミヤの方へお礼を言いつつジョッキを掲げてている姿にタカミヤもグラスを小さく掲げて返事を返す、タカミヤは先程の情報を詳しく知る必要がありそうだと、《アラバスタ山脈》のすぐ近くにあるプレイヤータウンへ向かう事に明日の予定を決め、カウンターに酒の代金を置くと部屋へと戻っていった。


 部屋に戻るとベッドにはアルンを抱き枕にしたカノンが静かに寝ていた、部屋が空いてなくてダブルベッドの部屋を仕方なく取った訳だが、カノンは一緒に寝る事前提だったのかベッドにスペースを空けるように少し端に寄って眠っていた、タカミヤは空いたベッドのスペースにソファーの上に置いてあったカノンのバッグを移動させ、毛布を上着のポケット(容姿変更用の特殊衣装(コスチュームアイテム)はポケットがマジックバッグに繋がっているのであって決して四○元ポッケではない、なお原理は未だ不明)から取り出して被りつつソファーへと横になった。


 タカミヤが目を閉じ、眠りに付こうとしたところで何時から起きていたのかカノンから声をかけられた。


「ねえミヤ」

「なに?」

「ミヤは私に初めて会った時の事、覚えてる?」

「ん?、義手を付ける時じゃ無かったっけ?」

「私が『黒い病』に侵食されてた時だよ」

「ん?、『黒い病』?」


 エルダーテイルには『黒い病』というものは存在しない状態異常だと言うのにカノンはそれにかかった時に自分と出会った事があると言う、何やら奇妙なズレが生じているのに何故か違和感を感じないという矛盾を抱え込みタカミヤは眉を潜め唸り始める、するとカノンは。


「ミヤは怒るかも知れないけど私は《大災害(ワールドフラクション)》が起きて良かったと思ってる、だってミヤにこうして会えて、アノとき伝えられなかった言葉を言えるから」


 タカミヤはカノンが起き上がり近づいている気配を感じ、ソファーから少し身を起こすと近くへと来ていたカノンと顔がぶつかりそうになったので慌てて遠ざかろうとしたのだがカノンの手がタカミヤの頬に添えられ。


「私は、アナタに助けて貰えて凄く嬉しかった、有り難うミヤ」


 タカミヤの頬に口付けされる感触が襲いかかると同時にカノンはベッドに飛び戻り、「お休み」と言って毛布を乱暴に株ってベッドに転がった、きっとカノンもかなり大胆な事をしたと思っているのだろう、タカミヤはタカミヤで。


(・・・『黒い病』から助けてくれた恩人、ヒーロー?とでも思われるのかしら?、ん~まったくガラじゃ無いわね~、そもそも『黒い病』てなによ)


 そんな事を考えつつもカノンのした頬っぺにチューに照れ臭いモノを感じ、毛布を乱暴に被ぶり直し眼を閉じたのだった。




 ~翌朝~


 カノンが朝眼を覚ますと既にタカミヤの姿はソファーには無かった、鉱山の時でもそうだったがタカミヤは朝早く起きて木剣を振ったり武術の型を行ったりしている、おそらくは日課なのだろう。


「ん~、此方の服は反応薄かったし今度はコレかなぁ?」


 そんな事を呟きつつ今日の洋服決めを行っていると、足音が徐々に部屋へと近付いてくる、タカミヤが日課を終えて戻ってきたのだろう、カノンは数種類の洋服を取り出すとベッドに広げ始める。

 部屋のドアが開き予想通りタカミヤが部屋へと戻ってきたのでカノンは早速タカミヤにどの洋服がお気に召したか直球で質問してみた、やっぱりカノンの予想通りにタカミヤは顔に「面倒だなぁ」と出しつつも。


「別に何着たって良いんじゃない?、似合うわよ」


 と御世辞を言ってくれる、タカミヤは何だかんだと言いつつも自分の思ったままの答えを返してくれる、過去に出会った他の冒険者達にあったようなカノンに対する下卑た下心は恐らく無い、カノンとしてはアプローチをかけているのに下心を持たれないのも悔しいのであるが・・・、何だかんだでカノンは『黒い病』から助けてくれた恩人のタカミヤ(アナスタシア)が好きなのである、誰かから聞いた訳でもなくカノンはタカミヤが本当は男であることも初めから知っていたし、冒険者達の病の1つに《身魂相違》というモノがあるのを聞いたことがあるしタカミヤもその状態なのも分かっている、そもそもカノンが助けて貰ったときはタカミヤは男の声で喋っていたから知っているのはむしろ当然と言えるのであるが、なのでまあカノン的には男性を好きなので問題ないと思っている(他者から見ると完全に百合判定(アウト)だが)。


「ミヤはいつも素っ気な~い、ミヤの好きなので選んでよ~」

「私そういうセンス皆無なんだけど・・・・、えっ~っとじゃあコレと此方の」


 カノンはタカミヤが指差した服をその場で着替え始める、タカミヤが少しは照れてくれれば脈ありなのでカノン的には嬉しいのだが現実は甘くなくタカミヤは溜め息を付きカノンに


「私が居るんだから少しは気にしなさいよ全く」


 と注意を促しつつ呆れ果てた顔で部屋から出ていってしまった、足音が遠ざかっているので多分朝食を取りに下の酒場に降りていったのだろう、流石にココまで反応されないとカノンも気にするわけで。


「も~~~~う!!!!!!、ミヤのイケず!!!!」


 思いっきり八つ当たりなのは分かっているし、何だかんだでタカミヤが選んでくれた服を着て、全体のバランスを調整するためにアクセサリーやバッグに入れていた予備のジャケット等を取りだして身に付けてカッコ良く整えると、荷物を纏めてバッグに押し込んで背負いタカミヤを追って酒場へと慌てて降りていくのだった。


 既に酒場で朝食を終えてコーヒーを飲んでいるタカミヤの隣の座ると、タカミヤはカノンの服を凝視し初めた。


「へぇ、私の雑なチョイスがカノンのアレンジでこうも変わるもんなのねぇ~、ほうほう」

「どんなもんよ、えへん♪」


 胸を張る様に洋服を見せるカノンをタカミヤはジィっと凝視し続けると、何やら色々勝手に納得したようで。


「ん~、眼福眼福」

「眼福ってどういう意味?」

「ん?、かなり適当だけどまあ『眼が悦ぶような良いもの見た』って感じの意味よ」

「ん~、ミヤは見て嬉しかった・・・の?」

「まあ、どっちかって言うと大地人のセンスで服をアレンジするとこうなるのかぁ~って感じね」

「むぅ~!!、ミヤは喜んでないじゃない!!」

「いや、カノンに色目使う意味がないし」

「ケチ!!」

「何故に!?」


 カノンはタカミヤの相変わらずの素っ気なさにプンスカしつつもモーニングセットを注文し出てきた側からガツガツと不貞腐れて食べ初める、タカミヤは特に意に介さない様な態度で変わらずコーヒーを飲んでいる。


 (トレジャーハンターって言っても私だって女の子なんだから少しは色目使うとか気にしてくれればいいのに・・・)


 カノンは少し落ち込みつつも、まだ暫くはタカミヤとの旅が続くのだから頑張ろうと決意し、朝食を食べ終えると元気良く立ち上がって「さあ、行こう!!」とタカミヤの手を引っ張って進み始める、タカミヤは慌てて食事の金貨を酒場のマスターへと放り投げ「またどうぞ~」という代金領収の返事を受け取ったのだった。


 ちなみにカノンは気付いてなかったが、何だかんだでカノンはかなり可愛く綺麗でスタイルも抜群(上から94、56、89(着替え中で下着姿のカノンをタカミヤがおおまかに目測した数値))な女性である、当然酒場にいた他の男性冒険者達や酒場のマスターやらはカノンに色目やら値踏みするやら胸辺りを凝視するやら何やらの視線を送りまくりそれに気付いたタカミヤに『手を出すな』と警告と殺意の視線を送り返されていたりしたのだが、カノンはタカミヤの事(視線含め)しか気にしていなかったのでまあ気付いたりはしないであろう。


 アラバスタ山脈にかなり近い次の町(タカミヤが依頼でいく場所でもある)へと向かうなか春先の暖かい日差しが訪れ、陽気に釣られたアルン(チビドラゴンの名前)がタカミヤの頭の上で鼻提灯を膨らませながら昼寝を堪能しカノンもカノンでタカミヤの肩に頭を乗せてうたた寝している、当のタカミヤは。


「・・・・寝るんなら荷台で寝てくれればいいのに・・・・」


 1人と一匹を起こさないよう馬の速度を落としゆっくりと馬車を走らせ、次の町への穏やかな移動は続いていくのだった。




【カノン】

大地人、女性トレジャーハンターという珍しいタイプなので冒険者達からはかなり注目を集めている、トレジャーハンターなので動きやすさを重視したタイトドレスの様な体のラインが浮き出る洋服を着ている事が多い、カノンと共に旅をする機会の多いタカミヤ曰く、かなり着痩せするタイプであるらしく脱げばスゴいらしい・・・。

実は《大災害(ワールドフラクション)》よりも前にタカミヤに会ったことがあり、その時に助けて貰って以降タカミヤに好意を寄せていてアプローチをかけているが、スルーされる事が多く空回りしていることが多い。

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